カムリ 【1994,1995,1996,1997,1998,1999】

5ナンバーを維持した第5世代ミディアムサルーン

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市場が求めるミディアムサルーンの創造

 バブル景気の崩壊による経済活動の低迷が深刻化した1990年代前半、自動車市場では高級セダンのカテゴリーが販売台数を大きく落としていた。この流れに敏感に反応したトヨタは、上級ミディアムセダンに位置する国内向けカムリの路線変更を決断。当初は北米向けカムリと多くのパーツを共用する3ナンバーモデルに仕立てる方向で企画を進めていたものを、急遽日本独自の5ナンバー規格で開発する方針に転換した。

 改められた次期型カムリは開発テーマに、「新鮮な造形と高い機能を融合させた日本の新しいミディアムサルーン」を掲げる。具体的には、合理性に裏打ちされた新鮮で個性的な外観、上質で機能的なクラス最大のゆとりある室内、進化した走りと優れた燃費性能の両立を目指した。

新鮮さと高機能を5ナンバー規格で訴求

 スタイリングに関しては、5ナンバーサイズのセダンボディを基本にロングホイールベースとキャビンフォワード、ショートオーバーハングによって、合理的で調和のとれたフォルムを実現する。各部の造形にも工夫を凝らし、シャープな水平ラインと力強くて張りのある面の組み合わせにより硬質で明快なエクステリアを構築した。開発陣は使用性や視認性なども最大限に重視。フェンダー上端部やリアエンドエッジ部を立たせて車両前後端を把握しやすくしたり、フロントピラー幅の縮小や窓下線の引き下げなどを行って視界を広げたりするなどのアレンジを施す。空力特性もアップし、Cd値(空気抵抗係数)はクラス最上レベルの0.30を実現した。

 インテリアは、5ナンバークラス最大級の広い室内スペースを確保したうえで、全体をすっきりとしたテイストでまとめ、上級ミディアムサルーンらしいキャビン空間を創出する。同時に、前後シートの大きさと配置を見直し、とくに後席は着座姿勢をやや立たせるなどして良好な視界と前席とのコミュニケーション性の向上を計算した。フロントシート自体は腰椎から骨盤にかけて一体に支持するとともに体圧分布の最適化を図り、快適で疲れにくい形状とする。

3タイプの実用エンジン設定。手堅いメカニズムが魅力

 搭載エンジンは改良版の3S-FE型1998cc直4DOHC16V(FF140ps/4WD135ps)と4S-FE型1838cc直4DOHC16V(125ps)のガソリンユニット、DSCS(Diesel Smoke Control System)を組み込んで黒煙の排出量を削減した新開発の3C-T型2184cc直4OHCディーゼルターボ(91ps)という計3機種を設定する。組み合わせるミッションは5速MTと4速AT(3S-FEはECT-S)を用意し、駆動機構にはFFとフルタイム4WDをラインアップした。

 シャシーについては従来のストラット式4輪独立懸架をベースに大幅な改良を実施。フロントはバネ入力とダンパー入力を分離するアッパーサポートや2段バルブ構造ダンパーの採用などを、リアはジオメトリーの一新などを実施する。さらに、同位相時の後輪の最大切れ角を変更して走行安定性を向上させた4WSや路面追従性を引き上げるトラクションコントロールといった先進機構も盛り込んだ。

日本専用車両としては最後のカムリに−−

 セリカ・カムリから数えて5代目、カムリの単独ネームとなってから4代目となる新型カムリは、V40系の型式をつけて1994年7月に市場デビューを果たす。キャッチコピーは「すべては、ライフのために」。生活、すなわち人生をより幸福にするために誕生した上級ミディアムサルーンである事実を、このコピーで主張した。
 全長4625mm×全幅1695mmの5ナンバー規格ボディに収まったV40系カムリは、グレード展開としてZX/ツーリング/ルミエール/XJという4タイプを用意する。このなかでツーリングはスポーティ系という位置づけで、専用チューニングのシャシーや4WS、高性能タイヤなどを装備していた。

 機能性と合理性を凝縮した車両設計に、上質かつシンプルな内外装、そしてバリューフォーマネーの車種構成を実現したV40系カムリ。しかし、市場から高い注目を集められなかった。当時のマーケットがRV(レクリエーショナルビークル)隆盛だったこともあるが、一方で高級セダン好きにとってはカムリの内外装の演出やパワースペックが魅力に乏しいものに見えたのである。

 市場での評価を上向かせようと、開発陣は可能な限りの改良をV40系カムリに加えていく。1995年1月には3C-T型ディーゼルターボ+ECTのフルタイム4WDモデルを設定。1996年5月にはマイナーチェンジを敢行し、デュアルSRSエアバッグとABSを全車標準化するとともに、マルチリフレクターヘッドランプの採用やメッキパーツの拡大展開、木目調パネルの装着、シート表地の変更などを実施して高級感をアップさせた。様々な改良を施して魅力度を引き上げていったV40系カムリだったが、販売の面では苦戦を強いられ続ける。この状況を鑑みたトヨタは、国内専用カムリの生産中止を決断。1クラス上でワールドカーの位置づけとなるカムリ・グラシアが1999年8月にマイナーチェンジするのを機に、セダンを「カムリ」の単独ネームに変更した。V40系は、国内専用開発としての最後のカムリとなったのである。