カムリ 【2011,2012,2013,2014,2015,2016,2017】

伸びやかサイズ。大人のハイブリッド・サルーン

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国際車カムリ、その力強い歩み

 1980年、初代カムリは、スペシャルティカー、セリカのセダン版となる「セリカ・カムリ」として誕生。1982年にモデルチェンジした2代目からはセリカの名前が消え、上質ファミリーサルーンをして独自の道を歩みはじめる。

 カムリの広く快適な室内空間を生み出す合理的なパッケージングと優れた走行性能、そして高いコストパフォーマンスは世界市場で大好評を博し、1986年デビューの3代目からはアメリカやオーストラリアでの現地生産もスタート。ワールドカーとしての地位を鮮明にする。中でもアメリカでの人気は圧倒的なものがあり、1990年代にはベストセラーサルーンに成長。以後、カムリは日本以上に主力販売マーケットのアメリカを意識したクルマとして歩みを重ねる。

 今回紹介する9代目モデルもアメリカ市場を重視したモデルだった。日本デビューは2011年9月。アメリカではひと足早い8月に発表。日本仕様はハイブリッド仕様のみだったが、アメリカ仕様は、ハイブリッドに加え2.5L・直4と、3.5L・V6ガソリンなど、幅広いパワーユニットを用意していた。米国を重視する姿勢は2011年の時点で、すでに9年連続で米国乗用車ベストセラーサルーンの座を誇っていたカムリにとって当然のことといえた。だが日本仕様も上級トヨタ車らしく魅力に溢れた存在だった。

日本仕様はハイブリッドに統一。先進性を強調

 2000年以降、日本車はミニバンやコンパクトモデルが主流になり、4ドアセダンの存在感は相対的に低下していた。単に立派に見え、装備が充実しているだけで売れる時代は、とっくに過去のものとなっていた。マーケットで魅力を発散するには強い個性が必要だった。
 だからこそ9代目カムリの日本仕様は、パワーユニットをハイブリッドのみに絞ったのである。トヨタはカムリに「優れた環境性能を持つ先進サルーン」というキャラクターを与えた。開発コンセプトは「世界をリードするERAセダン」。ERAとは、Era(時代)という言葉に、Emotional(心を動かすような)デザイン&パワートレーン、そしてRational(合理的)な空間作りの意味を込めた造語である。

 スタイリングはビッグキャビン構成の3BOX。アメリカ仕様とはフロントマスク形状を変え、落ち着いたなイメージを強調していた。ボディサイズは4825×1825×1470mm。豊かな全幅も合って、堂々とした風格を持ち、存在感はクラウンと同等だった。
 ラインアップはシンプル。グレード構成はハイブリッドと同Gパッケージ,同レザーパッケージの3種、メカニズムは全車共通。違いは快適装備群だけだった。

 ハイブリッド機構は最先端。高効率設計の排気量2493ccの直4ガソリン(160ps)と、モーター(143ps)を組み合わせ。システム出力は205psに達した。JC08モード燃費はクラストップの23.4km/ℓ。C02排出を抑えた優れた環境性能とともに、力強いパフォーマンスを実現した点が魅力だった。静粛性にも優れていた。入念な遮音設計によって、低速はもちろん、高速ツーリング時でも圧倒的に静かなキャビンを実現。高級サルーンらしいくつろぎをパッセンッジャーに約束する。
 前後席ともに広々としたキャビンと、充実した装備と相まってカムリは、日本で最も乗る人に優しいクルマ、ロングクルージングを快適にこなすサルーンに仕上がっていた。しっかりとしたボディと、ロードホールディング性能に優れた足回りにより、ハンドリングのレベルも高かった。

大人の似合うサルーン。改良で安全性能充実

 9代目カムリは静粛性と安全性能で人間優先思想を明確にアピールした。静粛性では、静かなパワーユニットとして定評のあるハイブリッドシステムに加え、風切音を低減する高遮音性ウインドシールドガラス、ロードノイズを低減するフェンダーリアライナーサイレンサー、車内への音の侵入を抑えるダッシュ防音構造、ドア下のシール性強化を実施、採用。安全性能では、重量・車高の異なるクルマ同士の衝突時に置ける共存性を追求した全方位コンパティビリティボディ構造、歩行者の頭部や脚部への衝撃を緩和する歩行者傷害軽減ボディ、合計7個のSRSエアバッグを標準装備。カムリは世界で最も静粛で安全なクルマの1台に仕上がっていた。

 カムリは、適度なパーソナル感覚と、フォーマルなシーンにもマッチする風格を持ち、じっくりクルマと付き合うユーザーに最適なサルーンといえた。日本車には珍しい大人が似合うクルマの代表だった。
 2012年9月にブラインドスポットモニターを新設定するなど装備を充実。2014年9月にはフロントマスクを中心とした外装のリフレッシュ実施し、プリクラッシュブレーキ、アダプティブクルーズコントロールなど安全デバイスをオプション設定。時代が求める機能を盛り込みアップデートする。9代目カムリの日本での販売成績は目立つレベルではなかったが、完成度は抜群。間違いなくトヨタを代表するクルマの1台といえた。