クレスタ 【1988,1989,1990,1991,1992】
快適性とスポーティさを追求したこだわりセダン
クレスタはマークII&チェイサーとともに1988年8月にモデルチェンジし3代目に移行した。クレスタは基本メカニズムをマークII&チェイサーと共用するものの、一貫して4ドアセダンのボディタイプを貫くなど独自の個性を貫く存在だった。マークII&チェイサーがアッパーミドルユーザーをターゲットにした“保守本流”だとしたら、クレスタはBMWなどの欧州ブランドに強い憧れを抱くユーザーも意識した“中道左派”といったところだろうか。トヨタの上級モデルらしい快適で上質な走りとともに、どこかスポーティな味わいが漂うアクティブさが魅力だった。
とはいえ、スタイリングの印象はマークII&チェイサーと大差はなかった。3代目はプレス式ドアを採用し、全体的に骨太な印象を強めていたものの、比較的コンパクトなキャビンを持つ端正な3ボックススタイルは保守的な印象で、遠目にはマークII&チェイサーと見分けがつかなかったのだ。
クレスタのCMキャッチコピーは“心の貴族。私の場合、クレスタでなければならない。”というものだったが、まさにこの言葉どおり、多数派のマークII&チェイサーでなく、クレスタであることそれ自体がユーザーにとっては価値を持っていたのかもしれない。マークII&チェイサーと信号待ちで並んでも、自分はあえてクレスタを選んだのという満足感が得られたからである。
メーカーが公表した月販目標台数はマークIIの2万台、チェイサーの7000台に対し9000台だった。確かにマークIIよりは少数派だが、チェイサー以上にメジャーな存在だった。
バブル期に生み出された3代目は、内外装からメカニズムまで贅沢な作り込みがされていた。2代目より幅で5mm、長さで20mm拡大されたボディは全長4690mm×全幅1695mm×全高1375mmと5ナンバー規格ぎりぎりのフルサイズで、バンパーが前後ともにボディ同色仕上げということもあって実際以上に大柄に見えた。ホワイトパールマイカをはじめとする深みのあるボディカラーとクリスタルな輝きを持つ大型ヘッドランプの組み合わせもグレード感を高める要因だった。
エンジンはツインターボ仕様の1G-GTE型(210ps)を筆頭に、スーパーチャージャーを組み合わせた1G-GZE型(170ps)、スポーツツインカム1G-GE型(150ps)、ハイメカツインカム1G-FE型(135ps)など1988ccの直列6気筒ユニットが主役で、経済性に優れた1838ccの4S-Fi型(105ps)や2446ccのディーゼルの2L-T型(94ps)&2L型(85ps)は少数派だった。
販売主力はハイメカツインカムの1G-FE型を搭載したスーパールーセントだったが、1G-GTE型を積むGTツインターボや、スーパーチャージャー仕様の1G-GZE型をボンネットに収めたスーパールーセントGを選ぶユーザーも珍しくなかった。マークII&チェイサー以上に上級グレードが愛されたのがクレスタの個性だった。それだけこだわり派のユーザーが多かったのである。
直列6気筒エンジン搭載モデルの足回りはフロントがストラット式、リアがダブルウィッシュボーン式の4輪独立システムで、ブレーキは4輪ディスク。上位グレードはフロントだけでなくリアもベンチレーテッドディスクにグレードアップされていた。足回りのセッティングそのものはマークII&&チェイサーと共通で、しなやかさを強調したものだったが、セダンボディのクレスタはボディ剛性面で優位にあり、一層静かでしっかりとしたフットワークが楽しめた。
インテリアはマークII&チェイサーと基本的に共通だった。スーパールーセント系はマイコン制御オートエアコンを始め、高機能オーディオ、パワーステアリング、電動格納ミラー、リアセンターアームレストなど快適クルージングをサポートする装備をすべて標準で備えていた。シートはハイメカツインカム仕様のスーパールーセントが本革コンビタイプ、他の6気筒エンジン搭載車はラグジュアリー仕様のファブリックタイプが標準である。
3代目クレスタは1989年8月に3リッターモデルを追加し、さらに1990年8月のマイナーチェンジで2.5リッターモデルを主役に据える。改良を重ねるごとに上級移行を果たしたのは基本設計にゆとりがあったからだった。トヨタの一時代を支えたハイグレードサルーン、3代目クレスタは輝く存在だった。
3代目クレスタは安全と快適さを高次元に引き上げる世界初の装備を設定していた。前後左右4つのセンサーが障害物への距離と位置をブザーと表示灯でドライバーに知らせるクリアランスソナーと、雨水の付着などからドアミラーの視界をクリアーに保つサイドウィンドーワイパーである。
サイドウィンドーワイパーは専用のウォッシャーシステムを備えたハイグレードタイプで悪天候時でも良好な視界を約束した。トランスミッションも先進的だった。上位グレードに採用したECT-Sは、新開発スーパーフロー・トルクコンバータとエンジン総合制御システムを備え、スムーズな変速とキメ細かなロックアップ制御を実現する。さらに任意でエコノミー/パワー/マニュアルの3種の走行パターンが選べる先進の4速ATだった。