マークXジオ 【2007,2008,2009,2010,2011,2012,2013】

大人が似合う新発想3列シート・パッセンジャーカー

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贅沢で優雅で、自由な新発想モデル、ジオの誕生

 マークXは、伝統モデル、マークIIの後継車として2004年11月に発表された。車名の刷新は、代を重ねるごとに濃厚になっていた保守的なイメージを打破し、すべてを一新したことの宣言でもあった。マークXが目指したのは、新世代のハイオーナーカー。全体をスポーティで躍動感たっぷりのイメージでまとめ、ユーザーの若返りを図る。そんなマークXの斬新な印象を、さらに鮮明に印象づけたのが2007年9月にラインアップに加わったマークXジオだった。マークXジオは、前年の東京モーターショーに参考出品されたコンセプトカーFSCの市販モデル。「ワゴンより贅沢に。ミニバンより優雅に。セダンより自由に」をコンセプトに開発された3列シートの新発想上級パッセンジャーカーである。

 マークXジオは、マークXのネーミングを名乗るものの、メカニズム面ではセダン版マークXとの共通点は皆無。セダンがエンジン縦置きのオーソドックスなFRプラットフォームを基本に構築したのに対し、ジオはスペース効率に優れたエンジン横置きFFプラットフォームを採用していた。

室内は3列シート構成。上質な居住性を追求

 スタイリングは、ボンネットが短いワンモーションフォルム。ボディサイズは全長×全幅×全高4695×1785×1550mm(FF)と伸びやかだった。3列シート車のためクルマのジャンルとしてはミニバンの1種だったが、スタイリングにはミニバンから連想するファミリーイメージはなかった。ワゴンにも、ちょっぴり未来感覚のサルーンにも見える独特の存在感が魅力だった。

 ジオの個性は室内にあった。シートは3列構成。2列目はグレードによってセパレートシートとベンチシートが選べ、3列目は2名掛け。乗車定員は2列目セパレート形状が6名、ベンチ形状では7名である。一般的なミニバンと異なっていたのは、あえて3列目を補助席と位置付け、1&2列目の快適性を重視していたこと。3列目は2分割折り畳み機能を備え、畳むと広いラゲッジスペースが出現した。

 ジオの居住感覚は、一般的なセダンを上回る快適性を備えていた。十分にとった車高のメリットを生かしてシートの着座ポイトントはアップライトで、頭上空間のゆとりはたっぷり。座ると高い開放感が実感でき、ワイドな視界が魅力的だった。足元空間はゆったりしており、心地よくくつろぐことができた。
 しかもマークXを名乗るだけにインパネを含め、室内各部の作りは入念で上質。装備も全車に大型ルーフイルミネーション、左右独立コントロール式オートAC、オプティトロンメーターが標準になるなど充実。安全装備も車両安定装置(S-VSC)のほか、サイド&カーテンエアバッグなど万全だった。

エンジンは2種。V6仕様の最高出力は280ps!

 カタログの「成熟した大人たちのためにマークXジオは生まれた。気のおけない仲間たちと共に語り、大いに笑い、いまを輝かそう。カテゴリーの枠を超えた自由な発想は、大人たちのライフスタイルを大きく豊かに広げていく」というコピー通り、ジオは大人が似合うユーティリティカーに仕上がっていた。

 パワーユニットは排気量3456ccのV6DOHC24V(280ps)と、2362ccの直4DOHC16V(163ps)の2種。トランスミッションは全車ATで、V6用が6速、直4用はCVTが組み合わされた。駆動システムはV6がFF、直4はFFと4WDが選べた。
 マークXジオの走りはパワフルだった。とくにV6のパフォーマンスは鮮烈で、スポーティカーとして満足できる加速を誇った。前がストラット式、リアがダブルウィッシュボーン式の足回りがもたらすフットワークは安定していた。乗り心地はしっかりとした感触で、長距離クルージングでも疲れにくいことを主眼に開発されていた。
 数少ない欠点は静粛性だった。基本的に静かなクルマだったのだが、エンジンなどの騒音が低い分、かえって走行中はロードノイズが目立った。これが上質な乗り味を少しスポイルしていた。

 マークXジオは、広く、快適で、多彩なユーティリティを誇り、しかも走りに優れた未来派の上質モデルだった。開発コンセプトどおり、日本では数少ない、大人の味わいを持つ3列シート車に仕上がっていた。しかし、販売は苦戦する。そのコンセプトを理解できるユーザーは少数派。日本のマーケットはマークXジオを受容するほど成熟していなかったのかもしれない。