コスモ 【1981,1982,1983,1984,1985,1986,1987,1988,1989,1990】

ワイドバリエーションを誇った空力クーペ

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新世代スペシャルティを目指して

 ロータリーエンジン車の救世主となり、東洋工業の復活劇の象徴ともなった2代目コスモ(AP、1975年デビュー)。しかし、1970年代末になると販売成績も伸び悩みはじめ、次期型の開発が急務となっていた。
 新世代コスモを開発するにあたり、首脳陣は他メーカーが取り入れている「シャシーの共通化による車種設定の強化とコストの削減」を徹底する決断を下す。白羽の矢を当てたのは、同社のフラッグシップサルーンであるルーチェだった。シャシーを共用しながらコスモはスペシャルティ感を強調したモデルに、ルーチェはラグジュアリー性を主張する1台に仕上げようとしたのである。さらにコスモは、多様なユーザー指向に対応するためにボディーバリエーションの拡大を計画する。従来はファストバッククーペと2ドアクーペ “L”の2タイプだけだったが、新型では2ドアハードトップ、4ドアハードトップ、4ドアセダンの3タイプを企画した。このうち4ドアセダンは、ルーチェと基本的に共通ボディーを採用する。
 エンジンは、レシプロのMA型2L直4OHCと12A型ロータリー、さらに2.2Lディーゼルの搭載を決定した。ただし、デビュー当初はレシプロのガソリンエンジン仕様だけをラインアップする。真打ちのロータリーには新機構の6ポートインダクション(6PI)を組み込んだため、そのインパクトを強調しようと、あえてデビュー時期を遅らせる戦略を打ち出したのである。

ワイドバリエーションで勝負

 新型コスモの発売は、ボディーバリエーションごとに発表時期をずらして段階的に行われた。まず1981年9月1日に2ドアハードトップが登場。同年10月1日には4ドアハードトップがデビューする。その15日後には4ドアセダンが追加された。さらに11月からはロータリーエンジン搭載車の販売を開始する。
 3代目コスモでユーザーが最も注目したのは、そのスタイリングだった。リトラクタブルライト(ハードトップに装備)を配したV字型のフロントノーズと滑らかにスラントしたボンネット、ウエッジシェイプを基調とするライン構成などで達成した空気抵抗係数(Cd値)は0.32で、カペラの0.38やサバンナRX-7の0.34を上回る世界トップレベルの数値を記録する。ほかにも新開発のラック&ピニオンステアリングやサスペンションシステム、フルアジャスタブルシート(XG-Xに標準)などによる質の高い乗り味も好評を博した。

世界初のロータリーターボ車の登場

 市場での注目を集める3代目コスモ。この勢いをさらに強めようと、東洋工業は意欲的なモデルを1982年9月にリリースする。世界初のロータリー+ターボ(日立製)を搭載した“ロータリーターボ”シリーズだ。ターボ付き12A型ロータリーエンジンは当時トップレベルの160ps/23.0kg・mを発生し、スペシャルティカーとしての魅力度がさらに引き上がる。同時に発売を開始した2000EGIの4速AT車も注目を集めた。
 コスモの進化はまだ終わらない。1983年10月のマイナーチェンジではターボ付き12A型ユニットのタービンブレード形状を変更し、最高出力が165psにまでアップする。さらに、スーパーインジェクション採用の13B型ロータリーエンジン仕様も設定された。またこの時、内外装の化粧直しも実施され、4ドアハードトップは固定式のヘッドライトに、2ドアハードトップはセンターピラー部の小窓を廃してガーニッシュで覆うデザインに変更している。

 3代目コスモはその後もジェンティール・シリーズの追加(1985年5月)や内外装のリファインを実施し、シャシーを共用化するルーチェが1986年9月にフルモデルチェンジした後もそのまま生産が継続される。結果的に3代目コスモは、1990年4月に3ローター・ロータリーのユーノス・コスモが登場するまで販売が続けられ、異例の長寿モデルとして活躍したのである。