AXY(コンセプトカー) 【1999】

ユーティリティを磨いた“走るマイルーム”

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


多彩なライフスタイルを持ち込める室内に注目!

 1999年の東京モーターショーに出品されたAXY(アクシー)は、いままでになかった新しい楽しみにアクセスできる“走るマイルーム”だった。開発担当者の荒沢博敏氏は「RVがレジャーを楽しむためのクルマだとしたら、AXYはライフスタイルを楽しむためのクルマ、自分や家族や仲間がリビングルーム感覚で使いこなせて、そこに集まった人みんなをアクティブにしてくれる、そんな楽しさあふれるクルマ」とコンセプトを説明した。走りそのものに価値を見いだす従来のクルマとは違い、多様なライフスタイルをそのまま持ち込める室内空間に注目したクルマというわけだ。速さではなく、使い勝手で未来を切りひらく姿勢が斬新だった。

 スタイリングは背が高いボクシーなシルエットを採用。おおらかなフォルムとシャープなエッジを組み合わせることで手頃な道具感覚を訴求した。ヘッドランプをフロントウィンドーの基部に配置し、ちょっとユーモラスな雰囲気に仕上げたのも計算の上。AXYは生活に寄り添うクルマだけにフレンドリーなイメージが必要と判断したのである。ボディサイズは全長3900mm、全幅1695mm、全高1740mmの5ナンバーサイズで、ホイールベースは2600mmと長かった。

ドア開口部の幅は1700mm! なんでも積める!

 AXY最大の特長は大きなドア開口部にあった。特殊な外ヒンジ式のフロントドアとスライド式のリアドアを開けると幅1700mm、高さ1350mmの大きな入口が現れたのだ。センターピラーのない構造のため、まさに文字通りの大開口である。フロアが低くフラットなこともあり乗降性は抜群で、たとえばベビーカーに子供を乗せたままでも乗車でき、クルマの中でチャイルドシートに乗せ換えることができた。また300mm以上のロングスライドが可能な後席と、取り外し自在な助手席を活用するとMTBもそのまま積み込みが可能だった。

郊外までAXYで行き、フィールドをMTBで散歩するなんて芸当は朝飯前。サーフボードやスノボも室内に積め、そのうえ着替えもOKだし、チェロなどちょっと大きめの楽器の場合、運搬はもちろん室内での練習も可能だった。まさにユーザーのライフスタイルを完全サポートし、しかも刺激する“使える相棒”だったのである。またスロープを渡せば車椅子のままで乗車が可能だったからバリアフリーのクルマとも言えた。

ユニバーサルデザインで使いやすさを追求

 室内のデザインに年令、性別、個人差を問わず誰もが使いやすいユニバーサルデザインの思想を導入していたのもAXYの特長だった。ドアノブやシートの調節レバーなどは掴みやすい大型形状で、直感的に操作できるよう機能をシンプル化。メーターはデジタル表示の大型サイズとし、ナビゲーション用モニターもインパネ中央の見やすい位置に配置していた。さらにナビゲーション画面のサイドにはCCDカメラによるフロント&リアビュー画面やVICS情報などを表示させ運転をサポートした。ハンズフリーの音声入力でメール交信が可能な機能も搭載していた。四角いステアリングホイールなど操作性の面で“?マーク”が付くアイテムも散見されたがAXYのユニバーサルデザインへの取り組みは前向きだった。

 エンジンが2.0リッターの直噴ガソリンで、新世代CVTミッションの組み合わせという以外、メカニズム面の詳細は不明だったが、AXYが使い勝手の面で、多くの提案を持っていたのは確かだった。残念ながらAXYはプロトタイプのみで終わったが、室内のユーティリティを磨き込む思想は、トヨタのポルテやダイハツのタントなどに大きな影響を与えた。さらに現在のJAPANタクシーに活用されたアイデアも多い。肝心の日産からはAXYの市販モデルに相当するクルマは発売されていないが、ライバルメーカーから登場したポルテやタントは、スペースユーティリティについての日本的な解釈として海外からも高い評価を得ている。