RVR 【1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997】

使い勝手自在のマルチRV

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時代を象徴したRVRの先進性

 1990年代初頭、それまでにも多様化の傾向を見せていたRV(レクリーエーショナル・ビークル)は、ますます多様化という混迷を深めることになった。自動車技術の急速な進歩により、前輪駆動方式や簡便な4輪駆動システムが完成、また、コンピューターを使った強度解析はスタイリング・デザインの自由度を拡大することになった。つまり、何でもありの時代になったことの結果である。
 三菱自動車が1991年2月に発表した小型RVであるRVRは、まさしく時代の最先端を具体化したクルマだった。ちなみに、RVRとはレクリエーショナル・ビークル・ランナー(Recreational Vehicle Runner)のイニシャルである。もちろん、正式な英語ではない。こうした無茶苦茶なネーミングが、当時のRVセグメントの混乱ぶりを示しているとは言い過ぎだろうか?このRVRは、専用設計されたシャシーを持つことが大きな特徴となっている。既存のモデルからの流用ではないから、スタイリング・デザインにも大きな自由度が生まれる。2.0リッター級の小型ワゴンとしては、かなり思い切った合理的なデザインが出来たのは、専用シャシーならではだ。

スライドドア&広い後席が自慢

 RVRのスタイルは、1.5BOXと呼ばれるもので、短いノーズと背の高い客室部分がある。ウィンドウの配置は左右3枚の6ライト型である。ドアは3枚(左後ろ側のみがスライドドア)で後部に跳ね上げ式のリアゲートを持つ。同時代のシャリオの小型版という性格だが、各部は大幅に異なっていた。ホイールベース2520mmに対して全高が1680mmもあり、全幅は1695mmで5ナンバーサイズに収まっている。室内は4人乗りと5人乗りが選べ、シート配列は2列のみ。3列シートなどと欲張らなかったために、4&5人乗車のスペースとしては十分以上である。特に4人乗りのXグレードはリアシートの前後スライド移動量が大きく、多用途性に優れていた。ボディタイプは1種のみだが、装備やメカニズムの違いで3グレードがある。価格的には139万6千円から197万3千円となっていたが、同クラスのクルマに比べると多少割高な感があった。

 搭載されるエンジンは1997㏄直列4気筒DOHC16バルブのもの1種のみ。トランスミッションは5速マニュアルと4速オートマチックがあり、駆動方式は前2輪駆動(FF)とヴィスカス・カップリング(VCU)を使ったフルタイム4輪駆動(4WD)の2車種がある。きわめてシンプルな車種構成だ。

自由な発想でユーザーの支持を獲得

 三菱RVRが象徴する多用途RVの登場は、この後の日本のモータリゼーションを大きく方向転換することになる。走行感覚は通常のサルーンと同等のスムーズさを持ち、後席を中心としたキャビン空間は広大。シートアレンジによってはワゴンとしても仕え、しかもボディサイズはデーリーユースでも扱いやすいコンパクトさの持ち主。スタイリングも遊びゴコロに溢れていた。
 スポーティカーを頂点とする旧来のクルマ・ヒエラルキーでは計れない自由で、シームレスな存在感には大きなインパクトがあった。結果的にそれは、主に都市部でセダンやワゴンをほとんど駆逐してしまうほどの勢いでシェアを拡大して行くのだ。住環境の変化(駐車場の不足や貸料の値上がりなど)に伴って、クルマの複数所有が事実上出来なくなり、1台で多くの目的に対応できるマルチユースなRVが人気を集めたのである。絶対的な性能の高さよりも、大人数が一度に乗れ、さらにある程度の性能と快適性を併せ持つ。そんなクルマがユーザーが求める時代に移行していた。時代は変わったのである。