セリカ・リフトバック2000GT 【1973,1974,1975,1976,1977】
リアゲートを持ったスタイリッシュスポーツ
トヨタは、ユーザーの声に押され、単一モデルで展開していたセリカに新しいジャンルのモデルを加えることになる。それが、1973年4月に登場したセリカ・リフトバック(LB)であった。
LBは、1971年秋の東京モーターショーに参考出品されたSV-1の市販化といえるモデルで、ベースとなったクーペフォルムの標準型セリカ以上にアグレッシブなスタイリングが魅力だった。一見するとリアエンドに開閉式リアゲートを備え付けたリデザイン・バージョンのように感じるが、子細に観察すると基本プロポーション自体が異なる独自スタイリングを纏っている。2425mmのホイールベースそのものは標準型セリカと共通ながら、フロントオーバーハングを70mm伸ばしロングノーズを強調。逆にリアオーバーハングは20mm切り詰め、軽快な印象を演出している。
独自のイメージを発散するのがフロントマスク。4灯式ランプの両サイドに車幅灯を配置する造形は共通だが、ヘッドランプの間隔自体を70mmも広げた結果、ワイドな印象を訴求する。全高を20mm低め、ホイールハウスの張り出しも強調(全幅+20mm)したことでロー&ワイドなプロポーションは標準モデル以上に鮮烈になった。ボンネットルーバーや、リアクォーター部のエアアウトレットなどのデザインもスポーティそのもの。セリカ・リフトバックが高い人気を獲得した要因は、細部まで独自性を強調したスタイリングが高い完成度を誇ったからだった。
インテリアは、基本的にはオリジナルのセリカとほとんど変わるところはない。ただし4本スポーク式ステアリングの形状など細かな部分は独自の意匠が与えられた。フルリクライニング機構を持つシートには通気口が開けられている。室内は2+2構成。後席のバックレストは前方に倒すことが可能で、ラゲッジスペースを大幅に拡大できるのだが、後輪のサスペンションとホイール・アーチが大きく張り出しており、ラゲッジスペース自体の使い勝手はあまり良いとは言えなかった。
駆動方式は縦置きエンジンによるFR。エンジンのバリェーションが増やされ、新しく2.0L仕様が加えられた。水冷直列4気筒の2.0リッター・エンジンの排気量は968㏄。圧縮比8.5と2バレル・キャブレター1基を備えるSOHC仕様は105ps/5500rpmの最高出力と16.0㎏・m/3600rpmの最大トルクを、DOHC仕様は9.7の圧縮比とソレックス製キャブレターを2基装備し、各々145ps/6400rpmと18.0㎏・m/5200rpmを発揮する。
従来からの排気量1588㏄の直列4気筒OHVエンジン仕様やDOHC仕様もあり、こちらはOHV仕様が100ps/6000rpmと13.7㎏・m/3800rpm、DOHC仕様は115ps/6400rpm、14.5kg・m/5200rpmを発揮した。
トランスミッションは4速および5速のマニュアルと3速オートマチックがあり、セリカの伝統で自由に選択することが出来た。ただしGTは5速マニュアルのみだった。
LBのトップグレード2000GTは、セリカ・シリーズの頂点であると同時にトヨタのスポーツフラッグシップでもあった。当時のトヨタは、名車2000GTの生産終了以降、生粋のリアルスポーツを持っていなかった。マークIIにDOHCエンジンを搭載したGSSや、セリカの1600GT、カローラ&スプリンターのレビン&トレノなど、走りに優れた魅力的なスポーツグレードは設定していたものの、パフォーマンスだけでなくスタイリングや雰囲気を含め、独自の存在感を持つリアルスポーツは存在しなかったのだ。ライバルの日産はフェアレディZで日本だけでなく欧米でも確固たるスポーツイメージを構築していた。トヨタはそれに対抗する持ち駒がなかった。
トヨタはセリカ・リフトバック2000GTをリアルスポーツとして、他のセリカとは別格の存在と考えていた。145psを発生するDOHCエンジンはもちろん、見る者を魅了するダイナミックなスタイリングなどを採用したのはそのためだ。もちろんパフォーマンスにもこだわっており、トップスピードは205km/h(レギュラー仕様は200km/h)。0→400m加速は16.1秒で走り切った。当時としては国産最速レベルである。セリカ・リフトバックは2000GT以外にも多彩なラインアップを揃えていたため、生粋のリアルスポーツというイメージはやや薄いが、2000GTに込めたトヨタ技術陣の熱い想いは格別。その刺激的な走りの世界は名車2000GTを凌ぐほどだった。
セリカ・シリーズは1975年11月のマイナーチェンジに後期型に進化する。後期型の特徴はエンジンを昭和50年規制適合の低公害ユニットに変更したこと。ボディ回りも増大した公害対策関係機器を収めるために大幅リファインが施された。ボディサイズ自体の変更は全長で+25mm、幅で10mmと小規模だが、ホイールベースを70mm延長すると同時に、フロントトレッドを50mmもワイド化したため視覚的な印象は大きく変わった。2000GTなどリフトバックの上級グレードは、アメリカ輸出モデルと共通の大型衝撃吸収バンパーを組み込んでいたから、なおさらイメージが変わっていた。
走りは公害対策に伴いマイルドに変化した。トヨタ技術者の懸命な努力でDOHCエンジンを搭載する2000GTは生き残ったが、最高出力は130psに大幅ダウンし、実質的なトップスピードも170km/h前後となった。燃料供給装置はキャブレター仕様。レギュラーガソリン指定となったためランニングコストは若干改善されていた。