FFジェミニ 【1985,1986,1987,1988,1989,1990】

軽快な走りで魅了した“街の遊撃手”



すべてが新しくなった2代目の登場

 ベレットに代わる小型車として1974年に登場した初代ジェミニは、1985年5月にフルチェンジされて第二世代へと進化する。それは全くの新型車だった。駆動方式がフロント・エンジン、フロント・ドライブ(FF)になったのをはじめ、シャシー設計やスタイリングまで完全に新しくなっていた。初代のようなGMのグローバル構想から離れ、いすゞ独自の設計によるモデルだったことも注目して良い。車名は前輪駆動であることを強調する意味も込めてFFジェミニとされた。

 ボディーのバリエーションは4ドアセダン、3ドアハッチバックの2種があった。エンジンはデビュー当初はいすゞオリジナルの水冷直列4気筒SOHC、排気量1471㏄(最高出力86hp/5800rpm、最大トルク12.5㎏・m/3600rpm)一種のみとなっていた。トランスミッションは5速マニュアルと3速オートマチックのどちらかが選択できた。サスペンションは前がマクファーソン・ストラット/コイルスプリング、後はトレーリングアーム/コイルスプリングの組み合わせ。ブレーキはディスク/ドラムだ。ラック&ピニオンのステアリングにはパワーアシストが標準またはオプション設定となっていた。

キャッチコピーは“街の遊撃手”

 スタイリングは、先代がオペル・カデットと同一のイメージだったのに対し、いすゞのオリジナル・デザイン(ジウジアーロが関係していた)となった。ボクシーな直線基調のデザインである。
 2世代目のFFジェミニは、グリルの意匠変更など細部を変えてアメリカ市場へも輸出され、シボレー・スペクトラムの名で販売された。小型車の開発に手間取っていたGMへの恩返しというところだろうか。当時欧州の街中に現れたジェミニが交互に宙を飛ぶという華々しいスタントを見せるTVコマーシャルでも話題となった。

 GMでは、いすゞをはじめとする世界各地の系列会社やメーカーの相互協力を推し進めていた。ジェミニにもそうしたGM傘下の世界的なチューナーやメーカーの手が加わったスペシャルモデルが登場する。1986年に登場したジェミニ・イルムシャーは、ドイツの有力チューナーであるイルムシャーがサスペンションをチューニングしたもの。スプリングやブッシュ、ダンパーなどを変更し、走り重視の味付けにしてある。モモ製本革ステアリングやレカロシートなどの採用もニュースだった。パワーユニットはインタークーラー付きの1.5Lターボ(120ps)を搭載していた。

マニア垂涎のロータス版

 1988年にデビューしたハンドリングbyロータスも同様で、当時GM傘下にあった英国のロータスが主としてサスペンションをチューンアップ、イルムシャーとは方向性の異なるしなやかな足回りのセッティングでマニアの注目を集めた。パワーユニットは7200rpmの超高回転で135psの最高出力をマークする新設計の1.6L・DOHC16Vである。
 ちなみにいすゞのお家芸ともいえる経済的な1.5Lディーゼル(NA&ターボ)は1985年11月に追加。現在は一般的となったロボタイズド・2ペダルMTの先駆けとなる、いすゞの独自開発による「NAVi5」と呼ばれる電子制御ミッションを1986年に登場させたのもニュースだった。

 FFジェミニは、1985年5月の登場から、1990年3月に次世代モデルにバトンタッチするまで約5年間、いすゞの主力モデルの座を守った。大規模なマイナーチェンジは1987年2月。この改良を機に正式名称から“FF”が外れ、単にジェミニを名乗るようになった。改良のポイントは多岐に渡ったが、最も目立つのはフロントマスクの変更。スラント形状に改良されヘンドランプもフォグランプを内蔵した大型形状となったことで質感が増した。ボディー剛性も見直されしっかりとした印象となっている。室内では各種スイッチを配置したメーターナセルが扇型になりイメージを一新した。FFジェミニの生産台数は74万8216台。いすゞで最も成功した1台となった。