カペラ 【1970,1971,1972,1973,1974,1975,1976,1977,1978】

ロータリーを主軸にレシプロも用意した実力モデル

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


カペラはロータリーを主軸に開発!

 1970年5月に登場したカペラは、主流となるロータリーエンジン仕様とレシプロエンジン仕様の二本立てとなっていた。車名のカペラ(Capella)とは、ラテン語で馭者座の中で最も光り輝いている星を意味する。カペラの開発はロータリーエンジン搭載を前提に進められたといわれるが、ロータリーエンジン仕様車と同時にレシプロエンジン仕様車もカタログモデルに加えたのは、燃費の悪さや耐久性などの点で、まだまだロータリーエンジンに対して懐疑的なユーザーも数多く存在していたからであった。

 カペラはパワフルなロータリーエンジンを開発の基本としていただけにシャシーやボディなどが骨太に仕上げられていた。そのためレシプロエンジン車にとっては、すべてに余裕が生まれ、ある意味で贅沢な作りのクルマと言えた。
 カペラシリーズは、モノコック構造のボディやシャシー・コンポーネンツなどを持ち、スタイリッシュな2ドアクーペ(5名乗車)と、ノッチバックの4ドアセダンから選べた。

ロータリーの最高速は190km/h! レシプロも170km/hをマーク

 発表当初のロータリーエンジン仕様のカペラは12A型水冷2ローター・ロータリーエンジンを搭載する。12A型ロータリーは、ファミリアなどに用いられていた10A型ロータリーの排気量を、ローターハウジング(レシプロエンジンのシリンダーに相当する)の厚さを10mm拡げることで拡大し、単室容積を573ccとしていた。総排気量は2ローターなので1146ccとなる。最高出力は120ps/6500rpmをマークし、最高速度はクーペで190km/h、セダンでも180km/hに達した。

 レシプロエンジン仕様は、1600の車名の通り、排気量1586 ccの水冷直列4気筒SOHCエンジン一種のみが設定されていた。この4気筒エンジンはクロスフロー式のバルブレイアウトなど先進の機構が盛り込まれていた。圧縮比8.6とストロンバーグ型2バレル・キャブレター一基を装備して、最高出力100ps/6000rpm。最高速度は165km/hが可能であり、当時の乗用車用エンジンとしてはかなりの高性能だった。

 エンジンの要となるカム軸を英国レノルド社製のチェーンで駆動し、新型のストッパー付きオートアジャスターを採用するなど各部の作りも贅沢だった。マツダというとどうしてもロータリーエンジンに脚光が当たるが、レシプロエンジンも完成度は超一級だった。

駆動方式はFR。ミッションはマニュアルが基本

 トランスミッションは基本的にロータリー仕様もレシプロ仕様も4速マニュアル型を流用するが、レシプロエンジン仕様には発表後数か月でボルグワーナー製の3速オートマチックも装備可能とした。ロータリーエンジン車とオートマチックの組み合わせが実現するのは、1971年10月に登場したGシリーズ以降である。

 サスペンションはフロントがストラット式の独立、リアは4リンク式の組み合わせだった。駆動方式はフロントエンジン、リアドライブである。ブレーキがフロントにディスク、リアはドラム。標準装備されるタイヤは155SR13サイズのラジアルかカペラシリーズのために新開発された6.15S-13-4PRサイズの扁平タイヤであった。車両重量はグレードの違いにより915kgから965kgの範囲にあった。決して重い方ではない。

 インテリアのデザインは基本的にはロータリーエンジン仕様車もレシプロエンジン仕様車も共通。レシプロエンジン車のインスツルメンツにはエンジン回転計がなく、ステアリングの意匠も2本スポーク型へと変更される。また、センターコンソールは装備されていない。セダン、クーペに関わらずリアシートのスペースは十分であり、高い実用性を持つ。ただし、ロータリー仕様車では燃料タンクが大きくなり、トランクスペースが若干狭くなる。

海外でも愛された国際派。ラインアップも積極的に拡大

 カペラは、世界へ向けて本格的な輸出が開始された初めてのマツダ車となったことでも記憶される。アメリカやヨーロッパを中心に輸出が開始されたが、日本車には珍しい明確なコンセプトが諸外国のマーケットでも好評を博し、確固とした市場を築くことに成功した。ちなみに、カペラの名は国内市場専用とされていた。

 カペラは1947年3月に125psにパワーアップした12A型ロータリーと5速ミッションを備えたGSIIを加え、レシプロエンジンにもベーシック1490cc(92ps)を設定するなどラインアップを拡充しユーザー層を着実に拡大した。しかし、1970年代初頭に勃発したオイルショックはメーカーにとって誤算だった。ロータリーエンジンの燃費の悪さ(実はそれほど悪くはなかったのだが)がユーザーの拒否反応を引き興す結果となり、販売が急落したのだ。

 ロータリーエンジン搭載車は排出ガス浄化システムを備えたAP仕様車のみに縮小される一方で、レシプロエンジン搭載車には排気量1769ccのカペラ1800と昭和50年排出ガス規制をクリアするサーマルリアクター浄化システムを備えた1800APモデルが加わる。
 カぺラシリーズは深刻な経営危機に陥った東洋工業を支えた功労者でもあった。生産台数はロータリー仕様車とレシプロ仕様車併せて1978年までに22万5003台に達した。