89日産テラノvs 89トヨタ・ハイラックス・サーフ 【1989,1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996】

相次いで4ドアモデルを設定した2台のクロカンSUV

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クロカンSUV界における4ドア需要の高まり

 1980年代後半の日本の自動車市場では、ハイソカーやパイクカーなどがブームとなる一方、ピックアップトラックをベースにハードトップボディを被せた“クロスカントリー(クロカン)SUV”車も着実に人気を高めていた。当初は若者層がクロカンSUVユーザーの中心だったが、やがてファミリー層からも注目を集めるようになり、その層には三菱パジェロやいすゞ・ビッグホーンの“4ドア”モデルが好評を博した。

 これからのクロカンSUVは、4ドアモデルの人気がますます高まっていくはず−−。そう判断した日本の2大自動車メーカーであるトヨタ自動車と日産自動車は、ミディアムクラスのハイラックス・サーフおよびテラノに4ドアワゴンを設定する決定を下した。

全面改良を機に4ドア車を用意したサーフ

 最初に動いたのは、トヨタ自動車だった。1989年5月にハイラックス・サーフのフルモデルチェンジを実施し、2代目となるN130型系を市場に送り出す。その際、スチール一体ルーフを採用した4ドアワゴンをラインアップに加えた。

 レクリエーショナル・ビークル(RV)としてのユーテリティのさらなる向上を目指して開発されたハイラックス・サーフの4ドアワゴンは、プレスドアの採用やボディ各部のフラッシュサーフェス化、室内幅の拡大、静粛性および空調性能の引き上げ、インスツルメントパネルの視認性アップなどを実施し、内外装に渡って乗用車感覚を向上させる。また、大型のサンシェード付き電動ムーンルーフや運転席シートヒーター、後席リクライニングシート、カップホルダー等を新装備して快適性を一段と引き上げた。

 搭載エンジンは新設計の2L-T(II)型2446cc直4OHCディーゼルターボ(94ps/22.0kg・m)と3Y-E型1998cc直4OHV(97ps/16.3kg・m)を用意し、ミッションは2L-T(II)型が5速MT、3Y-E型が5速MT/電子制御式4速ATと組み合わせる。また、駆動機構にはADD(オートマチック・ディスコネクティング・ディファレンシャル)やワンタッチ2-4セレクター(MT車)を組み込み、2WD/4WD変速の利便性を引き上げた。サスペンションはフロントが改良版のダブルウィッシュボーン式、リアが新開発の4リンク式を採用。さらに、上級グレードには2ステージショックアブソーバーを設定し、乗り心地のいっそうの向上を図った。

テラノはマイナーチェンジ時に4ドア車を設定

 2代目ハイラックス・サーフのデビューから5カ月ほどが経過した1989年10月、YD21型系テラノがマイナーチェンジを実施し、4ドアワゴンをラインアップに加える。
 既存の2ドアをベースに、特徴的なリアクオーターガラスを廃してリアドアを備えた4ドアワゴンは、従来のスタイリッシュなイメージを維持するために、あえてリアのドアノブをブラックアウトした窓枠後部に設置する。また、クオーターガラスはオーソドックスなスクエア形状に一新した。内装に関しては乗用車的な雰囲気を引き上げるとともに、快適装備を充実させる。搭載エンジンはTD27T型2663cc直4OHVディーゼルターボ(100ps/22.0kg・m)と新たに電子制御燃料噴射装置のEGIを組み合わせたVG30E型2960cc・V6OHC(155ps/25.3kg・m)を用意。ミッションは両エンジンともに5速MTと電子制御式4速ATを設定した。

 4ドアワゴンを追加設定したハイラックス・サーフとテラノは、ファミリー層を中心にユーザーの裾野を急速に広げていく。1990年代が進むとその人気はさらに顕著なものとなり、シリーズの販売比率は4ドアワゴンが中心となった。
 この傾向を踏まえたトヨタと日産の開発陣は、4ドアワゴンのラインアップ拡充と新鮮味のアップを相次いで実施していく。ハイラックス・サーフは1990年8月に3VZ-E型2958cc・V6OHCエンジン(150ps/25.0kg・m)仕様を追加設定。翌1991年8月にはマイナーチェンジを実施し、内外装のリファインとともにオーバーフェンダー付きのワイドボディをラインアップした。一方のテラノは、1991年10月に装備を充実させたR3MセレクションVを発売。さらに1993年1月のマイナーチェンジでは、ワイドボディやレザーセレクションなどを設定した。

 結果的にハイラックス・サーフとテラノの4ドアワゴンの設定およびラインアップ拡充は、パジェロやビッグホーンなどとともに1990年代前半の“ヨンク・ブーム”を支える大きな要素となったのである。