マツダ・アテンザ 【2002,2003,2004,2005,2006,2007,2008】

世界に向けて発進した先進ミドルクラス



激戦区に向けて開発したアテンザ

 2002年5月、マツダは従来のカペラシリーズの後継モデルとなる新型車、アテンザを発表した。2.0〜2.3リッタークラスのエンジンを搭載するミドルクラスの4ドアセダンである。このクラスは、国内はもとより、世界的に見ても最もライバルの多い激戦区。その中に敢えて新型車を投入しようと言うのだから、完成度の高さや性能の良さには相当のレベルが求められた。

 マツダはその高いハードルに挑戦し、見事にクリアーして見せた。車名であるアテンザ(ATENZA)とは、イタリア語で注目とか留意を意味するアテンツィオーネ(attenzione)、英語ではアテンション(attention)から生み出された新しい造語で、日本国内に限って用いられた。ヨーロッパやアメリカでは「マツダ6」の名で販売された。ちなみにアテンザはバブル期の深刻な失敗により経営不振に陥ったマツダにとって久々のブランニューモデルで、シャシーはもちろん、エンジンを含めてすべてを新規に開発した意欲作だった。マツダの浮沈を賭けた重要なクルマだったのである。

アテンザに託したマツダの個性。新たなクルマ作り

 1998年に開発がスタートしたアテンザは、マツダの新たな商品哲学を体現したファーストモデルだった。それだけに開発陣は個性を明確にしたクルマ作りに取り組んだ。開発にあたって世界のライバルを凌駕する“ザ・ベスト”の項目と、“アマンダ・リーダー(リーダーたちの仲間に入る”の項目を明確にする。

 従来のマツダ各車はもちろん、日本車の多くは欠点を潰した無難なクルマ作りが一般的だった。しかしアテンザは自らの長所を徹底的に伸ばす個性尊重のクルマ作りを選んだ。

 アテンザの目指したザ・ベスト項目は、デザイン、ダイナミック・パフォーマンス(スタビリティ&ハンドリング)、革新パッケージング、ブレーキ、クラフツマンシップの5項目。BMW、アウディ、メルセデス・ベンツなどのプレミアムブランドはもちろん、フォルクスワーゲン、オペルなど世界の強豪がひしめくミドルクラスに切り込み、きちんとした評価とポジションを勝ち取るため、マツダ開発陣はすべてをゼロアジャストしてアテンザのザ・ベスト達成に取り組んだ。そしてそれは見事に達成された。

世界で愛されるグローバルなデザインを採用

 アテンザは、フォードグループの中ではミドルクラスの中核を成すモデルと位置付けられており、当然ながら日本だけではなく、ヨーロッパやアメリカでも売られることを前提に設計とデザインが行われていた。

 1998cc(144ps/18.6kg・m)および2260cc(178ps/21.9kg・m)の直列4気筒DOHC16バルブエンジンはゼロから新設計され、エンジンやシャシー関係はアテンザだけではなく、フォードの持つ同クラスのモデルにも使われることが予定されていた。したがって、ボディサイズは日本の5ナンバー枠に縛られることなく、バランスの取れた3ナンバーサイズとなっている。

 ボディスタイルは4ドアセダンと4ドア+テールゲートを持った5ドアハッチバックモデルとステーションワゴンがあった。スタイルがどちらかと言えばオーソドックスなのは、世界市場への進出を意識したことによるもの。輸出される国々によって異なる法的規制や民族的な感覚を超えて、より普遍的に受け入れられなければならないからだ。いわゆる「グローバル化」である。

バランスシャフトを組み込んだ静粛4気筒エンジン

 新開発となるMZR型エンジンは、排気量1998ccと2260ccの2種あるが、いずれも水冷直列4気筒DOHC16バルブで、異なるのは排気量の大小のみ。シリンダーブロックやヘッドは基本的に共通のアルミニウム製となり、大幅な軽量化を果たした。

 性能を高めながら燃費の向上と排気ガスのクリーン化を実現するために、S-VTと呼ばれる連続可変バルブタイミング機構やエンジンの状態に応じて吸気管の長さを変えるVIS(吸気管長可変機構)、また、静粛性向上させるため2.3リッターエンジンには振動を相殺するためのバランスシャフトが採用された。

 最高出力は1998cc仕様が144ps/6000rpm、2260cc仕様が178ps/6500rpm。この他、輸出向けには最新のコモンレール・システムを持つ2.0リッターディーゼルエンジンも搭載された。

伸びやかなワールドサイズ。足回りは完全新設計

 ホイールベース2675mm(旧型カペラより65mm長い)は全グレードを通じて共通で、同じシャシーが使われていることが分かる。全長は旧型のカペラと比較して75mm拡大され、全幅では95mm、全高では55mm大きくなっている。このあたりのサイズがミドルクラスのセダンとしては世界スタンダードと言えるサイズなのだ。

 駆動方式は基本的には横置きフロントエンジンによる前輪駆動だが、ワゴン仕様のスポーツワゴンと後に追加されたセダンのスポーツグレードであるマツダスピード版には電子制御フルタイム4WD仕様車が用意されていた。トランスミッションは日本国内向けには当初4速オートマチックのみだったが、ヨーロッパやアメリカを中心とした輸出仕様には5速マニュアル型の組み合わせも可能だった。後に国内向けの一部車種でも5速マニュアル型が搭載された。後期型ではオートマチックが5速仕様となり、マニュアルにも6速が登場した。サスペンションは新設計となり、前がダブルウイッシュボーン/コイル・スプリング、後がマルチリンク/コイル・スプリングである。

 アテンザは、設計とスタイリング・デザインの上で、5ナンバーサイズに囚われなかったことで、国際的にも通用するバランスの良いミドルクラスのスポーティファミリーカーになった。これは、フォードグループに組み入れられたことの大きなメリットだったと言える。ミドルクラスのセダンとして、突出した高性能を求めず、長期間にわたって乗り続けることができるクルマとして、実に適切な仕上がりとなったのである。価格も200〜300万円前後と比較的お買い得だったから、国内以上に海外市場で好評を博しマツダとしては空前のヒットとなった。