ファミリア 【1989,1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996】

“インターナショナル・コンパクト”を謳った第7世代

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ボディタイプ別に性格を鮮明化した7thファミリア

 ファミリアやカペラのヒットなどで上昇気流に乗っていた1980年代終盤のマツダは、国内第3位の地位を確かなものとし、さらには上位のトヨタと日産に迫るための大きな勝負に打って出る。販売網の大幅な拡大だ。そのための車種展開の増強も精力的に行い、同時に斬新な車両デザインによって市場にアピールする戦略を打ち出した。

 1989年2月には、BGの型式をつけた7代目ファミリアを市場に放つ。キャッチフレーズは“インターナショナル・コンパクト”。基本骨格には新設計のBGプラットフォームに剛性を高めたボディを組み合わせるスーパーモノコックボディを採用し、ボディタイプは安定感のある台形フォルムに力強いCピラーとブリスター形フェンダーを採用した3ドアハッチバックと4ドアセダン、そして低くて流麗なクーペ風のフォルムにリトラクタブルライトを配するスポーティなフロントマスクを導入した5ドアハッチバックのアスティナ(4月発売)をラインアップした。シャシーについては、ホイールストロークを伸ばすなどしたリアのSSサスペンション(ストラット式)に剛性を高めたフロントのマクファーソンストラットを採用。クルマの性格に合わせて、3タイプのサスセッティングを実施する。

DOHCを主力に多彩なエンジンを設定

 搭載エンジンは可変吸気システムを内蔵した改良版のB6型1597cc直列4気筒DOHC16V(130ps)のほか、B5型1498cc直列4気筒DOHC16V(MT110ps/AT105ps)、B5型1498cc直列4気筒OHC16V(91ps)、B3型1323cc直列4気筒OHC16V(76ps)、可変噴射率システムを採用したPN型1720cc直列4気筒OHCディーゼル(58ps)という新開発ユニットをラインアップ。DOHCガソリンエンジンの燃料供給装置にはEGIを装着する。組み合わせるトランスミッションはB3エンジンに4速MTと3速ATを、それ以外のエンジンには5速MTとホールド機構付き電子制御4速AT(EC-AT)を設定した。

 インテリアも3ボディごとのアレンジを行い、3ドアハッチバックはカジュアルでスポーティ、4ドアセダンは上質かつシック、アスティナは精悍でお洒落な雰囲気を演出する。フロントシートはグレードの性格に合わせて4タイプを用意した。同時に、全ボディで空調能力の改善やオーディオのグレードアップ、機能装備の充実化などを実施。移動空間としての快適性をいっそう引き上げていた。

アメリカ市場ではセダンが高評価獲得!

 7代目ファミリアはデビュー当初から好調な受注を記録する。また、海外マーケットでも好評を博し、欧州市場では「323F」の車名を冠したアスティナが、アメリカ市場では「プロテジェ」のネーミングで販売した4ドアセダン(BP型系1.8l エンジンを搭載)が、ユーザーから高い評価を受けた。

 一方、日本市場では従来型に設定されていたファミリアの4WDスポーツモデル、「GT-X」のモデルチェンジが待ち望まれていた。その期待は、1989年8月に具現化される。3ドアハッチバックボディに180psの最高出力を発生するインタークーラーターボ付きBP型1839cc直列4気筒DOHC16Vエンジン、そしてスポーツ走行に最適な前後駆動力配分43:57というフルタイム4WDシステムを採用した、新しいGT-Xが登場したのだ。

 新型GT-Xは早速、マツダのラリーチームに持ち込まれ、テストを重ねながらWRC(世界ラリー選手権)参戦に向けたグループAラリー仕様に仕立てられる。ファミリアの欧州名323のGT-Xが初陣を飾ったのは、1990年シーズンの1000湖ラリー。ここでティモ・サロネン選手が総合6位に入るという健闘を成し遂げた。その後も323GT-XはWRCで好成績をあげるものの、グループAでの総合優勝はなかなか果たせなかった。2L 級ターボエンジンを積むライバル車に対して、どうしてもエンジン出力の面で劣っていたからである。ただし、シャシー性能は非常に高く、改造範囲が小さいグループNでは1991年シーズンにドライバーズチャンピオン(グレゴワール・ド・メビウス選手)を輩出するほどの実力を有していた。

WRC制覇を目指したスーパーウェポンの登場

 1992年1月になると、GT-Xの進化版が「GT-R」のグレード名を冠して市場デビューを果たす。搭載エンジンはBPユニットをベースに大型ターボチャージャーの装着やメタル製タービンおよび大径デューティバルブを備えたウェストゲートの組み込みなどを実施。インタークーラーは横置きからフロント前部への縦置きに変更し、同時にコアサイズを従来より約70%拡大する。エンジン本体にも改良を加え、ピストンにはクーリングチャンネル付きアルミハイキャストタイプを、トップリングの溝にはニッケルセルメット発泡体の溶融結合を、コネクティングロッドにはケルメットメタルを採用した。また、排気バルブはステム内を中空で仕立て、内部に金属ソジュームを封入した専用品を装備する。ほかにも、排気抵抗の低減を図ったフェライト系鋳鋼エグゾーストマニホールドや放熱量を高めたオイルフィルター一体型の水冷式オイルクーラーなどを設定。最高出力は市販モデルで210ps、グループAチューニングでは300psオーバーを絞り出した。

 エンジンの出力向上に合わせて、トランスミッションやフルタイム4WDシステム、シャシー、ブレーキなどの機構も徹底的に強化したファミリアGT-Rは、早々にラリーチームがグループA仕様に仕立てたものの、いわゆるバブル景気の崩壊でワークス活動は中止。本格参戦はお蔵入りとなってしまったのである。