ロッキー 【1990,1991,1992,1993,1994,1995,1996,1997】
オープンエアも満喫できたタフな四駆
三菱パジェロ、トヨタ・ハイラックス・サーフが高い人気を博したことから、1980年代後半には、クロスカントリー4WD、すなわち四駆が、新世代パーソナルビークルとして注目を集めるようになる。それまで背の低いスポーティなクーペモデルばかりが若者グルマとして脚光を浴びていたが、新たに背の高い四駆が加わったのである。1990年5月に登場したロッキーは、メインターゲットを若者に据えたニューカマー四駆だった。
ダイハツにとって四駆は、積極的に商品開発を行っていたジャンルだった。1974年にはライバル各社に先駆けて958ccのガソリンエンジンを積むコンパクト設計のタフトを発表。1984年に名称をラガーと改称したリファインモデルを送り出す。タフト&ラガーは、ともに頑丈なラダーフレーム・シャシーと4輪リーフ・リジッドサスペンション、信頼性の高いパートタイム式4WDシステムを採用したタフな四駆だった。
オフロードでの機動性は目覚ましく、トヨタへもブリザードのネーミングで供給された。しかし、オフロードでの使用をメインに考えていただけにすべてがヘビーデューティー。走り味はハードだった。新世代パーソナルビークルと呼ぶには、いささか骨っぽすぎる四駆だった。
ロッキーは、オンロードでの使い勝手をリファインし、同時にたっぷりの遊びゴコロを加えた都会派の四駆だった。ちなみにロッキーは日本向けに開発されたモデルではない。ひと足先にイギリスなど海外で発売し、好評を得ていた輸出名フェローザの日本版だった。海外での高い評価を背景に日本に凱旋した、いわば帰国子女のような存在だった。
スタイリングはボクシーそのもの。洒落たカラーリングやアルミホイールで個性を主張していたものの、オフロード四駆という本来の性格は明確だった。ロッキーの新しさはレジントップ仕様のルーフ回りにあった。一見すると2ドアのワゴンボディに見えるが、リアキャビンは脱着自在な構造となっており、運転席の頭上にも脱着できるサンルーフを備えていた。
ロッキーは1台でクローズドルーフのワゴンとフルオープンの2つの顔が楽しめ。リアキャビンとルーフの脱着にはそれなりの手順を必要とし、外したリアキャビンはガレージに置いておかなくてはならなかったが、オープンカーに変身できるという事実は魅力的だった。オフロードモデルならではの高いアイポイントからのオープンエア・クルージングは爽快そのもの。しかもロッキーは後席も広かったから、仲間4名とオープン感覚が共有できた。
ダイハツにとってレジントップは特異なものではなかった。タフトやラガーにもレジントップ仕様を設定していた。しかし両車のレジントップは固定式。ロッキーのような脱着自在な構造ではなかった。クローズドとオープンが楽しめたのはロッキーならではの魅力だった。
ロッキーは安全にオープンエア・クルージングが楽しめるよう太いセンターピラーを配置。後席後方にもロールバーを設け、そこに後席用3点式ベルトのアンカーを装着していた。レジントップの脱着作業はひとりでは出来ず、大人2〜3名でも大仕事だったが、変身できるという事実はロッキーの大きな個性と言えた。ちなみにレジントップを外した時に対応するキャンバストップは、オプションで用意された。
ロッキーはメカニズム面もソフィスティケートしていた。フロントサスペンションは乗り心地に優れたダブルウィッシュボーン式の独立で、エンジンも静粛かつパワフルな1589ccの直列4気筒OHCのガソリン(105ps/14.3kg・m)を搭載していた。ロッキーのデビュー当時、四駆はディーゼルが当たり前。そんななかでロッキーのガソリンユニットは異色だった。車重が1250kg(SX)と比較的軽量だったこともありスポーティとは言えないまでも、走りは軽快な印象で、伸びやかな加速が印象的だった。
駆動方式はFR→4WD切り替え式のパートタイム4WDに加え、ベベルギア式センターデフを備えたフルタイム4WDが選べた。トランスミッションはデビュー当初は5速マニュアルのみ。4速オートマチック仕様は1992年にラインアップに加わった。ちなみにトランスミッションには高低、2段切り替え式のトランスファーを備え、本格的なオフロードユースに対応する作りだった。
パワーステアリング、パワーウィンドー、前席バケットシートなど快適装備が充実し、オープンカーに変身するロッキーは、確かに斬新なパーソナルカーと言えた。販売成績はそれほどのヒットとはならなかったが、ダイハツらしいアイデアを満載した実力車だった。