エルグランド 【1997,1998,1999,2000,2001,2002】

“最高級新世代ミニバン”を目指した日産のフラッグシップ

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国内最上級セミキャブ・ミニバンを新提案

 1990年代の日本の自動車市場は、レクリエーショナル・ビークル(RV)、とりわけ多人数乗り車の1BOX=ミニバンが熱い視線を集めていた。メーカー側も同カテゴリーの開発に力を入れ、ベーシックモデルから上級クラスまで、多彩な新世代ミニバンを企画する。

 セレナやラルゴといったセミキャブスタイルの1BOXをリリースしていた日産自動車は、次なるターゲットとして上級クラスのミニバン、具体的にはキャラバン・コーチ/ホーミー・コーチの次世代モデルの開発をスタートさせる。目指したのは“最高級新世代ミニバン”の創出。商品コンセプトには①先進のアイデアを織り込んだフルサイズワゴン②既存のクルマにはない圧倒的な存在感をもつ乗用車専用デザイン③ドライバーを含めた大人6名がゆったりくつろげるファーストクラスの移動空間④従来のミニバンにはない優れた走行性能とクラストップの安全性能、といった項目を掲げた。また、設計および開発、認証取得、生産、品質保証については日産車体が主体となって担当する体制を構築した。

ハイクオリティな2機種のエンジンと2駆動方式を採用

 基本シャシーについては、同社のSUVであるテラノ用をベースに大幅な改良を施す。ホイールベースは2900mmまで延長。サスペンションはフロントにマクファーソンストラット/コイルスプリング、リアにコントロールロッド付5リンク/コイルスプリングを採用した。足回りは乗り心地と走行安定性を高次元で両立するためにアクティブダンパーを組み込む。

 搭載エンジンはバルブタイミングの最適化などにより低中速トルクを向上させたVG33E型3274cc・V6OHCガソリン(170ps/27.1kg・m)と静粛性および燃費性能を高めたQD32ETi型3153cc直4OHVインタークーラー付ターボディーゼル(150ps/34.0kg・m)の2機種。ミッションは専用セッティングのフルレンジ電子制御4速AT(E-AT)。駆動機構には2WD(FR)と4WD(オールモード4×4)を設定した。

 開発陣は安全性能に関しても徹底してこだわる。掲げたテーマは“トリプルセーフティ”、すなわち“インフォメーションセーフティ”“コントロールセーフティ”“インパクトセーフティ”の実現だ。具体的には、撥水ウィンドウシステムや広角ドアミラー等での良好な視界の確保によるインフォメーションセーフティ、ABSやオールモード4×4等によるコントロールセーフティ、ゾーンボディコンセプト(クラッシャブルゾーン+セーフティゾーン)や運転席&助手席SRSエアバッグ等によるインパクトセーフティを導入し、クラストップレベルの安全性能を成し遂げた。

風格のあるスタイルとファーストクラスの室内を実現

 スタイリングについては、セミキャブボディを基本に上級ミニバンならではの風格や力強さ、存在感をわかりやすく表現することに主眼を置いた。フロント部はグリルおよびライトを上下2分割で構成したうえで、メッキ枠や厚みのあるバンパーを組み込んで堂々たる“顔”を創出。サイド部はウエッジを利かせたベルトラインや中央部を膨らませた側面パネルなどで質量感のあるイメージに仕立てる。リア部は、ガラス/ガーニシュ/ランプの一体アレンジやスポイラー内蔵型のゲートなどを採用して個性的かつ上級感あふれるバックビューを実現した。

 インテリアは、飛行機のファーストクラスのような広くて快適な空間の創出を目指す。インパネは中央部をラウンディッシュに膨らませたうえで前2席前をドーム状で構成し、ボリューム感のあるコクピットを実現。ポップアップ式のナビ画面など、随所にオリジナリティ性を表現した。シフトレバーはウォークスルーに配慮してコラム式を導入する。シートは2/3列目に490mmのスライド機構を内蔵した“スーパーマルチシート”を採用。2列目には回転対座機構を、3列目にはマルチアップ機構を組み込み、乗車人数や使用パターンによって様々なアレンジを可能とする。室内での乗員の移動を考慮して、フラットなフロア面に仕上げた点も特長だった。

 開発陣は装備面の充実度も重視。ナビとテレビが楽しめるツインナビゲーションシステムやCD・カセット一体電子チューナーラジオ/120Wアンプ/6スピーカーで構成したスーパーサウンドシステム、クリーンフィルター内蔵のオゾンセーフフルオートデュアルエアコン、光と風を呼び込むツインサンルーフ、減光式の大型ルームランプ、リアエアコンやサンルーフが操作できる後席マルチリモコンなどの高級アイテムを豊富にラインアップした。

生産開始から約19カ月で生産累計台数が10万台を突破

 日産ブランドの新世代フラッグシップミニバンは、1997年5月に市場デビューを果たす。車名は既存のキャラバン/ホーミーに、スペイン語の定冠詞にあたる“EL”と“偉大な”を意味する“GRAND”を組み合わせた造語の「ELGRAND(エルグランド)」というサブネームを付けて、「キャラバン・エルグランド/ホーミー・エルグランド」と冠した。キャッチフレーズは「THE BIG DREAM」。広告では岩城滉一&結城アンナ、布川敏和&つちやかおり、佐藤一平&江崎美和という3夫婦が起用され、大人6名が快適に移動できるファーストクラスのミニバンであることを主張した。車種展開はシンプルで、2WDのV6-3300ガソリンと3200ターボディーゼル、4WDのV6-3300ガソリンと3200ターボディーゼルという4系列に、それぞれ最上級グレードのX、標準仕様のV、ベーシックグレードのJという3タイプを用意。乗車定員はXが7名(2列目席キャプテンシート)で、VとJが8名とした。

 エルグランドの販売は絶好調。その勢いを維持しようと、日産は矢継ぎ早に車種設定の拡充や機構および装備面の改良などを行っていった。まず1998年1月には、スポーティグレードの「ハイウェイスター」を追加。また、オーテックジャパンが手がける4名乗りのVIP仕様「ロイヤルライン」を設定する。同年10月にはフロント回転対座シートやセカンド回転横向きシートなどを備えた「ラウンジパッケージ」とXグレードの8名乗り仕様、そしてオーテックジャパンがドレスアップした「ライダー」をリリース。翌11月には生産開始から約19カ月のスピードで国内生産累計が10万台を突破した。

マイナーチェンジで高い商品力をキープ

 エルグランドは、1999年8月になると、最初のマイナーチェンジを実施する。ディーゼルエンジンを直噴式の“NEO Di”ZD30DDTi型2953cc直4DOHCインタークーラー付ターボディーゼル(170ps/36.0kg・m)に換装。内外装の一部仕様変更も実施する。同時に、車名は「エルグランド」の単独ネームに変更した。2000年に入ると、4月に本革・サプラーレコンビシートなどを配した特別仕様車の「プライムエディション」とオーテックジャパンが開発した10名乗りモデルの「ジャンボタクシー」を発売。8月には2度目のマイナーチェンジを行い、ガソリンエンジンのVQ35DE型3498cc・V6DOHC(240ps/36.0kg・m)への換装や車体剛性の強化、フロント回りのデザイン変更、内装地の見直しなどを実施する。10月には専用シート地(カブロン・パートナーコンビ)やトラッシュボックス等を組み込んだファミリー層向けの「Kid'sバージョン」を市場に放った。

 上級ミニバン市場を牽引する1台に成長したエルグランドは、2002年5月になると「“夢”と“くつろぎ”と“感動”を提供できる最高級ミニバン」というキャッチコピーを掲げた2代目に移行する。内外装や走行性能にいっそうの磨きをかけると同時に環境性能も大きく向上させた新型は、初代の“ファーストクラスの移動空間”としての特性が一段とレベルアップしていた。