セドリック 【1975,1976,1977,1978,1979】

“輝ける変身”を掲げ華麗に変身した第4世代

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より華やかなデザインに変更された4代目

 1970年代前半における日本の自動車メーカーは、クルマを開発する際に2つの大きなハードルを克服する必要があった。大気汚染問題を解決するための排出ガス対策、そしてユーザー指向の多様化および上級化への対応である。この状況下で日産自動車は、フラッグシップモデルであるセドリックの全面改良を企画。基本テーマとして、新しい高級車スタイルと人間工学設計に基づいた上質なインテリア、快適かつパワフルな走行性能、先進の環境対策、高い安全性といった項目の実現を目指した。

 1975年6月、4代目となる新しいセドリックが330の型式をつけて市場に放たれる。同時に、兄弟車のグロリアも5代目に移行した。ボディタイプは4ドアセダンと4/2ドアハードトップ、バンの計4タイプを設定。キャッチコピーには“輝ける変身”を謳った。
 4代目セドリックは、毎年のように改良を加え、完成度を高める。まずは1977年の動きを紹介しておこう。

1977年“豪華車のなかの超豪華車” 2800ブロアムを設定

 4代目セドリックは、1977年6月に、内外装の一部デザインをリフレッシュしたマイナーチェンジを実施する。最大のトピックは、“豪華車のなかの超豪華車”と称する最上級グレードの「2800ブロアム」シリーズ(4ドアセダン/4ドアハードトップ/2ドアハードトップ)を加えた点だった。エンジンは燃料供給システムにニッサンEGI(電子制御燃料噴射装置)を採用したL28E型2753cc直6OHC(145ps/23.0kg・m)を搭載。装備面では、ルーズクッションシートやリアパワーシート(セダン)、デュアルエアコン、エコノモニター、高級カーペットなどを組み込んでいた。

 マイナーチェンジではもう1台、魅力的なモデルが追加される。“わが国初の本格派の高級ディーゼルセダン”を謳う「220D GL」である。搭載エンジンはSD22型2164cc直4OHVディーゼル(65ps/14.5kg・m)で、装備面はガソリンエンジン搭載車のGLグレードに準じていた。SD22型エンジン搭載車は、ほかにも220Dデラックスと220Dスタンダードが設定された。
 セドリックは1977年10月に生産累計100万台を達成し、ミリオンセラーの仲間入りを果たす。

4代目はアメリカンイメージの華やかさを強調

 話は前後するが、ここで時間軸を1975年に巻き戻し、4代目セドリックの詳細を解説しよう。
 スタイリングは、剛性の向上を図ったモノコックボディをベースに、従来の230型系で採用したコークボトル・デザインを取り入れながらより重厚で豪華なフォルムに仕立てる。ヘッドランプ周囲をスクエアに拡大した独特のフロントマスクに、リアクオーター部を跳ね上げたうえで流れるようなキャラクターラインを後端まで伸ばしたサイドビュー、フロントと意匠を合わせたリア造形など、随所でアメリカンチックな華やかさを創出した。ヘッドランプ形状は4ドア系が丸型4灯式で、2ドアハードトップは角型2灯式。セドリックとグロリアの外観上の差異は、フロントグリルやリアコンビネーションランプ、エンブレムなどの一部パーツにとどめた。

 外観と同様、内装デザインも豪華で気品にあふれたムードで演出する。インパネは人間工学設計を基本に、専用タイプの無反射式メーターや高級オーディオ、本革巻き3本スポークステアリング、木目パネルなどの上級アイテムを装備。シートには最高級の厳選された表地を使用する。前席はセパレート式とセミセパレート式、ベンチ式の3タイプを設定した。さらに、エアコンやパワーウィンドウ、集中ドアロック、電動調整式フェンダーミラー、トランクオープナースイッチ、大型アームレストといった快適アイテムを豊富に取りそろえる。その贅を尽くした室内アレンジは、メーカー自らがカタログで「これ以上なにをお望みですか?」と謳うほどであった。

パワーユニットは排気ガス対策を施した直6搭載

 4代目セドリックの主要搭載エンジンは日産排出ガス清浄化システムの“NAPS”を組み込んだL28型2753cc直6OHC(140ps/22.5kg・m)とL20型1998cc直6OHC(115ps/16.5kg・m)を採用し、ともに昭和50年排出ガス規制をクリアする。組み合わせるミッションは、OD付き4速コラムシフトMT/4速フロアシフトMT/ニッサンマチック(3速AT)・コラムタイプ/ニッサンマチック・フロアタイプを用意した。

 サスペンションには改良版の前・ダブルウィッシュボーン式、後・縦置き半楕円リーフ式を導入した。また、操舵機構には西ドイツのZF社と提携して開発したツインバルブ式インテグラルパワーステアリングを設定し、ハンドリング性能の向上を達成。さらに、制動機構には新開発のN型前輪ディスクブレーキや9インチマスターバック、N-Pバルブなどを組み込んで安全性の引き上げを図った。

高級車としての新しいあり方を実現した「Fタイプ」の登場

 4代目セドリックは日産のイメージリーダーとなる高級車だけに、開発陣はその新鮮味を失わないよう、矢継ぎ早に緻密かつ大胆な改良と車種ラインアップの拡大を行っていく。

 1975年10月には、燃料供給システムにニッサンEGI(電子制御燃料噴射装置)を組み合わせるL20E型1998cc直6OHCエンジン(130ps/17.0kg・m)を搭載した2000SGL-E/2000GL-Eと経済性に優れるSD20型1991cc直4OHVディーゼルエンジン(60ps/13.0kg・m)を採用した2000デラックスディーゼル/2000スタンダードディーゼルを追加する。注目はL20E型搭載車で、昭和50年排出ガス規制をクリアするとともに、高性能化と低燃費化を同時に実現していた。

 デビューから1年ほどが経過した1976年6月になると、ガソリンエンジン搭載の全車を昭和51年排出ガス規制に適合させる(型式は331に移行)。さらに、“まったく新しいハイファッションを纏った新シリーズ”を謳う4ドアハードトップ「Fタイプ」を設定。2灯式の角型ヘッドランプにボディ同色のホイールカバーとグリル枠、2チャンネル4スピーカーステレオ(SGL系)などを備えたFタイプは、ファッショナブルな高級車として市場から熱い視線を集めた。

1978年、全車昭和53年排出ガス規制に対応

 前述の1977年のマイナーチェンジを経て、1978年11月には、メーカー自らが“円熟”と称する一部改良を敢行した。
 ガソリンエンジンは三元触媒方式のNAPSを採用するなどして、最も厳しいとされる昭和53年排出ガス規制をクリアする(型式は332に移行)。また、安全装備として制動系の電子制御装置であるアンチスキッド機構を設定した。

 グレード展開の面では、2000系の最上級仕様となる「2000SGL-Eエクストラ」(4ドアセダン/4ドアハードトップFタイプ)をラインアップした点がトピック。ルーズクッションシートやシャギー風のカーペット、布張りトリム、後席大型アームレスト、ボカシガラス、ファッションホイールカバー、ラジアルタイヤ(4ドアハードトップ)などを装備して内外装の風格と気品を高めたエクストラ・シリーズは、円熟の4代目セドリックに新たな魅力をもたらしていた。

 一部改良からわずか7カ月後の1979年6月、セドリックは早くもフルモデルチェンジが実施されて5代目となる430型系に移行する。スタイリングは直線を基調にしたクリーンな造形へと一新。インテリアもより近代的なデザインに変更された。曲線を多用した華やかなスタイリングに贅を尽くしたインテリア、そして日産の技術の推移を結集して生み出したパワフルかつクリーンな動力源−−4代目セドリックは、1970年代後半という時代の雰囲気を全身で表した国産ラグジュアリーカーの代表格だったのである。