ライトエース・ワゴン 【1979,1980,1981,1982,1983,1984,1985,1986】

新ジャンルを目指したキャブオーバー型ワゴン



市場のキャブオーバー車需要の高まり

 個人所有の乗用車、いわゆる“マイカー”の普及に則して、本格的なムーブメントとなった1970年代のアウトドアレジャー。この流行は、クルマ自体へのユーザーニーズに変化をもたらす。家族や友人など多人数が乗車でき、快適に移動できて、しかも多くの荷物が積める−−。こうしたモデルが求められるようになったのだ。脚光を浴びたのが、キャブオーバータイプの1BOXカーだった。従来はビジネスユースがメインだったキャブオーバー車は、乗用ワゴンとしての性格も強く求められるようになる。

 こうした市場の状況に対してメーカーは、既存のキャブオーバー車コンセプトに乗用車造りのノウハウを踏まえた新世代の乗用キャブオーバー車の企画を推進する。なかでも積極策を打ち出したのが、市場ニーズをクルマ造りに活かすことに長けたトヨタだった。トヨタの開発スタッフは、入念にアウトドアレジャーの移動手段にふさわしい新型キャブオーバー車の姿を検討。同時に、多様な顧客層に対応するための車種ラインアップの充実や時代に則した省燃費化も摸索した。

小型キャブオーバー型ワゴンの理想を追求

 新しい乗用キャブオーバー車は、2代目ライトエースとなって1979年10月に市場デビューを果たす。開発陣が小型キャブオーバー型ワゴンの理想形を追い求めて造り出した入魂作は、内外装からメカニズムに至るまで様々な工夫が凝らされていた。
 まず外装に関しては、空力特性に優れたフロント傾斜ボディとシャープなサイドラインを基本とし、そのうえで角型ヘッドランプや専用サイドストライプ、大型バンパー、メタリック塗装などを採用する。

 ボディタイプは標準ルーフとハイルーフを用意。ハイルーフにはサンルーフ仕様も設定した。内装については乗車定員8名の3列式シートをベースに、明るいカラーの内装色やクラス初のフルトリム、2/3列目シートのフルフラット機構、フロントおよびリア用のツインエアコン、4スピーカー式のスーパーサウンドコンポ等を組み込む。また、シートの改良やヘッド&ショルダースペースのアップ、ドア開口部の拡大および床面地上高の引き下げなどを実施し、居住性と乗降性の向上を図った。

 搭載エンジンは改良版の13T-U型1770cc直4OHV(92ps/15.0kg・m)の1機種で、ミッションには4速MTを組み合わせる。同時に、シフトタイプにはコラム式のほかに一般的な乗用車と同様のフロア式をラインアップした。サスペンションは乗り心地を重視して大幅な改良を図った前・ダブルウイッシュボーン/後・半楕円リーフを採用。ブレーキは上級仕様にフロントディスクを奢る。また、開発陣は走行時の静粛性にも注力し、吸音材の多用や外板面の面一化などを実施した。

見栄え品質と走行性能の向上を目指した改良

 2代目ライトエースのワゴンモデルは、メーカーが想定した以上にユーザーの人気を集め、たちまち“1BOXワゴン”の代表モデルに成長する。トヨタの開発陣もこの勢いを維持しようと、ユーザーのさらなる要望に則した多様な改良を施していった。

 1980年12月にはマイナーチェンジを行い、2列目シートの回転対座化や3速ATの設定、電動リモコン式カスタムミラー等の上級装備を組み込む最上級グレードのFXVの設定などを実施する。1982年4月にはミドルルーフ・ツインムーンルーフをラインアップ。同年10月には大がかりなマイナーチェンジが敢行され、フロントマスクを中心としたスキンチェンジや快適装備の拡充、1C型1839cc直4OHCディーゼルエンジン(63ps/11.3kg・m)の設定、2Y-U型1812cc直4OHVガソリンエンジン(95ps/15.5kg・m)への換装、MTの5速化、パワーステアリングの組み込み、デジタルメーターの採用などを行った。

 車種ラインアップを積極的に拡充させてワンボックス・ワゴンの本格ブームを牽引したライトエースは、1985年9月になると全面改良を実施し、3代目となるM30/40G型系へと移行する。市場変化が非常に激しかった1980年代前半にもかかわらず、5年11カ月あまりもの長きに渡って販売され続けた2代目。その人気の秘密は、車両本体の優秀さに加えて、開発陣の地道な創意工夫が活かされた点にあった。

初めてワゴン専用のカタログを用意

 トヨタはキャブオーバー型ワゴン需要の高まりを受けて2代目ライトエースのワゴンモデルを開発したが、注力したのはクルマそのものだけではなかった。販売戦略の面でも、従来にはない試みを実施した。その代表的な策が、ワゴン専用カタログの設定である。

 表紙には既存の“LITEACE”の車名の後に文字を大きくした“WAGON”のロゴをレタリング。写真はハイルーフ車を中心に、「ワゴン脚光」「セダンを捉えた」「もうひとつの部屋」「ワゴン万能」「ワゴンならできる」「週末が輝き出した」といったキャッチコピーが躍る。また、「セダンに学んだ」と称して動力性能や走行性能、安全性、居住性などの解説ページを、さらに、「新・乗用車、宣言」と冠してカセットオーディオやエアコン、リクライニングシート、サイドストライプ、アルミホイール等の豊富なアイテムの紹介ページを掲載した。

 車種ラインアップを紹介するページも注目で、キャッチには「待望、ニュービークル」と表示。ユーザーが求める新ジャンルの多人数乗り乗用車であることを声高に主張していた。カタログは背景に人気イラストレーター小森誠氏の作品を採用したのも話題だった。