ロゴ 【1996,1997,1998,1999,2000,2001】

ちょうどいい日常高性能を追求したナチュラル派



ホンダ初の“自然体”コンパクトカーの誕生

 ホンダはコンパクトカーに強いこだわりを持ったメーカーである。それだけにN360、シビック、シティなど“提案型”の意欲作を次々と送り出し、マーケットに旋風を巻き起こしてきた。だが1996年10月にデビューしたロゴは、ホンダにとって異色の存在だった。カタログの「ムリなく、スイスイ走れるクルマ」というキャッチコピーが象徴するように、提案型のコンパクトカーではなく、肩から力を抜いた、いわば“自然体”のコンパクトカーだったからだ。

 ロゴはブランニューモデルとして登場したが、実質的にはシティのマーケットを継承する存在だった。しかしホンダらしいスポーティさを追求したシティとはすべてが違っていた。スタイリングは親しみやすさを重視したキュートな仕上がりで、スリーサイズは全長3750mm×全幅1645mm×全高1490mm。当時のライバルだったトヨタ・スターレット、日産マーチと較べても個性は希薄だった。どんな街並みにもしっくりなじむことは確かだが、ホンダ車特有の溌剌な印象は持ち合わせていなかった。しかし3ドアに加え5ドアをラインアップするなどコンパクトカーとして高いユーティリティを実現しており、最小回転半径を4.6mに抑えるなど取り回しのよさも抜群だった。

日常性能を重視した新世代のエンジン

 ロゴのキャラクターがはっきりと現れていたのはパワーユニットだった。フロントに横置き搭載する排気量1343ccの直列4気筒OHC・D13B型は、明確な低中速トルク重視型。最高出力&最大トルクをあえて66ps/11.3kg・mに抑え、発生回転数もそれぞれ5000rpm/2500rpmと低くすることで実用域で十分なパワーが実感できるように工夫していた。

 コンパクトカーのロゴの主戦場は町中。町中で多用するエンジン回転数で最もパワフルさを実感できるチューニングとしていたのだ。実際にロゴの走りは活発だった。とくに信号からの発進はスムーズで力強く、僅かにアクセルを踏み込むだけで周囲を簡単にリードできた。まさにカタログどおりスイスイと走る印象が強かった。トランスミッションは5速マニュアルと3速オートマチック、そして無段変速のCVTの3種から選べた。この中で最もエンジンとの相性がよかったのはCVTだった。

“ハーフスロットル高性能”というユニークな新発想

 ロゴのカタログには“ハーフスロットル高性能”という見慣れない言葉が出てくる。これは普通に走っている時に凄いクルマになろう、という設計コンセプトが生みだしたワードで、アクセルを目一杯踏むシーンではなく、日常よく使うハーフスロットルで走りのよさが実感できるチューニングを表現したものだった。

 低・中速域のトルクを徹底的に太らせたエンジンをはじめ、気持ちよく操れる軽いハンドルや、スムーズな乗り心地、そして優れた実用燃費がロゴの魅力。その魅力をハーフスロットル高性能と表現したのである。一見ホンダらしさが希薄に見えるロゴだったが、コンパクトカーの理想を真摯に追求する姿勢はさすがホンダの作品だった。目指した理想があまりに優等生的だったから、ホンダらしさを余り感じられなかったのかもしれない。

スポーティさを廃した広い室内空間

 室内空間はゆとり十分だった。全高を高めにとった効果で室内高は1205mmとたっぷりと確保され前後席ともに開放感が高かった。ボディサイドの絞り込みが適度なため、横方向もゆったりとした印象を受けた。シートはお洒落なファブリック張りで、そのファブリックをドアトリムにも使用するなど演出も気が利いていた。しかしスポーティな味わいはいっさいなかった。

 メーターは速度計を中心に左右に水温&燃料計を配置したシンプルな構成で、タコメーターは全車ともに未設定。軽さを重視したパワーステアリングの設定も、スポーツドライビングには不向きだった。ロゴのエンジンは前述のように低中速トルク重視型だったため、タコメーターは実用上不要だった。軽い操舵力のパワーステアリングも女性ユーザーにとって朗報だった。しかしホンダらしくなかったのも事実である。

 ロゴはコンパクトカーとして高い機能性を持っていた。しかしメーカーの期待とは裏腹に販売台数は伸び悩んだ。その理由のひとつがホンダらしさの欠如にあったのは間違いない。いいクルマが必ずしもヒット作になるとは限らないのである。