軽自動車規格02 【1976〜2000】

安全対策の強化と排気量の拡大

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高速走行や安全性に対する配慮

 1970年代中ごろの軽自動車を取り巻く環境は、解決しなければならない深刻な問題が山積していた。段階的に厳しくなる排出ガス規制、交通戦争という名称まで生み出した死亡事故の増加、そして高速道路網の整備に起因したクルマに対する高性能化の要求。これらの難題を克服するために、時の運輸省(現・国土交通省)は軽自動車規格を改定する決断を下した。

 1976年1月、新しい軽自動車の車両規格を定めた運輸省令が施行される。ボディサイズは従来の全長×全幅×全高3000×1300×2000mmから同3200×1400×2000mmに変更。エンジン排気量は360ccから550ccに拡大された。

 ボディが大きくなり、エンジンパワーも増強された軽自動車は、再びユーザーの注目を集めるようになる。低迷していた販売台数も回復軌道に乗り始めた。その傾向は、1979年5月にデビューした画期的なモデルによって、さらに勢いを増す。車両価格は47万円〜、維持費も商用車のバン扱いで安く収まる「スズキ・アルト」が発売されたのだ。とにかく経済性に優れたクルマが欲しいというユーザーにとって、アルトは格好のモデルだった。結果的にアルトは潜在需要を掘り起こし、大ヒットモデルに成長する。

 この状況をライバルメーカーが黙って見過ごすはずがない。アルトと同様の低価格で商用車扱いの軽自動車が次々と市場に投入される。後に“軽ボンバン”と呼ばれる新カテゴリーは、たちまち軽自動車の主流となっていった。

1980年代、個性的なモデルが多数デビュー

 1980年代に入ると、軽自動車に新たな動きが巻き起こる。過給器を備えた高性能モデルの出現だ。1983年2月に三菱自動車からミニカ・ターボが発売されたのを皮切りに、ダイハツのミラ・ターボ、スバルのレックス・コンビ・ターボ、スズキのアルト・ターボなどがリリースされる。高性能競走は1980年代後半に入ってさらに過激化し、スズキはアルト・ワークス、ダイハツはミラ・ターボTR-XX、スバルはレックス・コンビVXスーパーチャージャー、三菱はミニカ・ダンガンを発売した。

 独創的なモデルを開発して軽自動車市場に復活したメーカーも2社ある。1社目はかつてNシリーズなどで一世を風靡した本田技研。サイドシル一体成型などの凝った車両レイアウトを採用した復活作のトゥデイ(85年9月デビュー)は、クラス最大級の室内空間と優れた操安性を実現していた。2社目はマツダだ。往年のネーミングを冠したオートザム・キャロル(89年10月デビュー)は、内外装すべてを丸でモチーフしたユニークなフレンドリーデザインに仕上げていた。

車重増加と税制度変更への対応

 1990年1月になると、またしても軽自動車の規格が改定される。エンジン排気量は550ccから660ccに拡大。ボディサイズも全長×全幅×全高3300×1400×2000mmに変更された。主に安全性の向上による車両重量増に対処した規格変更だが、実は新税制を踏まえたうえでの改定でもあった。

 従来の軽自動車はその性格上、物品税が最低限のレベルに抑えられていた。しかし、新しく導入された消費税は一律3%の課税。その結果、小型車クラスとの購入金額差が著しく接近してしまったのだ。維持費の違いはあるものの、これでは軽自動車のメリットが希薄になる。そのためにエンジン排気量などを拡大して、小型車との性能差を小さくしようとしたのである。また、物品税の廃止はもうひとつの現象をもたらした。乗用モデルと商用モデル=ボンバンの購入価格差の大幅な縮小だ。新しい規格改定は、結果的に軽自動車市場における乗用モデルの主流化につながったのである。

 エンジン排気量が660ccに拡大した後、軽自動車カテゴリーでは2つの象徴的な動きが巻き起こる。ひとつは1990年代初頭のスポーツカーブームだ。ホンダのビート、スズキのカプチーノ、マツダのオートザムAZ-1といった魅力的な2シーターモデルが相次いでデビューした。2つめは93年9月に発売されたワゴンRに端を発する軽ハイトワゴンの隆盛だ。これ以後、軽自動車のスタイルは合理的なハイトワゴンが主流となっていった。

衝突安全性の向上を目指して

 1998年10月には、衝突安全性の向上を図る目的の規格改定が実施される。エンジン排気量はそのままながら、ボディサイズは全長×全幅×全高3400×1480×2000mmに変更された。さらに2年後の2000年10月には、高速道路における軽自動車の最高速度が80km/hから100km/hに引き上げられる。

 これらの改定は、結果的に小型車との差をさらに縮めることとなった。そのため維持費がより安い軽自動車の人気はいっそう高まり、いまやスズキのワゴンRやダイハツのムーヴがトヨタのカローラを凌駕するほどの販売台数を記録するまでに躍進したのである。従来は地方が主なマーケットだったが、現在では都市部でも愛される、まさに“国民車”に成長した。軽自動車は日本が世界に誇るマイクロ・コンパクトカーである。

軽自動車規格の変遷

1976年1月1日施工
原動機: 550cc以下
車両寸法:3200×1400×2000mm

1990年1月1日施工
原動機:660cc以下
車両寸法:3300×1400×2000mm

1998年10月1日施工
原動機:660cc以下
車両寸法:3400×1480×2000mm

2000年10月1日施工
高速道路における最高速度:100km/h