クラウン・マジェスタ 【2009,2010,2011,2012,2013】
フォーマルイメージを強めた先進フラッグシップ
クラウンの上級シリーズ、マジェスタは2009年3月に5代目に移行する。5代目は、レクサス・ブランドの日本展開にともないセルシオがレクサスLSに変わったことから、トヨタ・ブランドの実質的なフラッグシップとして開発された。従来と同様、各部は既存のクラウンをベースとしていたが、スタイリングは一段とフォーマル感を強調。装備は後席に座るVIPを意識したラグジュアリーアイテムが充実。メカニズムには最先端アイテムが積極的に投入される。
新型のボディサイズは全長×全幅×全高4995×1810×1475mm。レクサスLSと比較するとひと回り小型ながら、メルセデスEクラスやBMW5シリーズと肩を並べる伸びやかで堂々としたディメンションでまとめられた。高級サルーンらしい大型のフロント・センターグリルと、後席の居住性能を高めたビッグキャビンが独自の個性を主張。標準のクラウンと比較して明らかにプレミアムなイメージが増していた。
ラインアップはFRに3グレード、4WDに1グレードを設定。Aタイプ/Cタイプ/Gタイプが選べたFRモデルは、排気量4608ccの1UR-FSE型新世代V8DOHC32V(347ps)を搭載。トランスミッションは電子制御8速ATを組み合わせた。なおFRモデルには、Aタイプにアクティブステアリング統合制御機構とVGRS(ギア比可変ステアリング)を装備したLパッケージを設定。最上級グレードのGタイプには、ショーファードリブン仕様の乗車定員4名のFパッケージをラインアップした。
4WDモデルはi-Fourがグレード名。パワーユニットは旧型と共通の排気量4292ccの3UZ-FE型V8DOHC32V(280ps)。トランスミッションは6速AT。FRと4WDでパワーユニットが異なっていたのは、メカニズムが複雑になりパーツ点数が増える4WDでは、エンジンルームに1UR-FSE型が搭載できなかったからだと言われている。
5代目マジェスタは圧倒的な走りの完成度をアピールする。カタログでは「筋力となるエンジンや足回りを鍛え上げ、運動神経となる先進制御技術を惜しみなく投入。これまでの人知を超えた力強さと安定感」とその特徴をアピールした。確かに5代目マジェスタの走りは卓越していた。余裕ある排気量のV8エンジンはFR、4WDとも超一級の滑らかさとパワフルさを約束し、足回りは強力なパワーを確実に路面に伝達すると同時に、パッセンジャーに極上の快適さをもたらした。走行状態や路面状況をクルマ側が判断し、ドライバーをサポートする安全思想も見事だった。
全車に標準装備された電子制御エアサスペンションは、モノチューブ式ショックアブソーバーにコンピューターを組み合わせ、状況に応じて減衰力を最適に制御。さらにナビゲーションシステム情報と連携させることで、フラットな乗り心地とリニアな車両応答性を実現する。トランスミッションなどとナビゲーションの強調制御も導入され、高速道路のランプウェイではシフトアップ&ダウンのタイミングを調節。前方に一時停止のある交差点などではスムーズな減速・停止をサポートする制御を自動的に行った。
エンジン、ブレーキ、ステアリングなどを、VDIMというネーミングで、ひとつのシステムとして統合制御した点もポイント。塗れた路面のコーナーで横滑りししまいそうなシーンでは、エンジン出力制御、ブレーキ制御を働かせて滑り出しを抑えるように自動的にコントロールした。
5代目マジェスタは、どんな路面でもスムーズで安定した走りを披露した。先進技術の制御は巧みかつ自然で、ドライバーに違和感を抱かせないという点でも完成度が高かった。
安全面の配慮もハイレベル。ミリ波レーダー式のプリクラッシュセーフティ機構には、世界初の斜め前方から接近してくる車両にも対応する前側方検知システムを装着。前方の車両や後方から接近する車両と衝突の危険が高まった場合、自動的に後席のシートリクライニング角度を適正に戻し、衝突被害を軽減するプリクラッシュシートバックを組み込む。GタイプのFパッケージでは、後席乗員同士の二次被害を防ぐ後席センターエアバッグも装備されていた。
5代目マジェスタは2010年12月にルーフアンテナをシャークフィン形状に変更し、HDDナビゲーションをバージョンアップするなどの改良を受けながら、好調な販売成績を持続。2013年9月に6代目にバトンタッチする。6代目はパワーユニットをハイブリッド仕様に変更。V8ユニットは未搭載となる。結果的に5代目マジェスタは、最後の“V8搭載サルーン”となった。
マジェスタ・シリーズの最上級グレードGタイプには、VIPのためのショーファードリブン仕様「Fパッケージ」が設定された。Fパッケージのシートはプレミアム本革仕様。後席はソフト感を増したシートバックをはじめ最適なクッション性が追求され、背もたれと座面から冷風または温風を送る機構がビルトインされた。さらに助手席側後席には、オットマンを標準装備。リクライニング機構との併用でリラックスした移動時間が送れるよう工夫されていた。スピーカー内蔵のヘッドレストなどアメニティ演出も万全。Fパッケージはエアバッグを内蔵した専用大型センターコンソールが装備され定員は4名。車両価格は790万円で、標準仕様に対して50万円高の設定だった。