クラウン 【1987,1988,1989,1990,1991】

フラッグシップとしての風格を高めた8代目

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8代目は3ナンバーワイドボディを新設定

 1987年9月、トヨタ創立50周年に合わせて登場した8代目クラウンは、高級車として新たな一歩を踏み出した意欲作だった。カタログに記載された「満たされて、新しいクラウン」というキャッチコピーどおり、クラウンの伝統を大切にしながら各部を熟成し、ベンツやBMWといった欧州製高級車とは別種の日本らしい高級車に進化していた。
 8代目の注目点は、3ナンバーワイドボディの設定にあった。それまでのクラウンにも2リッターオーバーの大排気量エンジンを搭載した3ナンバーグレードは存在した。しかしそれは大排気量エンジンの搭載とともに、バンパーの大型化で3ナンバーボディとした“急ごしらえの3ナンバー”だった。3ナンバーといっても固有の個性の持ち主ではなかったのである。

 しかし8代目は違った。最上級グレードの4ドアハードトップ3000ロイヤルサルーンは全長4860mm×全幅1745mm×全高1400mmの堂々たる体躯を誇った。ボリューム感たっぷりのボディパネルが3ナンバー車特有のゆとりを感じさせる“正統派の3ナンバー”に仕上げていた。1980年代後半の日本は後にバブル景気と呼ばれる未曾有の好景気を謳歌していた。ベンツやBMWの欧州製高級車もけっして珍しい存在ではなくなっていた。そんな流れのなかでユーザーは日本の高級車の代表であるクラウンに、フラッグシップに相応しい風格を求めた。その回答がワイドボディの3ナンバークラウンだったのだ。

 伸びやかな印象と、高級な雰囲気は明らかに5ナンバークラウンと違っており、瞬く間に8代目を代表するイメージリーダーの座を揺るぎないものにした。ただし3ナンバーモデルも2730mmのホイールベースは5ナンバーモデルと共通で、室内スペースも実質的に同一だった。ゼロから新規に開発した3ナンバーではなく、5ナンバー派生のモデルという点では従来と共通だったのだ。

3種のボディタイプで多彩なバリエーションを展開

 ボディラインアップは多彩で、4ドアハードトップと4ドアセダン、そしてステーションワゴン(バン)の3種から選べた。前述の通り4ドアハードトップは3ナンバー規格のワイドボディ(全幅1745mm)と5ナンバー規格の標準ボディ(1695mm)の2種があった。ちなみに3ナンバー専用ボディの設定は4ドアハードトップのみで、セダンの3000ロイヤルサルーンは、従来と同様バンパーのみを大型化した5ナンバーモデルのボディを採用していた。フォーマルユースが主体のセダンの場合、あえて控えめな演出に止めたのである。

 エンジンはフラッグシップの3000ロイヤルサルーン用の、排気量2954ccの直列6気筒DOHC24V・7M-GE型(190ps/26kg・m)を筆頭に、排気量1988ccの直列6気筒DOHC24Vスーパーチャージャー・1G-GZE型(160ps/21kg・m)、その自然吸気タイプの1G-GE型(140ps/17.6kg・m)など合計7種で、トランスミッションは電子制御式4速オートマチックを主体に、一部グレードに5速マニュアルを設定する。

高級車の理想を追求したフルフレーム付きボディ

 8代目クラウンは、確かな信頼感を与える強靱さの持ち主だった。8代目はフルフレーム付きボディという伝統を守ったうえで、すべてを新規に設計。強靱な骨格で固めた客室部分と強固なフロントボディの一体化によりボディ剛性の大幅な向上を実現した。さらにパフォーマンスロッドの新設やサスペンション取り付け部位の強化などで走りの性能を高めていた。

 もちろん静粛性面でも抜かりはなかった。全体の振動系をモデル化した有限要素法による構造解析や、実車テストで不快な音を一掃したのである。足回りの設定はソフトだったが、それを支えるボディは強固。クラウンの快適性と安心感はフルフレーム付きボディが生みだしたものだった。

磨きがかかった伝統の静粛設計

 日本の高級車らしいこだわりは、徹底的な静粛設計と、先進メカニズムの積極採用に現れていた。ロードノイズの遮断に有利な伝統のフルフレーム方式を踏襲したこともあって、クラウンの静粛性は圧倒的で、法定速度内での室内はほぼ無音。耳障りなメカニカルノイズ、風切り音などはほとんど侵入してこなかった。当時世界で最も静かなクルマの1台と言われたものだ。

 先進メカニズムも随所に導入されており、上級モデルには電子制御タイプのエアサスペンションを採用。世界初のデュアルビジョンメーターやハンズフリー電話、TVやナビゲーションと一体化したエレクトロマルチビジョンも装備していた。空調もセンサーが室内温度の変化をつねに監視し、マイコンで最適の温度に自動調節するオートエアコンである。
 8代目クラウンは、日本を代表する高級車として自信に溢れた存在だった。欧州からの輸入車を含め数多くのライバルのなかでも強い個性を放ち“いつかはクラウン”という思いを抱かせた。