セリカ 【1999,2000,2001,2002,2003,2004,2005,2006】

意のままの走りを求めたラスト・スペシャルティ

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7代目は走りの歓びを追求

 1999年9月に登場した7代目セリカは、走りの歓びを追求したスポーツモデルだった。カタログの冒頭にはこう記載されている。「意のままに走り、自由に移動すること。それは、クルマの本質的な楽しさであり、人の本能を刺激する魅力でもあります。このクルマ本来の走る歓びを、胸が高鳴るようなドライビングプレジャーを、いま、新世紀に向けて、セリカが問いかけます。“走る・曲がる・止まる”。一つ一つの何気ない動きの中にも、心に響く性能があること。」と。

 歴代セリカは、スポーティな先進スタイリングと充実の快適装備、そして適度にスポーティな走りをミックスした、スペシャルティモデルの代表だった。セリカは1970年12月の初代デビュー以来、日本だけでなくアメリカでも高い人気を獲得し、スペシャルティカーの代名詞的な存在に成長する。しかし1990年代後半になるとスペシャルティカーに対する周囲の環境が変化した。若者のクルマ離れである。インターネット時代の到来、ケータイの普及に伴うコミュニケーション手法の変化、ゲームの高い人気など、クルマ離れの理由はいろいろ考えられたが、すでに若者が無条件にクルマに憧れを持つ時代は過ぎ去っていた。セリカの販売台数は、日本でもアメリカでもしだいに下降線を描くようになる。

スタイリングは“非日常”を表現

 7代目は、セリカ復活を目指していた。そのために追求したのは、冒頭に掲げた“走りの歓び”。クルマと過ごす時間の素晴らしさ、他では得ることの出来ない感動に満ちた走りの世界にこだわったのである。そのためデザインはもちろん、プラットホームからエンジンまでを一新。新鮮なイメージですべてをまとめた。

 スタイリングは「新時代、非日常性を感じる造形」が追求され、特徴的なヘッドランプ形状、豊かさとシャープさが共存したボディパネルを持つクーペフォルムとなった。この新鮮なスタイルは、トヨタのアメリカデザインスタジオCALTYの作品である。ボディサイズは全長4355×1735×1305mm。ホイールベースは2600mm。旧型と比較すると全長は65mm短く、ホイールベースは逆に100mm長い、前後のオーバーハングを短縮したのが特徴だった。

 グレード構成はパワー指向の1795cc新開発2ZZ-GE型直4DOHC16V(190ps)を搭載するSS-IIと、ややマイルドな1794ccの1ZZ-FE型直4DOHC16V(145ps)を積むSS-Iの2グレード構成。SS-IIにはタイヤと路面の角度をコントロールするアームを追加したスーパーストラット式サスペンション仕様が選べた。トランスミッションはマニュアルとATの2種。マニュアルはSS-IIが6速、SS-Iは5速。ATは全車が電子制御式4速を組み合わせていた。

SS-IIにマニュアルシフトが楽しめるスポーツATを搭載

 7代目セリカのATは、全車にエンジンとトランスミッションを統合制御する電子制御4速オートマチックを装備していた。滑らかなシフトフィールとタイムラグを感じさせない応答性によりリニアな加速感を実現した新世代である。SS-IIには、さらにスポーツステアマチック機能を盛り込む。ステアリングに設定したスイッチで、ステアリングから手を離すことなく希望のギアにシフトチェンジできる機能だ。ドライバーの動きを最小限に抑え、ハンドリングに洗練できるスポーツATである。このATもセリカの走りの歓びを高める大きな要素になっていた。

 室内は前席優先のパッケージングだった。前席にはショルダー部のサポート性をリファインしたバケットを採用。ステアリングは操作性に優れた本革巻き3本スポークである。ドライバー正面に配置した大型3連メーターは、レッド指針とアンバー照明を組み合わせた。

爽快なパフォーマンス。しかし最後のセリカに……

 7代目のセリカは、開発コンセプトどおり、胸躍る走りを披露した。とくに最上級モデルのSS-IIの楽しさは格別だった。エンジンの回転数に応じて吸排気バルブを高速用と低速用に切り替えるVVTL-i機構の採用により、2ZZ-GE型エンジンは全域で刺激的なパワーを発揮。190psのカタログスペック以上の迫力をドライバーに届けた。フットワークもハイレベルだった。新開発のダブルウィッシュボーン式リアサスペンションの効果で、後輪のしっかり感が向上。一段とロードホールディング能力を高めたフロントサスペンションとの相乗効果で、まさに意のままのハンドリングを実現していた。旧型よりひと回り小型のボディサイズも、ドライバーとの一体感を高める重要な要素だった。7代目セリカの走りは、リアルスポーツのレベルに到達していた。

 しかし、残念ながら販売成績は低調だった。当初2000台だった販売目標台数は、2002年8月のマイナーチェンジ時には400台へと下方修正される。2006年4月には販売を終了。セリカは36年の歴史に終止符を打った。7代目セリカの完成度は非常に高く、パフォーマンスもハイレベル。価格も内容を考えるとリーズナブルだった。しかし人気を獲得することは出来なかった。それはクルマを巡る価値観の大変動を物語っていた。