ウイングロード 【1996,1997,1998,1999】

使い勝手を磨いたコンパクトワゴン

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2種類のワゴンを統合した新世代モデル

 いわゆるバブル景気に沸いた1980年代、クルマの種類は野放図と言えるほど多くなっていた。販売店系列の増加と共に、各々がフルラインアップを揃えようとしたのだから、車種増加は当然の結果であった。そのような現象はワゴンや商用車の分野にも及び、日本車全体では数百種もの車種が生産されていたのである。
 しかし、1990年代に入ると状況は一変する。世界的な経済縮小やクルマを取り巻く環境問題の深刻化などで車種整理は必然となる。1996年5月に登場した日産の実用ステーションワゴンであるウイングロードは、増え過ぎた車種の整理と統合の結果生まれたモデルであった。

 それまで独立した車種であったサニー・カリフォルニアとサニーADワゴンを統一し、新しいブランドとして売り出したものだ。車名となったウイングロード(Wingroad)は、タウンユースからアウトドアユースまでの幅広い使い方に対応できる意味を込めて、英語で鳥の翼(Wing)と道(Road)を組み合わせた造語である。

駆動システムはFFとアテーサ4WDの2種を設定

 ボディサイズは、ホイールベース2400㎜、全長4295㎜、全幅1670㎜、全高1515㎜で、ベースとなったサニー系とほぼ同じとなっていた。スタイリングはボディ後端部のデザインが先代のカリフォルニア&ADワゴンから変更され、ハッチゲートの傾斜が増えて乗用車的なイメージが強くなった。サイズやスタイリングは、直接的なライバルであったトヨタのカローラ・ツーリングワゴンにほぼ等しいものであった。

 フロントに横置きされ、前輪を駆動するエンジンは3種で、いずれも直列4気筒である。ガソリン仕様はDOHC16バルブのSR18DE型(排気量1838cc、125ps/6000rpm)およびGA15DE型(1497㏄、105ps/6000rpm)の2種。他に燃費性能に優れたCD20型ディーゼル(1973㏄、76ps/4800rpm)が設定されていた。トランスミッションは4速オートマチックと5速マニュアルの2種、駆動方式は前2輪駆動(FF)と日産独自開発によるアテーサを搭載した4輪駆動(4WD)があった。

専用リアサスペンションで広い荷室を実現

 ウイングロードは、シャシーコンポーネンツをサニー系と共用し、エンジンなどパワートレーンも既存のモデルから流用するなど、徹底した信頼性の確保とコストダウンが図られた。しかし独自設計のアイテムもあった。大きなものではリアサスペンションだ。2WDではトーションビーム・トレーリングアーム式、4WDは5リンク式となるリアサスペンションは、ストラットタワーを無くしたコンパクト設計が施され、荷室の邪魔な出っ張りを一掃していた。ストロークをたっぷりと取り優れたグリップ性能を確保したうえで、省スペース性も実現した賢いサスペンションだった。全長4295mmとコンパクトだったが、広い荷室を持っていたのは専用サスペンションの利点が生きていた。
  ウイングロードは、無闇な高性能を求めることなく、必要十分な性能と高い経済性を見事に両立したモデルであった。それは、すでに完成したコンポーネンツを使うことで、耐久性やランニングコストの面で大きなアドバンテージを持つことを意味する。価格も150〜180万円前後と比較的安価に設定されており、装備などの内容からすれば十分に魅力的であった。

時代のニーズをがっちり掴み人気モデルに成長

 ウイングロードはレジャーやツーリングには打ってつけのモデルとなった。当時は、クルマを使ったフィッシングやトレッキング、ウィンタースポーツなどのアウトドアライフを楽しむことがトレンドになりつつあった。それだけに大きなラゲッジスペースと4〜5人が十分に乗れるサイズを持ったウイングロードのようなモデルに人気が集まりはじめていたのである。実にタイムリーなデビューであった。

 クルマは、走らせることを目的とするものから、ドライブ先で実際に行うアクティビティをサポートするものに変容しつつあったのである。したがって、どうしても嵩張ることになるアウトドア向けのラゲッジを無理なく積みこむことが出来、しかも多人数を乗車させることができるウイングロードは、若者を中心として確実なニーズを掴む。地味だが意味のあるモデルの1台である。