オーパ 【2000,2001,2002,2003,2004,2005】

斬新コンセプトのニュージャンル2BOX

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21世紀、理想の乗用車を目指して開発

 来るべき21世紀を目前にした、1990年代後半から2000年にかけてのトヨタの商品開発は、非常に活発だった。世界初の量産ハイブリッド車となったプリウス(1997年)や“小さな高級車”を標榜するプログレ(1998年)など、次世代パッセンジャカーを目指した意欲的なニューモデルを続々と発表する。2000年5月に登場したオーパも、トヨタの21世紀戦略に基づいて開発したニューカマーだった。ミニバンとワゴン、そしてミディアム2BOXの中間に位置するニュージャンルモデルで、車格的にはカリーナ(現在のアリオン)に相当した。車名のオーパ(OPA)とは、英語のオー!(Oh)に相当する、驚きを示すポルトガル語。オーパの斬新なコンセプトを表現するために採用されたネーミングである。

 オーパは1999年秋の第33回東京モーターショーに参考出品され、ほぼそのままのカタチで2000年5月に正式発売された。存在感たっぷりのフロントマスクやウインドーグラフィック、明確なウエッジシェイプのスタイリングを持ち、ラインアップはベーシックなαと、充実装備のiの2グレード構成。αにはLパッケージ、iにはSパッケージを用意し、パワーユニットは排気量1794ccの1ZZ-FE型・直4DOHC16V(FF車136ps/17.4kg・m)と、1998ccのガソリン直噴1AZ-FSE型・直4DOHC16V(152ps/20・4kg・m)から選べた。駆動方式はFFと4WDの2タイプ。4WDは1794ccエンジン搭載車に用意していた。

カローラサイズでクラウンを凌ぐ室内空間を実現

 オーパの個性は、ゼロから構築した自由な車両パッケージにあった。ボディのスリーサイズは全長4250×全幅1695×全高1525mm。取り回しに優れた5ナンバーサイズで、とくに前後のオーバーハングを切り詰めた結果、全長はカローラ並みのコンパクトサイズとなっていた。それに対してホイールベースはたっぷりの2700mm。ロングホイールベースは広い室内空間の創出に大きなメリットをもたらすが、オーパはその好例だった。室内サイズは長2025mm×幅1400mm×高1250mm。クラストップの室内スペースを誇ったのだ。2000mmを超える室内長は、フォーマルセダンのクラウンより広かった。また全高を立体駐車場に入る範囲で高めた結果、ミニバンに匹敵する1250mmの室内高を備えていたのも特徴だった。

 オーパの室内は、数値どおりに実に広々としていた。前席だけでなく後席にも120mmの前後スライド機構が組み込まれており、後方にスライドさせると足元スペースはリムジン並みに広がった。また大きな荷物を収納するため前方にスライドさせても、元々の空間に余裕があるため窮屈な印象はなかった。高さ方向の余裕を生かしてシートの着座位置を高めたことも利点を感じた。前後席ともに見晴らしがよく、乗降性もハイレベルだったのである。シートの着座位置が乗り込み時にほぼ腰を横スライドさせた位置にあたるため、年配の人にとっても優しいクルマだった。

優れた性能、しかし販売台数は伸び悩む

 オーパは、自慢の室内空間を独自のカラーリングで、お洒落に演出する。基調色のアイボリーとブラックを上半分と下半分、さらにフロントとリアで使い分けることでパーソナルなイメージを構築したのだ。スポーツシートを備えるSパッケージを除き、前席はアイボリー、後席はブラックという色違いのシートを採用。メーカーではこの室内配色を、2組のカップルに心地いいプライベート感をもたらす“デュアル2トーン”と表現した。

 オーパは走りも俊敏で、燃費に優れ、トヨタらしい気配りに溢れた優れた実用車だった。斬新なパッケージングがもたらす優れたユーティリティには光るものがあった。しかし、クルマの完成度に必ずしも販売成績が比例しないのが、クルマビジネスの難しい側面である。オーパの販売は苦戦する。
 メーカーは主要ターゲットを、フレッシュな感性を持つ30代としていた。しかし実際の30代ユーザーの大半は3列シートのミニバンを選んだ。子育て世代の30代にとって2列シート仕様としては広い室内空間を持つオーパより、3列シートの実用性が魅力的に映ったのだ。また個性派の30代は、VWゴルフや、BMWといった輸入車を選んだ。日本車としてはとび切り個性的で、ハイセンスなオーパでも輸入車には太刀打ちできなかったのだ。仮定の話だが、オーパが“カリーナ”という伝統のネーミングを纏って登場していたら、販売状況は違っていたかもしれない。カリーナというブランドの信頼感があるため、その新しさを素直にメリットとして感じられたのではないだろうか。日本のユーザーは、意外に保守的。ブランニューモデルが即座に市民権を得るのは、本当に難しいのだ。

“トータルクリーン”を掲げた21世紀のクルマ作り

 オーパの21世紀コンセプトは、地球環境の保全という面にも生かされていた。オーパはトヨタが掲げる“トータルクリーン”の先駆けでもあった。地球温暖化を防ぐ燃費向上という点では、CO2排出量の低減を目指して、エンジンの軽量・コンパクトや、ガソリン直噴システムなどの最先端技術を導入。トランスミッションのリファインや車両全体の軽量化によって10・15モード燃費13.0〜17.8km/Lのクラストップの低燃費を実現した。排出ガスのクリーン化にも積極的で、1998ccの1AZ-FSE型では新成層燃焼方式の直噴システムやVVT-I機構の採用による燃焼改善のほか、電子制御EGR(排気ガス再循環システム)と、性能を大幅に改善したNox吸蔵還元型三元触媒を採用。これにより排出ガスをクリーン化し「平成12年基準排出ガス25%低減レベル」を実現していた。