ブルーバード 【1983,1984,1985,1986,1987】

FFレイアウトに変身した先進の“青い鳥”

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7代目のニュースはFFレイアウトへの大変身!

 1959年8月に日産初の本格的な小型乗用車としてデビューしたダットサン・ブルーバード(310型)は、たちまちトップセラーとなって国産小型乗用車の礎を築くことになった。車名のブルーバード(Bluebird)は、当時の日産社長であった川又克二が名付けたもので、メーテルリンク作の童話「青い鳥」に因んだものであることはよく知られている。

 ブルーバードはユーザーの高い支持を背景に順調に発展を続け、1963年の410型、1967年の510型、1971年の610型(ブルーバードU)、さらに1976年の810型などを経て、1983年10月に7世代目にフルモデルチェンジされた。U11型という新しいコードナンバーを与えられた7代目の新シリーズは、それまでの縦置きフロントエンジンによる後輪駆動から、今日的な横置きフロントエンジンによる前輪駆動方式を採用していた。どちらかといえばスタイリングデザインやメカニズムでは保守的な傾向が強かったブルーバードにしては画期的な出来事だったのである。

豊富なラインアップでユーザーを魅了

 前輪駆動のメカニズムは、すでに1981年6月にデビューしていたスタンザ/オースター系の前輪駆動システムを流用する形で搭載している。エンジンは従来の後輪駆動モデルに使われていたものをリファインして用い、駆動輪である前輪に荷重をかけるために、前車軸より前側に横向きに搭載している。エンジンのバリエーションは1598ccのCA16型(90ps/13.6kg・m)を普及版として設定していたものの主力は1809ccのCA18型で、キャブレター仕様(100ps/15.2kg・m)、インジェクション仕様(115ps/16.5kg・m)、ターボ仕様(135ps/20.0kg・m)の3タイプから選べた。経済性を重視するユーザーには1952ccのLD20型ディーゼル(67ps/121.5kg・m)を用意する。トランスミッションは4速&5速のマニュアルと3速&4速のオートマチック。すべてフロアシフト仕様で、上級グレードのオートマチックにはロックアップ機構を組み込んでいた。

 前輪駆動方式の採用という、メカニズムとしては革新的だったが、ボディースタイリングは極めてオーソドックスなもので、直線を基調にした、折り紙細工のようなスタイルは日産車らしいデザインだった。特にフロント回りの矩形ヘッドライトやボディーサイドにまで回り込んだウインカーで構成する造形などは、上級車種であるセドリック/グロリアにも似たものであった。ユーザーの上級指向を巧みに捉えたものといって良い。

 ボディバリエーションは5人乗り4ドアセダンと4ドアハードトップ、ADワゴンと呼ばれるステーションワゴン(乗用車登録)/ライトバン(商用車登録)があった。ボディーサイズは、前輪駆動方式の採用に伴ってホイールベースが旧型に比べて25mm延長され、前後輪のトレッドも80〜90mm、全幅は1690mmに拡大され、室内スペースが拡がっている。

夜間の安全性を高めた新装備。コーナリングランプの採用

 FFレイアウトに変身したブルーバードは安全性確保にも積極的だった。その装備のひとつが中級グレード以上に標準装備したコーナリングランプである。ライト点灯時にウインカーを操作すると、ヘッドランプ横に配置したコーナリングランプが点灯する仕組みで、斜め前方が明るく照らされるため、障害物を発見しやすくなった。

 ヘッドランプ自体もハロゲン式に変更されたため、明るさが大幅にアップしていたが、このコーナリングランプは夜間走行の多いドライバーにとって朗報だった。ちなみにターボSSS-Sグレードにはヘッドランプワイパーも装備されていた。

V6エンジンを搭載した上級版マキシマの登場

 当初は4気筒エンジン・シリーズのみだったが、1984年10月には、新規開発のVG20型6気筒エンジンをブルーバードにも搭載し、ブルーバード マキシマとして発売した。自然吸気仕様と170ps/22kg・mの高出力を発揮するターボ仕様から選べたV型6気筒ユニットは、全長で90mm延長と、さらに大型化されたボディに搭載され、ひとクラス上の高級車となった。ブルーバードの派生モデルとして生み出されたマキシマは、1988年10月のブルーバード系のフルモデルチェンジを機に独立したシリーズとなる。

 世界的な流行となっていた先進技術の一つであった前輪駆動方式を採用したブルーバードは、再び新鮮な魅力を加えたことになり、落ち込んでいた人気を取り戻すことに成功する。極めて地味な存在ではあるが、日本車の歴史に残るクルマの一台である。