スプリンター 【1979,1980,19811982,1983】

フレッシュな造形で魅了した4代目

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4代目は全車が精悍な角形ライト採用

 1979年3月にカローラとともにフルモデルチェンジした4代目スプリンターは若々しいクルマだった。来るべき1980年代に備えシャープな直線で構成したクリーンなスタイリングと、昭和53年度排出ガス規制をクリアーしたパワフルな低公害エンジンの融合により新たな走りの世界を提供したからである。

 4代目の魅力はスタイリングにあった。4ドアセダンを軸に、クーペ、ハードトップ、リフトバックのスペシャルティモデルを加えた4ボディラインアップは兄弟車のカローラと共通だったが、スプリンターは全車が精悍な角形ヘッドランプを採用。セダンでは特徴的なセンターグリルとスマートなCピラー処理が、クーペなどのスペシャルティ系は風を切り裂くスラントノーズ処理がスプリンターの個性を表現した。従来までの曲面処理を重視した歴代モデルと違い、4代目はフォルムそのものを磨き込み虚飾を排することで存在感を演出したのだ。

 基本フォルムとスプリンター独自のデザインアレンジは巧みだった。観る者にお洒落な印象を与えたのだ。従来スプリンターはカローラの脇役的なイメージが漂ったが、4代目はカローラ以上にスポーティでフレッシュな印象を獲得する。

開放的で上質なイメージの室内

 室内も洒落ていた。低いベルトラインにより開放感が増していたのが好印象だった。加えてインスツルメントパネルがスタイリッシュだった。明るい色調の全面アクリルレンズに収めたコンビネーションメーターは未来的な印象で、オーディオシステムを収めたセンターコンソールと相まってスポーティな印象を訴求した。

 質感も高く上級のカリーナやコロナと比較しても見劣りしなかった。むしろデザインが先進的な分、一段と立派に見えたほどだった。室内スペースも確実に広くなっており、セダンの場合で従来モデルとくらべ長さで60mm、幅で10mm拡大していた。ちなみに室内幅はカタログ上僅か10mmの差だったが実質的なゆとりを左右するショルダー部分では30mmも拡大していた。ダミー人形を用いた入念な室内設計に取り組んだ成果が確実に反映されていたのである。

迫力のDOHCエンジンを全ボディに設定

 エンジンは主力となる1500シリーズに新設計の3A-U型エンジンを採用した。昭和53年度規制に対応するクリーン性能を実現しながら1452ccの排気量から80ps/5600rpm、11.8kg・m/3600rpmの十分な出力/トルクを発揮する実力派だった。1300シリーズと同等の24km/Lの優れた60km/h定地走行燃費を誇り、走りも俊敏。3A-U型はスプリンターの性格にベストマッチの心臓だった。

 電子制御燃料噴射システムを組み合わせたスポーティな2T-GEU型を全ボディタイプにラインアップしたのも4代目のニュースだった。トヨタの誇るDOHC機構を備えた2T-GEU型は厳しい排気ガス規制をクリアーしながら1588ccの排気量から115ps/6000rpm、15.0kg・m/4800rpmの抜群のスペックを実現。DOHCユニットらしく一気に6000rpmオーバーまで回り、圧倒的な速さをスプリンターにもたらした。2T-GEU型ユニット搭載モデルはセダン、ハードトップ、リフトバックが装備の充実したGTを名乗り、レビンと命名されたクーペは他のモデルより一段と走りに振った仕様に仕上げられていた。

欧州車イメージのしっかりとした走り

 走りも大幅に進歩していた。リアサスペンションを旧式な半楕円リーフから4リンク式にグレードアップしたことが大きかった。4代目スプリンターの操縦性はシャープな印象で、フットワークは欧州車のイメージ。とくにしっかりとした印象のステアリングが4代目の特徴だった。高速道路やワインディングロードで走りが際立つ存在だったのだ。

 トヨタの主力モデルらしく、静粛性や乗り心地への配慮も万全。快適性の高さは、クラス水準を一気に押し上げるほどのレベルだった。それまでスプリンターにはサニーやランサーなどのライバルが存在した。しかし4代目は完成度が違った。サニーやランサーより明らかに上質なクルマに仕上がっていた。スプリンターの最大のライバルは他社の同級車ではなく、兄弟車のカローラだけと言えた。世界に飛翔していたトヨタの自信が結晶した存在、それが4代目のスプリンターだった。

クーペボディのトレノとSRは別格の存在

 スプリンターの4種のボディタイプのなかでスポーツ派の熱い視線を集めたのはクーペだった。フルファストバックの鮮烈な造形が走りの良さを連想させ、しかも大型リアゲートの採用でユーティリティもハイレベルだったからだ。

 クーペは4グレード構成だったが、とくに人気が高かったのはトレノとSR。伝統のDOHCユニット(115ps)を積むトレノは別格で、エンジン以外にも専用4本スポークホイール、4輪ディスクブレーキ、スポーツサスペンション、ハイバックスポーツシートなど、高度な走りをもたらす機能が満載だった。しかし価格も135万8000円とハイレベル。なかなか手が届かなかった。そこでもうひとつのスポーツグレードであるSRが注目された。

 SRはエンジンを除き、内外装はほぼトレノと同等だったが価格は大幅にリーズナブル。1452cc(80ps)ユニットの1500SRなら105万8000円、1979年8月にラインアップに加わった1770cc(95ps)ユニットを積む1800SRでも116万7000円で購入できた。SRは豪快さという点ではトレノに歯が立たなかったが、軽快さはトレノを上回り、経済性も上。トータルに見ると賢い選択と言えた。