シーマ 【1996,1997,1998,1999,2000,2001】

“日産の新しい最高”を目指した第3世代の高級サルーン

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1990年代後半に向けた高級乗用車の模索

 バブル景気の最中では“シーマ現象”という一大ブームを巻き起こし、日本の高級車市場に確固たる地位を築いた日産自動車の高級パーソナルサルーンのシーマ。しかし、同車は1990年代中盤になるとRVの隆盛などによって市場での注目度が低迷していた。

 1990年代後半に向けた高級乗用車、そしてシーマのあるべき姿とは−−。多角的な検討で導き出した結論は、“シーマであること”の意義を見つめ直すことだった。具体的には、まったく次元を異にした基本性能、そしてクオリティの提案を目指し、安全性能や走行性能、内外装デザインなどひとつひとつが揺るぎない価値となる新しい高級車の実現を開発テーマに据えた。

世界最高水準の安全ボディを採用

 プラットフォームを共用化するY33型系の9代目セドリック/10代目グロリアの登場から1年ほどが経過した1996年6月、FY33の型式をつけた第3世代のシーマが市場に放たれる。キャッチフレーズは“日産の新しい最高”。グレード展開はラグジュアリー志向のLシリーズ(41LX/41LV/41L/30LV/30L)とスポーティ路線のグランドツーリングシリーズ(41TR-X/30TR/30T)で構成した。

 3代目シーマは、まずその基本骨格で注目を集める。4ドアセダンのボディには、世界最高水準を謳うクラッシャルゾーン+セーフティゾーンの“ゾーンボディ(ZONE BODY)”コンセプトを採用。正面(フルラップ)衝突やオフセット衝突をはじめ、斜め、側面、後面などあらゆる方向からの衝突を想定した衝撃吸収ボディ・高強度キャビンを実現する。また、国産車では初となるSRSサイドエアバッグも装備。ほかにも、運転席&助手席SRSエアバッグや前後席ELR付3点式シートベルト、衝撃緩和ドア構造、ABS&V-TCS(ビスカスデフ付トラクションコントロールシステム)などを設定して最高水準の安全性能を確保した。シャシー面に関しては、ホイールベースを従来比で+15mm(2830mm)、前後トレッドを+40mm(前1540/後1540mm)拡大したうえで、しなやかかつクオリティの高い乗り味を狙った進化版の前マクファーソンストラット/後マルチリンクのサスペンションをセット。また、最上級グレードの41LXには油圧アクティブサスペンションを、グランドツーリングシリーズにはスポーティサスペンションを採用した。

エンジンはパワフルなV6とV8をラインアップ

 搭載エンジンは完成度を高めたVH41DE型4130cc・V型8気筒DOHC(270ps/38.4kg・m)とVQ30DET型2987cc・V型6気筒DOHCインタークーラーターボ(270ps/37.5kg・m)の2機種をラインアップする。組み合わせるトランスミッションは最新のエレクトロニクス技術を投入したフルレンジ電子制御4速AT(E-AT)で、最重減速比はVH41DEエンジン用が3.692、VQ30DETエンジン用が3.916に設定した。

 エクステリアは、和をテーマにした従来の車両デザインからドイツ車を彷彿させる重厚なスタイリングへと刷新。躍動感に満ちた堂々たるセダンフォルムを創出したことがトピックとなる。また、広い視界の確保を狙ってコーナー部やグラスエリアをアレンジ。さらに、ロングライフ撥水ガラスや配光性に優れたハロゲンヘッドランプ、コーナリングランプなどを装備して走行安全性の向上を図った。

インテリアは、最上の心地よさの演出が訴求点。柔らかなラインで仕立てたインパネに厳選した素材、トータルルコーディネートした室内照明、クリーンフィルター付きのオゾンセーフフルオートエアコン、最新のバーチャルビジョンメーター、世界初のバードビューナビ付マルチAVシステム、左右両開きの2段式コンソールボックスなどを配して上質かつ機能的なキャビンルームに仕立てる。座席に関しては、くつろぎが実感できる前席エルゴノミックシートや快適な着座姿勢が得られる後席シートを設定。トランクルームは9インチのゴルフバッグとスポーツバッグが4セット収納できる大容量を確保した。

先進装備を積極的に追加

 デビューから3カ月ほどが経過した1996年9月にはインフィニティQ45(G50型)が生産中止となったために、3代目シーマは、日産の最上級パーソナルサルーンに位置づけられた。しかし、販売成績はさほど振るわなかった。市場ではRVが人気を集め、また高級車カテゴリーでもセルシオなどの陰に隠れてしまったことが低迷の要因だった。

 販売の回復を狙って、日産は様々な改良を3代目シーマに施していく。1997年1月にはシーマのデビュー10周年を記念した10thアニバーサリーモデルを発売。同年9月には一部改良を行い、4WD(アテーサE-TS)モデルの追加やVIPパッケージのカタロググレード化、後席サイドエアバッグの設定などを実施する。1998年1月には特別仕様車の41プレミアムリミテッドをリリース。同年9月になると、内外装の意匠変更やアクティブヘッドレストの設定などをメニューとするマイナーチェンジを敢行した。さらに1999年7月には、ミリ波レーダーセンサーを用いた自動ブレーキング機能付きの車間自動制御システムを搭載する41LV-Zをラインアップに加えた。
 様々な先進機構を採用して市場にアピールした3代目シーマだったが、販売台数は期待したほど伸びず、2001年1月にはグローバルに通用する新しい高級車像を目指した4代目のF50型系に移行したのである。