ヴィヴィオ 【1992,1993,1994,1995,1996,1997,1998】

先進メカニズムを満載したドライバーズ・ミニセダン

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真のドライバーズカーを目指したレックスの後継

 富士重工は1992年3月に全く新しい軽自動車であるスバル ヴィヴィオを発売した。ヴィヴィオは、それまでのレックスシリーズに代わるモデルであり、実用本位のデザインを改め、軽自動車という限られた条件の中でも真のドライバーズカーとしての完成度の高さを目指して開発されていた。開発のテーマが「ドライバーズ・ミニセダン」であったということからも、それは伺われる。車名のヴィヴィオ(VIVIO)とは、英語で鮮やかなとか、生き生きとしたなどの意味を持つVividからの造語であるという。また、一説によれば排気量の660㏄という数字をローマ数字で表記した「ⅥⅥ0」に由来すると言うが定かではない。

 1958年3月に本格的な軽自動車であるスバル360を発売して、軽自動車のパイオニアのひとつとなった富士重工は、ユニークなメカニズム持ったクルマを送り出す、高い技術力を誇るメーカーである。360以降、スバルブランドの下で数多くのモデルを登場させてきたが、軽自動車は同社の中核的な車種として、時代とともに大きく発展することになった。ただし富士重工は世界的にみるとメーカーとしての規模は決して大きくなく、資本力も強くはない。常に経営的な不安定さは隠せず、大メーカーとの資本提携や技術協力などが不可欠となっていた。現在ではトヨタ自動車の傘下にある。

新規格化で軽自動車の実力がアップ!

 1990年1月に軽自動車の大幅な規格変更が行われ、ボディサイズは全長で100㎜伸ばされて3300㎜に(全幅は変わらず1400㎜で、全高も2000㎜が上限のまま)、エンジン排気量は660㏄へと拡大された。ボディサイズの拡大は、衝突安全性向上のためであり、エンジン排気量の拡大は絶対的な性能向上のためであった。但し、安価な自動車税の恩典はそのまま残されていた。この規制改訂により、各メーカーの軽自動車は一新され、続々と新型車が登場することになった。

 それまでは、軽自動車と言えば、安価だが性能的なレベルが低く、一般の交通の流れに乗るのがやっとというクルマも存在した。極端に言えばクルマとして見てもらえないという点もあったのだが、新規格になって以降は、ミニマムトランスポーテーション(最小型の移動手段)の主役として独自の市場を持つことになる。軽自動車の老舗であるスバルも、1992年3月に新型車ヴィヴィオを投入し新たな市場を目指したのである。

全車、4気筒エンジンを搭載

 新型車となったヴィヴィオの開発テーマは「シンプルリッチ」という、いささかわかりにくいものだが、要は小さな高級車を目指していた。スタイリングデザインはそれまでの軽自動車が、規格ギリギリまでサイズを拡大し、実用性を最優先にしたボクシーな “機能造形”に陥っていたのに比べ、曲面を多用したクルマらしいもので、3次曲面ガラスの採用などもあり、小型ではあったが、極めて個性的なスタイリングとなっていた。車種構成は4人乗りの3ドアセダンと5ドアセダン、商用車登録の3ドアバンの3種があった。

 搭載されるエンジンは、クローバー4と呼ばれる排気量658㏄の直列4気筒SOHCで、自然吸気仕様は出力48ps/6400rpmバージョンが電子制御CVTに、出力52ps/7200rpm仕様が5速マニュアルに各々組み合わされた。さらに、小型車と同等の走りの余裕を狙いSOHCのスーパーチャージャー版(64ps/6400rpm)をGXのグレード名で設定。トップグレードであるヴィヴィオ4WD 3ドアセダン RX-Rにはクローバー4にDOHC16バルブヘッドとインタークーラー付きスーパーチャージャーを装備した精緻なユニットが採用された。スペックは最高出力64ps/7200rpm、最大トルク9.0kg-m/4000rpmを誇った。このEN07型・直列4気筒DOHC16Vスーパーチャージャーユニットは、航空機製造も行う富士重工の持つ技術力の高さを象徴するエンジンである。

スポーティな競技向けモデルの設定

 トランスミッションは電子制御CVTと5速マニュアルで、シフトはいずれもフロアシフトとなる。駆動方式は多彩で、フロント横置きエンジンによる前2輪駆動のほか、VCU(ビスカスカップリング)を用いたフルタイム4輪駆動、トランスファーギアを用いたセレクティブ4輪駆動の3方式が存在した。
 サスペンションは前後ともストラット/コイルスプリングとなっており、乗用車仕様をメインとした設計となっていた。ブレーキは前がディスク(上級車種はベンチレーテッドディスク)、後はドラムでサーボ機構が付く。

 スバル ヴィヴィオには、極めて多くの派生モデルがあったことが知られている。そのひとつが、1993年2月に登場したモータースポーツ向けのベース車両のRX-RAだった。直列4気筒DOHC16バルブスーパーチャージャーエンジン(64ps/7200rpm)とフルタイム4輪駆動システムというフラッグシップのRX-Rと共通のパワートレインを搭載した上で、パワーウィンドウ、パワーステアリングと言った快適装備の全てを外してあり、軽量化とコスト軽減を図っていた。その一方で、クロースレシオとしたギア比を持つトランスミッションの採用や、サスペンションの強化などを実施していた。RX-RAはラリーやジムカーナなどの競技参加を前提としており、様々なチューニングを加えることで、レーシングマシンとして完成させることができた。

 RX-RAは、軽自動車では特異な存在だった。一般的なスポーツ・フラッグシップは、1992年3月のデビュー時から設定されていたヴィヴィオRX-Rである。3ドアハッチバックセダンのみの展開で、ドライブトレーンやサスペンションなどはRX-RAと共通していたが、パワーウィンドウにパワーステアリング、電動ミラーなどの快適装備を搭載し、テールスポイラーやフロントバンパー一体型エアダム/スカートと一対のフォグランプなどを装着、軽自動車のスポーティーモデルとした。価格は2輪駆動モデルで109万8000円、4輪駆動モデルでも122万3000円となっており、内容からすれば十分にお買い得なモデルである。

充実装備の限定車も登場

 ヴィヴィオRX-Rには、標準仕様の他にも様々な記念モデルやスペシャルモデルがあった。1992年9月には富士重工業の創立40周年の記念モデルであるRX-R S1が発売されている。RX-R S1はボディーカラーをシルバーとし、フロントウィンドウを赤外線反射ガラスに、側面窓ガラスをブロンズガラスに入れ替え。ケンウッド社製オーディオシステムなどを標準装備としていた。

 また、1995年5月には、イースト アフリカン サファリラリーでの勝利を記念して、特別仕様のマフラーやフォグライトを装備した200台限定のRX-Rスペシャルモデルが発売されている。
 軽自動車のスペシャルモデルとして、トップレベルの高性能と充実した豪華な装備を特徴としたスバル ヴィヴィオのシリーズは、1998年10月に同じシャシーコンポーネンツを使ったプレオシリーズへとフルモデルチェンジされた。