ユーノス300 【1989,1990,1991】

ペルソナ・ベースのスタイリッシュ4ドアHT

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販売チャンネルの拡大に注力した1980年代後半のマツダ

 後にバブルといわれる好景気を謳歌していた1980年代後半の日本の自動車業界。主要メーカーは豊富な資金を背景に、販売網の拡大や新型車の開発を鋭意推進した。なかでも上昇気流に乗っていたマツダは、国内第3位の地位を確かなものとし、さらに上位メーカーに迫るために、販売チャンネルの大幅な強化策を打ち出す。目指したのはトヨタが展開していた5チャンネル体制の構築で、そのための車種ラインアップの拡大も積極的に画策した。

 1989年4月に、マツダは2つの販売チャンネルを新設する。ユーノス店とオートザム店だ。このうちのユーノス店は、スポーティ感やスペシャルティ感あふれる斬新なモデルやシトロエン車を手がける。ディーラーの店構えも、おしゃれでスタイリッシュなイメージで統一した。同店ではまず最初に、2シーターオープンスポーツのロードスターを発売する。販売は1989年9月からスタートしたが、たくさんのバックオーダーを抱えるほどの人気ぶりだった。さらに、輸入車として販売したシトロエンBXやAXなどもマニア層から熱い視線を集めた。

ペルソナ・ベースの上級サルーンが登場

 来店者がつめかける新ディーラー網のユーノス店。この人気をさらに高めようと、マツダは1989年10月に2台の新型ユーノス車を発表する。1台はアスティナをベースとする5ドアハッチバック車のユーノス100。そしてもう1台が、ペルソナ(1988年10月デビュー)の内外装を意匠変更したスペシャルティ上級サルーンのユーノス300だ。

 センターピラーレスの4ドアハードトップボディを採用したユーノス300は、グレード展開としてシート&ドアトリムのアレンジが違う2種類を設定。クロス張りがタイプA、レザー張りがタイプBを名乗った。スタイリングは基本的にベース車のペルソナを踏襲し、低めのフォルムや柔らかいボディラインを特徴とする。ただし、ユノースエンブレム入りグリルやイエローフォグランプ、丸型4灯式リアコンビネーションランプ、リアスポイラー(LEDハイマウントストップランプ付き)、7本スポークとディッシュを組み合わせたアルミホイールなどの専用アイテムを装備してユーノス車らしいスポーティ感を強調した。

 ボディカラーはツートンを基調とし、ブレイブブルーマイカ&アライブブルーメタリック/ニートグリーンマイカ&エクシードグリーンメタリック/スティールグレーマイカ&エクセルグレーメタリック/クリスタルホワイト&プレステージシルバーメタリックという計4タイプをラインアップした。

 インテリアもペルソナと基本的に同デザインで、インパネからリアのシートバックにかけてのラインに連続性を持たせて内装の周囲を曲線基調でまとめたキャビン、ソファーのようなリアシート、ライトとワイパーのスイッチ以外をメーター回りのクラスターにまとめたインパネを採用する。一方、専用アイテムとしてスポーツタイプのフロントシートや4本スポークのステアリングなどを設定。ペルソナではオプション設定だった灰皿は標準装備化した。また、内装色はグレー系でまとめ、シックな雰囲気を創出した。

スポーティな味つけは評価されたものの−−

 メカニズム面も基本的にペルソナを踏襲するが、ユーノス車のキャラクターに合わせて走行性能のアップを図る。搭載エンジンはF8-DE型1789cc直4DOHC16VとFE-ZE型1998cc直4DOHC16Vの2機種を設定し、それぞれに5速MTと4速AT(EC-AT)のミッションを設定。パワースペックはF8-DE型が115ps/16.0kg・m、FE-ZE型がMT150ps/18.8kg・m、AT145ps/19.0kg・mで、いずれもペルソナを上回った。

 前後ストラット式のサスペンションも、ペルソナよりハードめにセッティング。タイヤにはペルソナに標準の70偏平14インチに対して、60偏平15インチ(195/60R15)を装着した。

 ラグジュアリー志向のペルソナからスポーティな4ドアハードトップ車に変身したユーノス300は、とくにバランスのいい走行パフォーマンスが市場から高い評価を受ける。しかし、販売成績は予想外に振るわず、ユーノス店ではロードスターの影に隠れた存在となってしまう。1991年3月にはBBS製アルミホイールや専用ボディカラーなどを採用した特別仕様車のタイプXを発売するものの、人気アップの起爆剤とはならなかった。
 結果的にユーノス300は、1992年に販売を終了。実質的な後継モデルのユーノス500(1992年1月デビュー)にバトンタッチすることとなったのである。