日産の歴史1 第一期/1933-1959 【1933,1934,1935,1936,1937,1938,1939,1940,1941,1942,1943,1944,1945,1946,1947,1948,1949,1950,1951,1952,1953,1954,1955,1956,1957,1958,1959】

ジャパン・オリジナルを求めた技術者集団の軌跡

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1933年、日本の未来を信じる企業家、
鮎川義介が設立した「日産自動車」は、
日本に最適なジャパン・オリジナルの小型車を目標とした。
1935年ダットサンの量産1号車からはじまるそのこだわりは、
戦後海外メーカーとの技術提携を経て、
初代ブルーバードの成功へと結実する。
一貫生産ラインでダットサンを量産

 日産自動車は、1933年12月26日に産声を上げた。資本金1000万円で設立された「自動車製造株式会社」がルーツである。戸畑鋳物株式会社と日本産業株式会社(略称・日産)の共同出資で生まれた会社で、翌年5月に「日産自動車株式会社」に改称している。創始者は日産コンツェルンの総帥であり、政界にも顔が広かった鮎川義介。鮎川は日本が一流の技術立国として欧米と対等の位置に立つためにはジャパン・オリジナルの自動車の開発・生産が必要であり、それは将来的に大きな産業の柱になると認識していた。
 鮎川は、横浜に約6万坪の敷地を求め、東洋一の規模を誇る横浜工場を建設する。そこで本格生産に入ったのがダットサンである。量産第1号のダットサンがラインオフしたのは1935年4月。一貫生産ラインによる量産はすぐに軌道に乗り年間2000台規模に到達。1937年には早くも生産累計1万台を達成する。
 ダットサンは、コンパクトなサイズで日本の道路事情にマッチしていた。しかも初期型が495cc、後期型でも736ccの小排気量ながら水冷直列4気筒エンジンを搭載し、各部の作りも本格的だった。運転感覚は大型車と同等の滑らかさを持っており、ボディタイプもセダン、クーペ、トラックなどから選べた。ダットサンは日本に最適な“ジャパン・オリジナル”の小型車だったのだ。瞬く間に小型車の代名詞的な存在に成長したのは、なにより実力が高かったからである。だが、日本は不幸な戦争に向かい、日産は乗用車の生産からいったん離れることになる。

戦争の空白をオースチンが埋めた

 終戦後、1947年にようやく乗用車の生産禁止令が限定解除された。日産はさっそくスタンダードセダンDAをリリースする。しかしDAはトラック用シャシーに急ごしらえのボディを架装しただけのクルマだった。エンジンも戦前のダットサンと同様の旧式なサイドバルブ式である。
 乗用車の生産から離れていた間の世界の進歩は、驚くほど大きかった。このままでは世界から取り残される、そんな不安が日産を襲う。そこで決断したのが欧州メーカーとの提携だった。理想のジャパン・オリジナルを作り上げるためには、まず欧州のクルマ技術&生産方式を学ぶ必要があると判断したのだ。パートナーに選んだのは英国のオースチンだった。
 1952年12月、日産はオースチン社と正式に契約を締結。翌3月には早くもA40サマーセット・サルーンの生産を開始する。A40は1.2Lエンジンを積む小型車で、快適な乗り心地と扱いやすさを両立していた。日産は予定より早い1年でほとんどの部品の国産化を完了。1954年12月にはA50(1.5L)にモデルチェンジするとともに、1956年5月に完全国産化を成し遂げた。

日産オリジナルのブルーバード誕生

 日産はオースチン社との提携で多くのことを学んだ。吸収が早かったのは日産に高い技術的素地があったからだが、先生役のオースチンの熱心さも忘れてはならない。日産は提携の成果を生かしたジャパン・オリジナルの開発に没頭する。その結実が1955年1月に登場したダットサン110であり、1959年8月にデビューする初代ブルーバードだった。
 とくにブルーバードはスタイリッシュなデザインを持ち、メカニズムも意欲的だった。エンジンは1L(34ps)と1.2L(43ps)の直列4気筒OHVで、フロントの足回りはダブルウィッシュボーン式、ブレーキには国産初のユニサーボ機構を取り入れていた。実力は完全に国際水準に達していたのである。
 ブルーバードは市場に圧倒的に支持された。ライバルのトヨタ・コロナを人気&販売台数で圧倒し、1961年末には早くも10万台をラインオフ。累計生産台数は4年間で24万台にも達した。日産の本格的な海外輸出がはじまったのもこのクルマからで、3万2000台もが海外の土を踏んでいる。日産が世界から一人前の自動車メーカーとして認められたのは、初代ブルーバード以降といっていい。現在の日産の基礎を形づくった記念碑的存在がブルーバードなのである。