トヨタデザイン5 【1968,1969,1970,1971】
1970年代に向け、上級感とスポーティ感を強調
トヨタ自動車工業およびトヨタ自動車販売は、1968年9月にクラウンとコロナの間を埋める新モデルの「コロナ・マークII」を市場に放った。ユーザーの上級志向を踏まえて開発したマークIIは、コロナが“日本のファミリーカー”をテーマにしていたのに対し、“世界のファミリーカー”を徹底追求。スタイルや居住性、高速性能、安全性、装備の豪華さなどを高次元で実現した国際的なファミリーカーを開発テーマに据えた。
スタイリングについては、コロナに対して全長・全幅やホイールベースを拡大したうえで車高を低めに設定。長く、広く、低いプロポーションを基調とする。各部のデザイン面では、躍動的で近代的な美しさを追求。コロナの個性であるアローラインのイメージを活かしながら、曲面構成のカーブドガラスや精悍なフロントグリル、コークボトルとファストバックの傾向を取り入れたリアセクションなどで仕立てた。
ボディタイプは4ドアセダンと2ドアハードトップをメインに、ステーションワゴン、バン、ピックアップを設定し、既存のコロナ以上に外観イメージを差異化。ボディ色には宝石をテーマにしたブリリアントカラーを導入した。
トヨタ自工は1970年代に向けて、大衆車クラスのデザイン刷新にも注力する。そして1969年4月には、2代目となるパブリカを発売した。
俊敏で行動的な性格を表現するためにキャッチフレーズに“かもしか”と冠した2代目は、シンプルなエントリーカーだった先代とは異なり、上級かつ高性能で充実装備の小型車に仕立てる。ボディタイプは2ドアセダンと2ドアバン、ピックアップ(同年10月に追加)の3タイプを設定する。
メイン車種となるセダンはセミファストバックを基調とし、立体的なフロントマスクや一直線に流れるサイドの切り込みなどを採用して個性を表現する。インテリアについては、広いキャビンスペースを確保すると同時にインパネやシート形状のデザインを一新。また、フロントグリルやボディサイド、ステアリングホイール中央にはかもしかを図案化したシンボルマークを装着した。
トヨタ自工は1970年5月になると、最量販車種であるカローラのフルモデルチェンジを実施する。すでにグローバルカーに成長していたカローラはユーザーの上級志向に合わせる形で豪華さや安全性、走行性能、居住性、装備内容の引き上げを敢行。全長と全幅、前後トレッド、ホイールベースも先代より拡大した。ボディタイプは2/4ドアセダン、クーペ、2/4ドアバンの5タイプを用意する。
スタイリングは曲面構成を大胆に取り入れ、スピード感あふれるフォルムを構築する。また、クーペはフルファストバックのボディ形状を導入した。各部のデザインにも工夫を凝らし、グレー色の樹脂ガーニッシュ(フロントグリルおよびリアコンビネーションランプ周囲)やスポーティなアクセントストライプ(SL)、2段開きタイプのドア、ルーミナスカラーと呼ぶメタリック塗色などを採用する。
インテリアに関してはゆったりとした居住空間を創出したうえで、ローズウッド模様のインパネやハイバックタイプのシート、ニープロテクター、コンソールボックス、セカンダリーベンチレーター、ヒーターコントロールライトなどを装備。従来の大衆車の概念を大きく上回る豪華なエクイップメントを内包する。
カローラの全面改良を機に、カローラ・スプリンターは「スプリンター」の単独車種として独立する。同時に、車両デザインに関しても入念な差異化を図った。
デビュー当初のスプリンターはクーペのみの設定で、専用デザインのエンジンフード&フロントグリルに大型三分割タイプのリアコンビネーションランプ、流線型サイドミラー(SL)、S字を象った新エンブレムなどを採用する。1971年8月のマイナーチェンジ時には4ドアセダンを追加。これを機にカローラとのさらなる差別化を図り、デザイン面ではグリル周囲をボディカラーと同色でまとめたフロントマスクや大型化したリアコンビネーションランプなどを採用。ポーティで華麗なルックスに仕立てた。