エスティマ 【2000,2001,2002,2003,2004,2005,2006】
ハイブリッド仕様を設定した未来派ミニバン
トヨタが商用車派生ではなく、乗用車として開発したミニバンのジャンルへ進出したのは、1990年5月に発売した初代エスティマが最初である。それまでにもライトバンやパネルバンを基に、7〜8人程度の乗車が可能なシートを設けたモデル(ハイエース・ワゴンやライトエース・ワゴンなど)は存在したが、最初から乗用車として設計したという点でエスティマは画期的だった。エスティマのルーツは、1989年の第28回東京モーターショーに展示された左ハンドル仕様のプレビアである。
プレビアの名はアメリカ市場に限って使われた。1990年5月に日本市場で販売が開始された時にはエスティマの名が与えられていた。車名のエスティマ(Estima)とは、英語のEstimable(尊敬に値するの意味)に由来する。
2000年1月にデビューした2代目エスティマは初代以上に斬新なフォルムを身に纏っていた。フロントバンパーからフロントピラー、ルーフと至る流線型のフォルムはシャープな印象でCd値はクラストップの0.30をマーク。ボディサイドに2本の鋭いキャラクターラインを刻み躍動感を演出していた。
ボクシーなイメージが強いミニバンのなかにあってラウンディッシュなエスティマは異彩を放っていた。3列シートを配置した室内も外観同様に先進的だった。コクピットはセンタークラスターの中心に向かって大きく渦を巻いた新感覚デザイン。メーターは中央に配置され、上級グレードでは自発光式のオプティトロンタイプを採用していた。ミニバンとしてのユーティリティだけでなくデザインに惚れてエスティマを選んだオーナーも珍しくなかった。
2代目エスティマは初代とメカニズム的に連携のないモデルだった。初代が独創のミッドシップ・レイアウトを採用していたのに対し、2代目はエンジンをフロントに横置き配置したレイアウトを採用。通常のサルーンに近いメカニズムとなった。
この転換は快適性と走りを重視した結果だった。エンジンを床下に配置していた初代は、走行時にエンジン音が室内に侵入しやすく、スペース的な問題でパワフルなV6の大排気量エンジンを搭載できなかった。メンテナンスしにくいのも問題点だった。
2代目はこれらの弱点を一気に解決。さらにシャシーの基本性能を磨き上げることで初代以上のフットワークを身につけていた。2362ccの直列4気筒エンジン(160ps)を搭載するベースモデルでも完成度は高く、新設定となる2994ccのV型6気筒エンジン(220ps)搭載車の静粛性と走りは高級サルーンに匹敵した。
2001年6月に真打ちともいうべき、エスティマ・ハイブリッドがラインアップに加わる。基本的にはプリウスと同様のE-Fourと呼ばれるシステムは、前輪を高効率モーターとガソリン・エンジン(直列4気筒、排気量2362ccで131ps/5600rpm)で駆動し、同時にジェネレーターも駆動して発電、必要に応じて後車軸に付けられた電気モーター(13Kw/1130〜3000rpm)を使って後輪も駆動する4WD機構。トランスミッションは電気式CVTを組み合わせていた。
通常走行ではモーターとガソリン・エンジンによる前輪駆動車なのだが、全開加速時や雪道などでは後車軸の電気モーターがエンジンをアシストし走行を助けるというわけだ。高性能重視のスポーツカーではないから、スタート時は電気モーターのみで走り出し、その後必要に応じてガソリン・エンジンが起動するようになっていた。
ハイブリッドのブレーキは減速エネルギーを電気エネルギーとして回収する回生ブレーキである。その他にもABS、VSC(ビークルスタビリティコントロール)、TRC(トラクションコントロール)、ECB(電子制御ブレーキシステム)と言った安全装備を備える。
エスティマ・ハイブリッドは、クルマそのものが発電&蓄電装置となり、エンジンで発電した電力を電力システムの一部として使う事が可能だった。車内には100Vの家庭用電気機器が使えるコンセントが設置されており、容量1500Wまでであれば電気炊飯器や電子レンジなど家庭用の電気製品をそのまま使うことが出来た。今までのクルマでは考えられないことである。アウトドアシーンではなかなか便利な機構だった。
エスティマ・ハイブリッドは地球とクルマの未来を真摯に考えていた。ガソリンモデルの約2倍となるクラストップの燃費性能(10.15モード燃費18km/L)と、平成12年度排出ガス75%低減レベルを実現したクリーン性能。さらに後輪をモーターで駆動する世界初のE-Four 4WD機構によってかつてない安定した走りを実現したのだ。
ミニバンは家族の中心に存在する生活を豊かにするクルマだが、エスティマ・ハイブリッドは生活だけでなく地球環境そのものを革新するクルマだった。