エルグランド 【2002,2003,2004,2005,2006,2007,2008,2009,2010】
“夢”と“くつろぎ”と“感動”を提供した最高級ミニバン
日産のワンボックススタイルのミニバンとして、「エルグランド」と名づけられたモデルが最初にデビューしたのは1997年5月のこと。SUVであるテラノ系のシャシーコンポーネンツを一部流用し、大柄な7〜8人乗車が可能なボックス型ボディを組み合わせていた。車名のエルグランド(Elgrand)とは、スペイン語の冠詞であるエル(英語のTheに当たる)と偉大なとか広大ななどの意味を持つ英語のグランド(Grand)を組み合わせた造語。ちなみに、海外では通用しない。
エルグランドは2002年5月に第2世代(E51型系)へとフルモデルチェンジされた。スタイリングは基本的に旧型からのキープコンセプトだが、フロントグリルをスラントし、ヘッドライトが大型化されるなどで、外観の迫力は大きく増大した。トヨタのアルファードとともに、このクラスのワンボックス型ミニバンの代表車として高い人気を集めた。
第2世代となったエルグランドは、ホイールベース2950mm、全長4795mm、全幅1795mm、全高1920mmという堂々たるサイズのボディを持った大型のワンボックスワゴンになっていた。駆動方式はフロントにエンジンをタテ置きした後2輪駆動仕様およびオールモード4×4と呼ばれる4輪駆動仕様があった。ただし、2輪駆動仕様であっても4輪駆動仕様とフロアユニットを共用するため、床面が高くならざるを得なかったのはマイナス面であった。また、大きな改良点は後輪のサスペンションが旧型の5リンク/コイルスプリングからマルチリンク/コイルスプリングの独立式となったことで、ハンドリング性能の向上とともに、とくに後部座席の乗り心地は著しく向上している。
搭載されるエンジンは、デビュー当初は排気量3498ccのV型6気筒DOHC(VQ35DE型。最高出力240ps/6000rpm)のみの設定だったが、2004年12月からは排気量2495ccのV型6気筒DOHC(VQ25DE型、出力186ps/6000rpm)を加えた。ライバルのトヨタ・アルファードには2362ccの直列4気筒エンジン仕様があり、税制面で有利なことからシェアを伸ばしていたことに対応したものだ。トランスミッションは5速オートマチックのみの設定。サスペンションは前が旧型と同形式のストラット/コイルスプリングのままで、後ろは前述のようにマルチリンクとなった。ブレーキは前後ともサーボ機構付きディスクブレーキを装備。ステアリング機構はラック&ピニオンで、パワーアシストが付く。タイヤは215/65R16が標準装備となる。
大柄なボディがもたらす多用途性と迫力のあるフロントグリルのデザイン、さらに高性能エンジンや容量の大きなサスペンションなどによる走りのよさを誇った第2世代のエルグランド。価格的には2輪駆動仕様で289〜418万円(2002年デビュー当時)と高価格帯に属するモデルだったが、トヨタのアルファードと市場を2分する人気車種となった。また、スポーツ系からラグジュアリー系まで、数多くの特別仕様車が売り出されたのも特徴となっていた。
第2世代は次世代モデルの開発に手間取ったこともあり、2010年5月に第3世代のE52型系モデルが登場するまで、実に8年間ものライフスパンを持つこととなった。日本の高級ミニバン市場を確立した貢献車であることは間違いない。歴史に残る名車のひとつといっていい。
2代目エルグランドの発売から7カ月ほどが経過した2002年12月、日産の子会社オーテックジャパン扱いのユニークなモデルがデビューを果たす。最上級グレードのXLをベースに4人乗りの2列式シートに変更し、エグゼクティブにふさわしい室内空間を実現した「エルグランドVIP仕様車」がリリースされたのだ。
VIP仕様は、後席センターアームレスト付き本革シートや電動式スライドステップ、パーティションボード付きトランクボード、セカンドシートロングスライドレール、後席用読書灯+ルームランプを装備。また、専用オプションとして後席用オーディオシステム(VHS+CD+DVD)/後席用スピーカー/電動オットマン/電源コンセント(AC100V・100W)/フロントキャビネット/引き出し式テーブル/フロアカーペットなどをオプションで用意する。ボディカラーは専用塗装色のブラックで仕立てられた。車両価格がベースモデルの倍近い828万8000円の設定だった。受注生産=オーダーメイドの形で販売され、政治家や官僚、大手企業の重役といったVIP層の足として活躍した。