マスターライン 【1962,1963,1964,1965,1966】

“クラウン”を名乗らなかったクラウン派生モデル

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初代は1955年11月に登場

 クラウンをベースにしながら“クラウン”を名乗らなかったモデルが存在したのをご存知だろうか。トヨタのハイグレード商用車として人気を集めた「マスターライン」である。

 クラウンを名乗らなかった理由は、その生い立ちにあった。元々マスターラインは、1955年1月に発売された乗用車「マスター」の商用モデルとして1955年11月に誕生している。当初はライトバンとピックアップの2タイプだったが、1956年8月に後席を備えたダブルピックアップが追加された。ちなみにマスターという乗用車は、クラウンに対して各部をシンプルに仕上げたモデルで、タクシーをメインの用途に想定していた。

 メカニズム面では前輪にリジッド式のリーフサスペンションを搭載し、当時の劣悪な道路環境のもとでも根を上げないタフさを身につけていた。マスターラインの名称は、マスターから派生したモデルだからだった。しかし、マスターの販売は苦戦する。クラウンの人気が絶大でタクシー業界もこぞってクラウンを購入したからである。「クラウンは豪華で高価だから、タクシー業界は好まないだろう」とのメーカーの予想が外れてしまったのである、結局、乗用車のマスターは初代でその歴史を終えた。
 だが、マスターラインは販売が好調だったため継続される。ただし2代目からベースモデルがマスターから、クラウンに変わった。

クラウン一族なのにクラウンを名乗らないモデルの進化

 2代目のRS26型は1959年3月に登場。当初からライトバン、ピックアップ、ダブルピックアップの3種のボディが設定され、1960年4月には4ドア仕様のライトバンを追加(それまでのライトバンは2ドア仕様)。ラインアップを強化する。ちなみに2代目はクラウンをベースとする関係でフロントサスペンションが、ダブルウィッシュボーン式の独立タイプとなり、快適性が大幅にアップしていた。クラウンをベースとするのにクラウンを名乗らないクルマはこうして誕生した。

 今回の主役の3代目マスターライン(RS46型)は1962年10月のクラウンのモデルチェンジを受けて登場した。ラインアップは先代と同様にライトバンとピックアップ、そしてダブルピックアップの3種。ライトバンは2ドア版がなくなり実用的な4ドアのみになった。

 フロント回りのスタイリングはクラウンそのもの。グリル中央に配置されたエンブレムもクラウンと共通の“王冠”マークだった。メカニズム面の特徴もクラウンとオーバーラップする。低床式X型バックボーンフレームの導入で旧型より95mmも低い伸びやかなシルエットを実現。新機構として2ジョイント方式のステアリングコラムを組み込んでいた。ボディサイズは全車共通の全長4690mm、全幅1695mm、全高1510mm。最大積載量はライトバンとダブルピックアップが500kg、ピックアップは750kgに設定されていた。パワーユニットは1894ccの3R-B型・直列4気筒(80ps)を搭載。ダイヤフラム式クラッチの新採用で3速トランスミッションの操作性を高めたのが特徴だった。

人気中心モデルは豪華で便利なライトバン

 室内もクラウンと同等だった。メーターは当時のアメリカ車のような横長式で、補助メーターには水温/燃料計に加えて、油圧/電流計を追加。操作性に優れたプッシュ式のボタンを備えていた。クラウンをベースにしているから当然なのだが、3代目マスターラインは当時、最も豪華で上質な商用車と呼ばれた。

 販売は旧型と比較して荷室が250mmも伸びたライトバンが中心だった。ライトバンは平日には仕事用、休日は上級ワゴンとして使える多用途性で愛された。ピックアップやダブルピックアップには、熱烈なファンが存在した。
 3代目はクラウンのモデルチェンジに伴い販売を終了。4代目はS50型クラウンの商用車バージョンとして正式に“クラウン”の一員となったため、マスターラインの名は消滅した。