ライトエース・ワゴン 【1985,1986,1987,1988,1989,1990,1991,1992】

RV色を強めた3代目ベストセラー1BOX

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1980年代後半に向けた1BOXワゴンの開発

 家族や友人など多人数が乗車でき、快適に目的地まで移動できて、しかも多くの荷物が積み込める−−。アウトドア・ブームが盛り上がる最中、こうした市場のニーズを満足させるモデルとして脚光を浴びたのが、1BOXタイプのキャブオーバー車だった。このカテゴリーを牽引するモデルとして高い人気を博したのが、トヨタがリリースする2代目ライトエース・ワゴンである。

 1BOXワゴンの人気は、1980年代後半以降も高いレベルで継続する−−自慢のマーケティング調査からそうした判断を下したトヨタの開発陣は、よりいっそう快適に使える新しいライトエースの企画作りに邁進。内外装からメカニズムに至るまで、徹底した刷新を図っていった。

先進的なスタイルと快適な走りを実現

 3代目のスタイルは、空力特性の向上に重点を置く。具体的には、大きく傾斜させたフロントウィンドウに均一で張りのある面構成のボディ、フレア形状のスカートパネルなどを採用する。開発陣は開放感の向上にも力を入れ、各ウィンドウ面積の拡大やハイルーフ形状の導入などを実施。上級グレードには、広いガラス面積を有するパノラマ感覚のスカイライトルーフを新設定した。

 新ルーフは左右合計6分割のウィンドウで構成され、フロント2枚とセンター2枚はガルウィング式で開閉ができ、さらにセンター部は取り外しも可能。リア2枚は固定式だが、広いガラス面積を確保して開放感を創出した。

 空力ボディに組み合わせるシャシーは、リアサスペンションに新設計のラテラルロッド付き4リンクを採用したことがトピック。同時に、低圧ガス封入式ショックアブソーバーやリアスタビライザーの装着、前後トレッドの拡大を実施し、走行安定性と乗り心地の向上を図った。また、ステアリング形式は従来のボールナット式から応答性に優れるラック&ピニオン式に一新。ブレーキではフロントディスクをベンチレーテッド化して制動力を引き上げるとともに、制動力制御バルブ(LSPV)を組み込んでコントロール性能をアップさせた。

新型は乗用車感覚を積極導入

 搭載エンジンは新開発の5K-U型1486cc直4OHV(70ps)を筆頭に、改良版の2Y-U型1812cc直4OHV(79ps)、燃焼室形状の変更やバルブタイミングの最適適合化などを施した2CII型1974cc直4OHCディーゼル(70ps)、水冷式ターボチャージャーを組み込んだ2C-T型1974cc直4OHCディーゼルターボ(82ps)をラインアップする。

 室内は、乗用車感覚の演出と快適性および利便性の向上に力を入れる。運転ポジションではステアリングコラムをフロア面に対して38度の最適角度に設定するとともに、ヒップポイントの引き下げやドアステップ幅の拡大などを実施。さらに、フロアシフトをショートストロークの乗用車タイプに一新した。

 シートは一部グレードにフルリクライニングの運転席を採用したほか、セカンドには前向き・横向き・対面の配置が選択できる世界初の3ウェイ回転シートや折りたたみが可能な1名掛けスペースアップサブシートなどを導入。ほかにも、前席用および後席用にそれぞれ2個ずつ天井吹き出し口を設けたデュアルオーバーヘッドエアコンや超大型のグローブボックスを始めとする豊富な小物入れ、視覚系装置と操作系装置のレイアウトを明確に分けたインパネなどを採用。乗用モデルとしての魅力に、いっそうの磨きをかけた。

バリエーション拡充と走りの進化を積極推進

 1985年9月、M30Gの型式を付けた3代目ライトエース・ワゴンが市場デビューを果たす。7名乗り/8名乗り/9名乗り/6名乗り/5名乗りという豊富な車種ラインアップに先進のスタイリング、低燃費で乗用車ライクな走り、快適で利便性の高い室内空間を有する第3世代は、たちまち人気車種に発展。最大のライバルである日産のバネット・コーチ・シリーズなどと激しいシェア争いを繰り広げながら、1BOXワゴン市場を牽引していった。

 トヨタはこの勢いをさらに高めようと、様々な改良を実施していく。まず1985年10月にはパートタイム式4WDモデルと2000ガソリン仕様(3Y-U型1998cc直4OHV)を設定。1988年8月になるとマイナーチェンジを敢行し、スタイリングの変更やディーゼルエンジンの出力アップ、TEMS(電子制御サスペンション)の採用などを実施する。1990年8月にはハイマウントストップランプやリアアンダーミラーを標準装備するなどして安全性を引き上げた。

 大衆1BOXワゴンのベンチマークに成長した3代目ライトエース・ワゴンは、1992年1月になると全面改良が行われて4代目に移行する。この時、上級モデルに位置づけられていたタウンエース・ワゴンと統合。同時に、タウンエース・ワゴンのOEM車であるダイハツ・デルタワイド・ワゴンとも兄弟車となる。結果的に3代目が、単独開発車としての最後のライトエース・ワゴンとなったのだ。

カタログは新乗用車イメージを強調

 3代目ライトエースでは2代目で好評を博したワゴン専用のカタログが引き続き制作される。しかも、その中身は従来以上に充実した内容で、1BOXワゴンとしての先進性を声高に主張していた。キャッチコピーに関しては、“新○○”というフレーズが随所に並んだ。

 イメージ写真のページでは“新領域”や“新発想”、スタイリングではスカイライトルーフの採用を主張した“新発見”や空力特性の良さを強調する“新局面”、走りでは低燃費エンジンの搭載を表した“新事実”、3ウェイ回転シートの装備などキャビン空間では“新機軸”、乗用車感覚のドライビングポジションでは“新体験”、デュアルオーバーヘッドエアコン等の充実したエクイップメントでは“新記録”などと謳った。また、新しい販売戦略としてワゴン専用のコマーシャルも展開。挿入歌には吉田拓郎の新曲、『風をみたか』が使われた。