スタンザ・リゾート 【1979,1980,1981】

ちょっぴり贅沢な個性派5ドアハッチバック

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豊かなライフスタイルをサポートするニューモデルの誕生

 現在は、トヨタ・アクア&プリウス、ホンダ・フィット、日産ノートなど、販売成績で上位に名を連ねるベストセラーモデルの大半は5ドアハッチバックである。しかし5ドアハッチバックが主流となったのは2000年以降。それまで5ドアハッチバックは少数派だった。1979年8月にデビューしたスタンザ・リゾートは、ちょっぴり贅沢なフィーリングが特徴の5ドアハッチバックのパイオニア的な存在だった。

 スタンザは、1977年5月に登場した2代目バイオレット、初代オースターの兄弟車として1977年8月に誕生する。当初は1.6リッターユニットを搭載する4ドアセダンのみのラインアップで、キャッチコピーは「男と女とバラとスタンザ」。バイオレットやオースターよりやや上級車という位置づけで、ミドルサイズながら高級車のセドリック並みの豪華さを狙った点が特徴だった。

 スタンザはメカニズム的にはオーソドックスながら、豪華さを求めるユーザーニーズを刺激し、そこそこの販売成績をマークする。5ドアハッチバックのリゾートは、豊かなライフスタイルをサポートするスタンザの新たな主力モデルとして企画されていた。

バカンスのためのクルマという新発想

 日本での5ドアハッチバックの歴史は、1964年11月にコロナ1500のラインアップに加わった「5ドアセダン」に始まると言われている。5ドアハッチバックは、セダンと同等の快適性と、ワゴンに匹敵するユーティリティを兼備したマルチモデルである。欧州、とくにフランスでは1960年代からセダン以上の人気を誇る存在として定着していた。しかし日本での人気はさっぱりだった。日本では「リアゲートを備えたモデルは、商用車のライトバンの一種」という印象が根強かったからだ。1970年代に入り、ホンダ・シビックなど一部モデルの成長により、しだいにイメージは変化するが、それでもまだまだ一般的とはいえなかった。

 スタンザ・リゾートはカタログで「積極的な行動派におくる、新しい乗用車の誕生。ますます大型化するバカンスのためのビッグボックスです。地中海を望む南仏ニースの感覚……リゾートは、海を野を湖を、鮮やかに心のアルバムに焼き付けて駆け回ります」と、バカンス=休暇をサポートするクルマであることを語りかけた。

 バリエーションは、排気量1770ccの直4OHCインジェクション仕様(115ps)を搭載した1800X-Eを筆頭に、1770cc直4OHCキャブ仕様(105ps)の1800G/1800L、そして1595ccキャブ仕様(95ps)の1600G/1600L/1600Sの計6グレード構成。トランスミッションはグレード毎に4速と5速のMT、そして3速ATの3種を組み合わせた。駆動方式はFR。ボディサイズは全長×全幅×全高4275(1800X-Eは4325)×1620(同1605)×1365mmである。

豪華でスポーティな1800X-Eの高い存在感

 リゾートは、リアゲートを寝かしたスタイリッシュなファストバック・スタイルを採用し、リアランプ上部から大きく開口するリアゲートを備えていた。後席なシートバックが2分割で倒れる設計で、ラゲッジに対応して多彩なアレンジが可能だった。ベースとなったセダンを大幅に上回る実用性の持ち主といえた。

 中でも上級モデルの1800X-Eは魅力的だった。豪華さとスポーティさがたっぷり盛り込まれていたからだ。シートは座り心地に優れ、見た目も上質なモケット調素材で仕上げられ、カセット付きオーディオ、デジタル時計、リモコン機能付きフェンダーミラー、木目調インパネトリムなどを標準装備。インジェクション仕様のエンジンはクラストップレベルの最高出力115psを誇り、タコメーター一体6連メーター、3本スポークステアリング、専用調律のハードサスペンションなど走りにも磨きをかけていた。

 スタンザ・リゾート、とくにX-Eは、当時の国産車で個性際立つ1台だった。しかし、販売は低迷する。その背景には、カタログで表現されたほどには、日本のバカンスが大型化されていなかったことが考えられた。それに加え一般のユーザーはまだまだ保守的だったのだ。5ドアハッチバックがユーティリティに優れた存在であることは理解しても、あえてオーソドックスでフォーマルなセダンを好んだのである。