アベニール 【1998,1999,2000,2001,2002,2003,2004,2005】

実用性にこだわったステーションワゴン

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ライトバンの伝統を継承したアベニール

 1990年5月に日産のステーションワゴン専用車としてデビューしたアベ二—ルは、8年の長いライフスパンを保った後、1998年8月にフルモデルチェンジし第2世代となった。ラインアップはターボを組み合わせたスポーティなGT4系とNAエンジンを積むサリュー(Salut)系の2種類で構成していた。さらに同一ボディーながら商業車仕様のライトバンとなるカーゴも用意する。

 日本では1950年代の後半から、乗用車シリーズの多くに必ずといって良いほどライトバンと呼ばれる貨客兼用モデルが存在していた。物流を主体として発展を遂げてきた日本のモータリーゼーションの中で、実用性と、乗用車並みの快適性を兼備したライトバンの存在は必然でもあった。商品の運搬という仕事にも、一家を挙げてのレジャーにも使えるクルマとして、ライトバンは重宝された。今日で言えば、ステーションワゴンやミニバンに相当するモデルだ。アベニ—ル(Avenir)の車名は、未来的とか前衛的などの意味を持つフランス語に由来するものだが、その精神的なルーツを辿ると1950年代後半に行き着くものだった。

2代目はボディの大型化で実用性をリファイン

 初代のアベ二—ルは、日産のスカイライン・ワゴンおよびブルーバード・ワゴンの2車種 を統合する形で生み出された。従って、このセグメントのワゴンとしてはかなり進歩的であり、スタイリングこそ地味だったが、エンジンや足回りなどには最新の技術がふんだんに盛り込まれた。デビュー当時、人気絶頂だったレガシィ・ツーリングワゴンと並んで「最も進化したステーションワゴン」と言われたものである。

 2世代目となって、スタイリングは実用性重視の先代に比べてはるかに乗用車的になった。後部に行くに従って徐々に高さを増すウエッジ型のサイドラインや大型のヘッドライトと独立したラジエターグリル、バンパー一体型のフロントスポイラー、リアスタイルではテールゲートを開いてもボディー側に一部が残るテールライト、中央部で若干低くなっているリアウインドウで後方視界を確保するなど、安全性の面でも大きく向上していた。ボディサイズもひと回り大型化されている。

ビジネスワゴンとして高い評価を獲得した2代目

 搭載されるエンジンは4種あるが、ガソリン仕様の3種はいずれも直列4気筒DOHCで、排気量が1769cc(自然吸気型、125ps/5600rpm)、1998cc(自然吸気型、145ps/6400rpm/4WDは140ps/5600rpm))および1998cc(インタークーラー付きターボチャージャー装備、230ps/6000rpm/)があり、さらに1973cc(SOHCディーゼルターボ、91ps/4400rpm)が選べた。基本的に一つの車形で、スポーツワゴンから経済性を重視するビジネスワゴンまでをカバーしなければならなかったことで、装備されるエンジンは多種にわたることになる。

 同様にトランスミッションも4速オートマチックとCVT、5速マニュアルの3種が用意された。サスペンションは前がストラット/コイル・スプリング、後ろが専用設計のマルチリンク(4WDはウィッシュボーン)/コイル・スプリングとなった。ブレーキは4輪ディスクが中級グレード以上に標準でサーボ機構を持つ。4WDシステムはセンターデフに、全後輪のトルク配分を最適に保つビスカスカップリングを用いたアテーサが組み合わされていた。

 第2世代のアベニールは、日産らしく使い勝手に気を配ったステーションワゴンと言えた。しかし最大のライバルであるレガシィと比較するとドライバーズカーとしての味わいは希薄だった。便利な存在ではあったが、持つ歓びが感じられなかったのである。商業車のカーゴとともにビジネスワゴンとしては高い評価を得たが、+αの魅力を持ったステーションワゴンとしての人気はいまひとつだった。

インナーグリーンと呼ぶ新快適思想

 アベニールの室内は“インナーグリーン”と呼ぶ、日産の新たな室内快適基準に基づいて仕上げられていた。パッセンジャーを快適&健康に保つ工夫を満載していたのだ。エアコンにはクリーンフィルターを内蔵し、車外からのほこりや花粉、粉塵などを除去。室内の空気を清浄化した。さらにステアリングやシフトノブ、ドアハンドルなど手の触れる頻度の高いパーツを抗菌処理し、室内がつねに清潔に保たれるよう工夫されていた。

 それだけではない。フロントウィンドーには日焼けの原因となる紫外線を約90%遮断するUVカット断熱グリーンガラスを採用し、乗員の肌を守ると同時にエアコンの効率アップを図った。ステーションワゴンは日常生活に寄り添うクルマである。それだけに快適&健康な室内空間を実現するインナーグリーン発想には説得力があった。