ブルーバードSSS-R 【1987,1988,1989,1990,1991】

“R”の称号を持つラリーを目指した生粋マシン

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復活した熱きスーパースポーツセダン!

 かつてサファリラリーやツーリングカーレースなどモータースポーツ・シーンで大活躍したブルーバードSSSは、モデルチェンジを経る毎に洗練の度を加えラグジュアリーな方向に舵を切る。1980年代に入るともはや速さを競うモータースポーツには似合わないクルマに変身していた。しかし1987年9月に登場した8代目モデルには、久々にマニアの心をときめかせるホットな特別モデルが設定された。SSS-Rである。SSS-Rの“R”とはレーシング(Racing)ではなくラリー(Rally)を意味していた。

 8代目ブルーバードは、4輪駆動力最適制御システム=アテーサ(ビスカスカップリング付きセンターデフ式フルタイム4WD)を設定し、路面を選ばない卓越したロードホールディング性能を実現したのが特徴だった。とくにCA18DET型、1809ccの直列4気筒DOHC16Vターボ(175ps/6400rpm、23.0kg・m/4000rpm)を積むSSSアテーサリミテッドの走りは鮮烈で、ワインディングロードの身のこなし、コーナーの脱出速度の速さは群を抜いていた。速さ、操縦性ともにリアルスポーツに匹敵するレベルに到達していたのである。

最高出力185ps。クロスレシオ5MT採用!

 SSS-RはSSSアテーサリミテッドをベースに、スポーツポテンシャルを磨き込んだ存在で、NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)とオーテックジャパンが共同開発した“本気モデル”だった。ネーミングどおり各部はラリー参戦を意識して煮詰められていた。

 チューニング箇所は多岐に渡る。まず目を引くのがエンジン本体の戦闘力アップである。CA18DET-R型を名乗る専用ユニットは、ターボチャージャーの強化と過給圧アップが施され、ステンレス製エキゾーストマニホールドを採用、標準比10ps/1.5kg・m増の185ps/6400rpm、24.5kg・m/4400rpmを実現した。圧縮比を標準の8.5から8.0に低くしターボ過給効果の期待できない領域での柔軟性を考慮していたのもラリー向けらしい点だった。当然、トランスミッションのギア比はクロスレシオに設定され、フロントがトランスバースリンク式、リアがパラレルリンク式の4輪ストラット式サスペンションも大幅に強化されていた。

徹底した軽量化で6.45kg/psのパワーウェイトレシオ実現

 インタークーラーに効果的に冷気を導くボンネットルーバーや、PIAA製の大型アシストランプ、ロールバーなど実戦的なアイテムを専用装備し、ラリー専用タイヤやストラットタワーバーなどのオプションアイテムを豊富にラインアップしたのもマニアの心を揺さぶった。コンペティションユース・モデルらしく不要な装備を排除し軽量化を図っていたのも特徴で、ベースになったSSSアテーサリミテッドと比較して、テールパイプフィニッシャー、マッドガード、後席アッシュトレイ、ドアポケット、オートドアロック、パワーウィンドー、コーナリングライト、オーディオ、4WASなどを取り去り、車重1190kgを実現。SSSアテーサリミテッドと比較して90kgもの軽量化である。この結果、パワーウェイトレシオは7.31kg/psから6.43kg/psに向上した。

 SSS-Rの走りは鮮烈だった。エンジンの吹け上がりは一段とシャープになりパワーは刺激的。トランスミッションのクロスレシオ化で、最適なパワーバンドをキープしやすくなったことで速さに磨きがかかった。ハンドリングも素晴らしく、とくにフラットなダート路面でのコントロール性には目を瞠るものがあった。SSS-Rはストックのままで実戦を闘える、まさにマシンだったのだ。

 SSS-Rは国内ラリー選手権に積極参戦し、卓越した走りを披露する。同時期に登場したギャランVR-4と幾多の名勝負を演じた。ラリーマシンと考えるとボディサイズがやや大きかったが、そのハンデをうち負かす豪快なパワーと優れた操縦性で多くのマニアを魅了したのである。