71日産ブルーバードU vs 70トヨタ・コロナ 【1970,1971,1972,1973,1974,1975,1976】

ユーザー需要の多様化に対応したベストセラー

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ユーザーニーズの多様化への対応

 自家用車の保有が浸透し、クルマに対する要求性能も多様化の様相を呈するようになった1960年代終盤の日本の自動車市場。この状況に対し、“BC戦争”という熾烈なシェア争いを繰り広げていた日産自動車とトヨタ自動車工業は、来るべき1970年代に向けてブルーバードとコロナのモデルチェンジ企画を着々と進めていた。

 2社のプロジェクトに共通していたのは、ユーザーニーズの多様化と上級指向への対処だった。さらに、高速道路網の伸長や舗装率の向上に合わせ、クルマをより高性能に仕立てることも必須課題となる。具体的には、車種ラインアップの拡大や車格のアップ、装備の充実などが念頭に置かれた。

5年半ぶりに全面改良したコロナ

 最初に動いたのは、トヨタ自工だった。同社は1970年2月、約5年半ぶりにコロナのフルモデルチェンジを実施する。型式はRT80/82/86で、ボディタイプは4ドアセダンとバンを設定。車種ラインアップはエンジン/ミッション/装備類などの組み合わせで、乗用車だけでも54の車型数を用意した。

 スタイリングに関しては、彫りの深い近代感覚にあふれるフロントマスクや豪華な感じを持たせたリアフィニッシュパネル、曲面を描くカーブドガラス、リアクオーターに配した“サンダー・ウエーブ”ライン、デザインを一新したエンブレム類などを特徴とする。ボディサイズ自体も拡大させ、車格をワンランク引き上げた。インテリアについては室内寸法の拡大とともにコロナ・マーク㈼に準じた上級仕様に仕上げ、木目のメーターパネルや大型サイズのベンチレーションダクト&ルーバー、ミンクタッチのニットファブリック地シート、最新のカーステレオなどを設定した。

電子制御式ATを時代に先駆けて設定

 フロントがウィッシュボーン式、リアが半楕円リーフ式のシャシーについては基本的に従来モデルを踏襲するが、各部の取り付け剛性のアップやサスペンションセッティングの見直しなど、大幅な改良が図られる。搭載エンジンはツインキャブ仕様の7R-B型1591cc直4OHC(100ps/13.6kg・m)を筆頭に、7R型1591cc直4OHC(85ps/12.5kg・m)と2R型1490cc直4OHV(77ps/11.0kg・m)を採用。組み合わせるミッションは4速MT/3速MT/3速AT/2速ATのほか、電子制御式自動変速機のEAT(3速)を新たに用意した。

 市場デビューから半年ほどが経過した1970年8月に入ると、コロナに人気のハードトップボディが追加される。スタイリングは専用デザインのフロントマスクとリアビューに、パナスコープ・ウィンドウやクレセント(弦月)状の下縁ラインを配した点が特徴。インテリアの仕様もスポーティにアレンジする。搭載エンジンは6R-B型1707cc直4OHC(105ps/14.5kg・m)と6R型1707cc直4OHC(95ps/14.0kg・m)、2R型の3機種を用意した。翌9月になると、セダンにも6R型系エンジン搭載車が設定される。同時に7R型系エンジン仕様の1600は廃止されたが、1971年2月には12R型エンジンを積む1600が復活した。

“ユーザー指向”のサブネームを付けたブルーバード

 一方のブルーバードは、1971年8月になって新しい車種が登場する。510型系と併売する形で、上級モデルの610型系ブルーバードU(セダン/ハードトップ/ワゴン/バン)が市場に放たれたのだ。車名のUは、“USER ORIENTED(ユーザー指向)”を意味していた。

 従来の“ダイナミックでスポーティ”や“親しみやすさ”のイメージに、“豊かさ”と“ゆとり”を盛り込んだブルーバードUは、ロングフード&ショートデッキのプロポーションに曲面を多用したボディライン、メッキパーツの拡大展開などでスタイリングを構築する。もちろん、ボディサイズも510型系より拡大させた。インテリアについては、豪華で安全なコクピットタイプとしたインパネや大型のコンソールボックス、大胆な色調のニットレザーおよびトリコットのシート表地などを採用する。同時にベンチレーションや安全装備についても、大幅なグレードアップを果たした。

走りの伝統を継承。足回りは4輪独立

 4輪独立懸架のシャシーについては、基本的に510型系を踏襲しながら緻密な改良が実施される。搭載エンジンはL18型系1770cc直4OHC(電子制御燃料噴射装置仕様125ps/16.0kg・m、ツインキャブレター仕様ハイオク115ps/15.5kg・m、同レギュラー110ps/15.0kg・m、シングルキャブレター仕様105ps/15.0kg・m)とL16型系1595cc直4OHC(ツインキャブレター仕様105ps/13.8kg・m、シングルキャブレター仕様100ps/13.5kg・m)を用意。安全装備面では、マスターバック付きの前輪ディスクブレーキやタンデムマスターシリンダー、新型のコラプシブル・ステアリング、電熱線式リアデフォッガーなどを採用した。
 ワイドバリエーションで市場にアピールしたブルーバードとコロナ。その後も2車は、2.0リッター級へのエンジン排気量の拡大や内外装のマイナーチェンジを実施し、激しいシェア争いを展開していく。さらに、段階的に厳しくなっていた排出ガス規制に対しても、率先して改良を施していくのであった。