オースター 【1985,1986,1987,1988,1989,1990】

スポーティな色彩の国際戦略セダン



上級スポーティ路線のさらなる進化

 バイオレットの基本コンポーネントを流用し、日産チェリー系販売店向けに内外装をスポーティに仕立ててリリースされたオースター。2代目のT11型系から国際戦略車としての役割も担った同車は、1980年代後半に向けてフルモデルチェンジした。
 次期型オースターを企画するに当たり、まず開発陣は「スポーティかつファッショナブルな本物志向のセダン」の創出を基本コンセプトとする。具体的には、1)ひとクラス上の高い車格感 2)スポーティ感覚とハイセンスな大人のファッション感覚でデザインした内外装 3)スポーティなエンジンバリエーション 4)ヨーロッパの高性能セダンに匹敵する卓越した操縦性と走行安定性の実現という4項目を開発目標に掲げた。また、次期型オースターは1984年4月に設立された英国日産自動車製造会社における生産車種の第1号になることが決定。欧米市場における日産の小型乗用車クラスの中心的なモデルに位置づけられるなど、大きな期待を込めたクルマの開発となった。

端正さと伸びやかさを大切にした造形

 スタイリングに関しては、ロングノーズ&ショートハイデッキのスポーティな基本シルエットをベースに、ファッショナブルな衝撃吸収式ウレタン製カラードバンパーの装着や精悍な印象のヘッドライト&グリル形状、シャープなラインでまとめたサイドビュー、スポーティで存在感のあるリア回りを構築する。ボディサイズは先代のT11型比で215mm長く、25mm幅広く、ホイールベースが80mm長いディメンションに設定し、ひとクラス上の車格を創出した。

 インテリアは居住空間の拡大を図ったうえで、スポーティかつ上質なキャビンスペースを演出する。運転操作性に関わるインスツルメントパネルは、スイッチ類を手元に集中配置させた機能的なデザインを導入。メーターにはスポーティなオレンジ色透過照明を組み込む。さらに、世界初採用となるフロントドア内蔵式バスレフサウンドスピーカーもラインアップした。前席のシートはシースルーヘッドレスト付きの本格的なバケットタイプで、“AUSTER”の文字をプリントした高級刺繍風の朱子織表地を採用。また、前席のフルフラット機構や後席のトランクスルー機構、リアバンパーの真上から開くフルオープントランクなどを設定してユーティリティ性能を引き上げた。

キャッチフレーズは“ロマンシング・オースター”

 メカニズムについては、ブルーバードの基本シャシーを流用しつつ、4輪ストラットのサスペンションに独自のチューニングを施す。また、減衰力が3段階に切り換えられる“3ウェイアジャスタブルショックアブソーバー”や超音波路面ソナーを備えた電子制御サスペンションの“スーパーソニック・サスペンション”なども採用した。ステアリング機構は、剛性を高めるとともにフリクションをより低減したラック&ピニオン式パワーステリングを全車に設定。上級仕様には、可変式の電子制御3ウェイパワーステリングも組み込んだ。搭載エンジンは、電子制御可変吸気コントロールシステムのNICSや電子配電点火システムのNDISなどの先進機構を備えたCA18DET型1809cc直4DOHC16Vターボ(160ps)を筆頭に、CA18ET型1809cc直4OHCターボ(135ps)、新開発のCA18i型1809cc直4OHC(105ps)、CA16S型1598cc直4OHC(90ps)の計4機種をラインアップする。組み合わせるミッションはCA18DET型とCA16S型が5速MTのみで、それ以外のエンジンでは5速MTとOD付き4速ロックアップフルオートマチックを設定した。

 1980年代後半に向けた日産の新しい国際戦略車である新型オースターは、T12の型式を付けて1985年10月に発表される。キャッチフレーズは“ロマンシング・オースター”。ボディタイプは4ドアセダンのみの設定で、標準ボディのほかにエアロパーツ満載の“ユーロフォルマ”仕様もラインアップした。
 意気揚々とデビューしたT12型系オースター。しかし、市場での登録台数は予想外に伸び悩む。当時の販売スタッフによると、「車格がブルーバードとほぼ重なってしまったことが最大の要因。実績やネームバリューの点で、スポーティ志向のオースターは確実に不利だった」そうだ。

T12型系が最後のオースターに……

 T12型系オースターの人気を上げるために、日産は様々な車種強化や広告展開を相次いで実施する。
 1986年6月には5ドアハッチバックモデルの“ユーロハッチ”を追加。同時に、CA18DET型エンジン搭載車に4速AT仕様を設定する。英国日産自動車製造会社での生産が始まった1986年7月以降はCMや雑誌広告でその事実を強調し、さらに1987年2月には“Xiブリティッシュ”と称する特別仕様車も発売した。1988年1月になると、初のマイナーチェンジが実施される。外観はバンパーの変更などによりスマートなイメージに一新。内装はシックな英国風アレンジが採り入れられた。さらに、CA18ET型エンジンに代わってCA18DE型1809cc直4DOHC16Vが設定される。また広告展開では、英国での販売好調ぶり示すように、「It's British major,AUSTER」と謳った。

 英国では高い人気を獲得したものの、日本市場での販売は低調に推移したT12型系オースターは、回復の兆しを見せないまま、1990年に生産が中止される。後継を担ったのは、異なる車名を冠したプリメーラ(P10型)。つまり、T12型系がオースターを名乗る最後のモデルとなったのである。