ディオン 【2000,2001,2002,2003,2004,2005,2006】
5ナンバーサイズの手頃な3列シートミニバン
かなり以前から日本の都市部でクルマを持つことは、様々な条件が重なってかなり難しい状況に陥っていた。とくに1990年代にバブル景気が崩壊して以後は、土地所有の厳しさや自動車税などの面で、クルマは一家に一台の時代となっていた。こうした状況では、多人数乗車ができて、しかも運転がしやすく、維持費も車両価格も安いモデルが求められるのは当然で、5ナンバーサイズのミニバンが大きな人気を集めることになった。ファミリーカーの分野では、もはや4ドアセダンは時代遅れの存在だった。
ホンダ オデッセイなどの爆発的な売れ行きに後押しされて、日本の自動車メーカーはこぞって小型ミニバンへとシフトする。三菱もその例外とはならず、シャリオ、RVR、さらにパジェロをベースとしたデリカスペースギアなど多種多彩なミニバンを展開する。ちなみに1983年2月にデビューした国産ミニバンの元祖ともいえるシャリオは、5ナンバーサイズのボディサイズと多用途性のあるインテリアデザインで好評を得ていた。
しかし、シャリオは1997年10月にデビューした3世代目で大幅なモデルチェンジを受け、ボディサイズやエンジン排気量を拡大して3ナンバーサイズとなっていた。三菱ではオデッセイへの対抗馬とする意味があったのだが、そうなると、5ナンバーサイズのミニバンが消えることになる。その穴を埋めるためもあって2000年1月に登場したモデルがディオンであった。車名のディオン(Dion)とは、ギリシア神話に登場する喜びを司る神に由来する。
基本的なシャシーコンポーネンツは、ミラージュディンゴをベースにしている。ホイールベースおよび全長はそれぞれ265㎜、575㎜延長しているが、全幅(1695㎜)と全高(1650㎜)はほぼ同じで、5ナンバーサイズにまとめていた。駆動方式はフロント横置きエンジンによる前2輪駆動および2000年7月に加わったフルタイム4輪駆動となっている。4ドア7人乗りが可能なミニワゴンとしてのスタイリングは極めてビジネスライクなもので、実用性には優れる。
エンジンの仕様は、デビュー当初は排気量1997㏄の直列4気筒DOHC16バルブ(4G63型 GDI仕様、出力135ps/5800rpm)1種だったが、2002年5月のマイナーチェンジにより1999㏄の直列4気筒DOHC16バルブ(4G94型 GDI仕様、出力135ps/5700rpm)と1834㏄の直列4気筒DOHC16バルブ(4G93型 GDI+ターボチャージャー仕様、出力165ps/5500rpm)となった。トランスミッションは最初4速オートマチック仕様のみだったが、2002年5月以後は2リッターGDIモデルにCVTが装備された。
サスペンションは前がマクファーソンストラット/コイルスプリング、後ろがマルチリンク/コイルスプリングの組み合わせで、ブレーキは前がディスク、後がドラムとなる。
ディオンは、2002年5月に1.8リッターターボモデルをラインアップに加えるなどのマイナーチェンジを実施。その内容は、エンジンラインアップの変更だけでなく多岐に渡っていた。エクステリアでは、フロントマスクのデザインを一新。ヘッドランプ、ラジエーターグリル、ボンネットフードの変更で、引き締まった顔立ちへと進化を遂げた。インテリアではベーシックなVIE系では内装色をグレーのツートンとし、インストルメントパネルにはダークブルーのパネル(VIEを除く)を装備。EXCEED系では、内装基調色をブラウンのモノトーンとし、ブラウンの木目調パネルをあしらった。新モデルのターボ系は、オフブラックのモノトーンのインテリアを採用していた。そのほか装備の見直しを行い、同時にカスタマイズ仕様車のツアラーIIが登場した。
ディンゴは実用指向のユーザーから好評を得た。しかし、三菱自動車が経営不振に陥ったことから、生産モデルの大幅な見直しが行われて、ディオンもその対象となってしまった。2006年3月を以て販売を終了している。5年間の総生産台数は6万5000台程度で、決して台数的には多いとは言えない。主力モデルの谷間に生まれたものだったが、その合理的な設計はなかなか魅力的なものであった。