ワゴンRワイド 【1997,1998,1999】

新エンジンを搭載した小型車版ワゴンR

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小型車のラインアップ強化

 1993年9月にデビューしたワゴンRの記録的な大ヒットによって、軽自動車市場での占有率を大いに高めたスズキ。だが、同社にはより業績を上げるための課題があった。小型車市場におけるシェアの拡大だ。そのためには、既存のカルタスやエスクードなどに加えて新たな車種を設定する必要があった。
 費用対効果が高く、開発期間もできるだけ短縮できる小型車の姿とは−−。多角的な検討の末、スズキの首脳陣は市場で高い人気を誇るワゴンRの好イメージを活用することを決定する。軽自動車をベースに小型車化する企画は、すでにジムニーで経験済み。ノウハウも十分に持っていた。

1リッター級オールアルミDOHCエンジンを新開発

 ワゴンRを小型車化するにあたり、開発陣はプラットフォームを徹底して造り直す。フロアやボディパネルは新規に設計。安定した走行性能と5名乗車を想定して、前後トレッドは1220/1210mmから1360/1355mmへと拡大する。前スタビライザー付マクファーソンストラット/後I.T.L.(アイソレーテッドトレーリングリンク)のサスペンションにも、専用セッティングを施した。また、上位グレードには新開発のタイヤ(165/65R13 77S)も組み込む。

 搭載エンジンはヘッドカバーやシリンダーヘッド、シリンダーブロック、ロアケース、チェーンカバーまですべてアルミ化した新設計のK10A型996cc直4DOHC16Vで、自然吸気(NA)版が70ps/9.0kg・m、大型インタークーラー付ターボチャージャー版が100ps/12.0kg・mのパワー&トルクを発生する。トランスミッションは、専用ギア比の5速MTと新開発の電子制御式4速ATを用意。駆動システムには2WD(FF)とフルタイム4WDをラインアップする。また、制動機構ではフロントブレーキをベンチレーテッドディスク化し、さらに4輪ABSもオプションで設定した。

 スタイリングに関しては、ドアパネルやフェンダー、前後ランプを軽自動車と共用化したうえで、専用デザインの前後バンパーやグリル、アルマイトルーフレール、サイドスプラッシュガード、バックドアアウターハンドルなどを装備して小型車ならではの存在感を強調する。サイズ的には軽自動車比で105mm長く、180mm幅広いディメンションとなった。一方、インテリアでは新デザインのインパネや専用表地のシート、フルトリム&成形天井、上級化させた装備類などで軽自動車との差異化を図る。また、室内長×幅は軽自動車の1685×1180mmに対して1690×1335mmにまで拡大させた。

マイナーチェンジで新スポーティモデルを追加

小型車版のワゴンRは、「ワゴンRワイド」の車名とMA61S(2WD)/MB61S(4WD)の型式を付けて1997年2月に市場デビューを果たす。キャッチフレーズは“ワゴンRがつくった、もうひとつのワゴン”“楽しさワイドな1000cc”。グレード構成はNAエンジンを搭載するXE/XM/XLとターボエンジン仕様のXZで展開し、XLとXZでは2WDのほかに4WDもラインアップしていた。

 市場に放たれたワゴンRワイドは、軽自動車版ほどではないものの高い人気を獲得し、順調に販売台数を伸ばしていく。その勢いを維持しようと、開発陣は意欲的に車種設定の拡大を図っていった。
 1997年6月には、4WD車に4速AT仕様を追加。1998年5月になるとマイナーチェンジを行い、フロントバンバーおよびグリルの形状変更やシート表地の一新、ツートンカラーのボディ色の設定(XZ)、機能装備の充実化などを実施する。また、新グレードとしてインタークーラーターボエンジンを搭載するスポーティ仕様のXRをラインアップ。丸形ヘッドランプやグリルおよびヘッドランプまわりのメッキ塗装、アンダースポイラー(フロント/サイド/リア)、光沢仕上げの専用アルミホイール、木目調インパネ、本革巻きステアリングホイール&シフトノブ、ホワイトメーターなどを採用したXRグレードは、小型車版ワゴンRに新たな魅力をもたらした。ちなみに、スズキはこのマイナーチェンジを機に、ワゴンRシリーズのイメージキャラクターとして米国ハリウッドスターのレオナルド・ディカプリオを起用する。“レオ様”が登場するワゴンRシリーズの広告展開は、とくに女性ユーザーから熱い視線を浴びることとなった。