ジューク 【2010,2011,2012,2013,2014,2015,2016,2017,2018,2019,2020】

独創性あふれるコンパクト・クロスオーバー

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


新ジャンルのクロスオーバーモデルを創造

 2000年代に入ってからの世界の自動車市場では、高性能なエンジンを搭載したクロスオーバータイプのSUV(スポーツユーティリティビークル)が販売台数を大きく伸ばしていた。この状況下において日産自動車は、従来にない斬新なクロスーバーSUVの企画をスタートさせる。同時に、グローバル展開を意図して開発の軸足を日本のほかに欧州、具体的には英国のニッサンデザインヨーロッパ(NDE)に置く方針を決定した。

 どういったクロスオーバー車に仕立てるか−−。開発陣は多角的な検討の結果、コンパクトスポーツとSUVを融合させる案を打ち出す。これは、ユーザーの興味をひく特徴の出し方は何か、という問いから生まれたものだった。そして具体的な開発項目として、革新的なデザイン、SUVのもつ運転のしやすさとコンパクトスポーツならではの俊敏な走り、操作する楽しみを提供する車両情報ディスプレイなどの創出を目指すこととした。

大胆なデザインアプローチで内外装を演出

 基本骨格については、日産/ルノーのコンパクトカークラスで使用するBプラットフォームをベースに、各部の機構を見直した改良版を採用する。ホイールベースは2530mmに設定。トレッドはSUVの特性に合わせて、前1540/後1540mmに拡大した。サスペンション形式は前ストラット/コイル、後トーションビーム/コイルで、フロントサス部には前後2カ所で外部からの入力を受け止める高剛性サブフレームを組み込む。また、フロントサスはストラット径の拡大(φ45mm→φ50・8mm)やロアリンクの取り付けブッシュ/ナックル/ハブなどの全面刷新を、ミニバンのセレナの構成部品を多用したリアサスはキャンバー剛性のアップや取り付けブッシュの専用セッティングなどを実施した。

 ボディは、高張力鋼板を最適配置した高強度キャビンと衝撃吸収構造を融合させたゾーン構造(高強度安全ボディ)を採用する。同時に、フロントセクションには衝撃吸収構造のフードやバンパー、フェンダー、ヒンジ&ロック機構などを導入して衝突時の歩行者障害軽減を図った。空力処理にも力を入れ、空気抵抗係数はSUVトップレベルのCd値0.35を実現した。
 搭載エンジンは量産車で世界初採用となるデュアルインジェクターを組み込んだHR15DE型1498cc直列4気筒DOHC16VツインCVTC(114ps/15.3kg・m)を導入する。トランスミッションには、無段変速機に2段変速の副変速機を内蔵して変速比幅を拡大した新世代のエクストロニックCVTをセット。駆動機構には2WD(FF)を採用した。

日本と英国が共同した独創のスタイリング

 車両デザインに関しては、日本の日産グローバルデザイン本部(NGDC)と英国のNDEが競作して完成させる。基本パッケージングは、高いアイポイントと広い前方視界に加え、ドライバーの視界に入る位置にボンネットフードとフロントコンビランプを配して車両感覚をつかみやすく構成。そのうえで、フロント部は大きな丸型ヘッドランプと高い位置にセットしたフロントコンビランプ(ポジションランプおよびウィンカー)、アンダーガード風のガーニッシュなどによって先鋭的で堂々した表情を、サイドビューはリアに向かってスロープするルーフラインにボリューム感のあるフェンダーアーチ、リアピラー部に埋め込んだドアハンドルなどでスポーティなイメージを、リアセクションはブーメラン型のコンビネーションランプやクーペ的な後端処理などによって精悍かつ個性的なアピアランスを演出した。

 インテリアは、精密機械のようなメカニカルな造形と生体的なしなやかさを融合した独創性あふれるデザインで仕立てる。インパネ全体はソフトな面質でアレンジし、そのなかにシリンダー型のメーターやフローティングバイザー、斬新なアレンジのセンタークラスターをセット。一方、センターコンソールはモーターサイクルのタンクをイメージして硬質な表面デザインとした。ドアトリムの造形も独特だった。スキューバダイビングで使用するフィンに似た形状で構成。フロントシートはショルダー部分にワイヤーを入れてサポート性を強化するとともに、安全性を高めるアクティブヘッドレストを装備した。さらに開発陣は、新しい発想で生み出した車両情報ディスプレイ、“インテリジェントコントロールディスプレイ”をセンタークラスターに組み込む。空調操作に加えて、ノーマル/スポーツ/エコの3種類のドライブモードの切り替えが可能で、しかも走行状態のリアル情報をディスプレイに表示する機能を内蔵していた。

“ROCK‘N’SMALL”をキャッチコピーに市場デビュー

 日産渾身の新ジャンルSUVは、「ジューク」の車名をつけて2010年6月に発売される。キャッチコピーは“ROCK‘N’SMALL”。車種展開はベーシック仕様の15RSと上級モデルの15RXという2グレードで構成し、車両価格は169万500円〜179万250円と非常にリーズナルブな設定としていた。

 市場に放たれたジュークは、斬新なルックスやリーズナブルな価格設定が功を奏し、発売1カ月足らずで月販目標(1300台)の約8倍となる1万943台の好調な受注を記録する。また、ユーザーの年齢層が幅広いことも特長だった。
 順調なスタートを切った新世代クロスオーバーSUVのジューク。しかし、日産の開発陣はこの状況に決して慢心せず、精力的に車種設定の拡大や緻密な改良を実施して同車の魅力度を高めていった。

新開発ターボエンジン搭載の高性能モデルを追加

 2010年11月には、高性能モデルの「16GT」シリーズを追加する。搭載エンジンには新開発の直噴ターボユニット(DIG-TURBO)となるMR16DDT型1618cc直列4気筒DOHC16VツインCVTC+ターボチャージャー(190ps/24.5kg・m)を採用。トランスミッションには、6速マニュアルモードを組み込んだエクストロニックCVT-M6を導入する。駆動機構は16GTグレードに2WDを、16GT FOURグレードにトルクベクトル付ALL MODE 4×4-i(4WD)を組み込んだ。ほかにも、専用セッティングの強化サスペンションやリアディスクブレーキ、17インチタイヤ&アルミホイールを設定。さらに、16GT FOURグレードはリアの懸架機構をマルチリンク/コイルに変更した。

 2011年5月になると、インテリジェントキー/イモビライザー/プッシュエンジンスターター/電動格納式リモコンカラードドアミラー(ドアロック連動自動格納機能付)などを装備した特別仕様車の15RS/15RX「Type V」を発売。合わせて、関連会社のオーテックジャパンがドレスアップ仕様の15RS/15RX「アーバンセレクション」をリリースする。2012年6月には、一部仕様を向上させるとともに、特別仕様車の「プレミアムホワイトパッケージ」を発売。同年10月には、オーテックジャパンが特別仕様車の15RX「アーバンセレクション スタイリッシュブラックパッケージ」を市場に放った。

時代に合わせたアップデートで魅力を持続

 ジュークのバージョンアップは、まだまだ続く。2013年2月には、日産のモータースポーツ部門であるNISMOが開発を手がけた高性能プレミアムスポーツモデルとなる「ジュークNISMO」を発売。8月にはマイナーチェンジを行い、アイドリングストップシステムやVDCを設定する。また、15RX Type Vをベースとする特別仕様車の「15RXパーソナライズパッケージ」をラインアップした。さらに12月には、15RX Type V/16GT Type V/16GT FOUR Type Vをベースに、BNR34型スカイラインGT-Rで好評を博したミッドナイトパープルのボディカラーを再現した専用外板色を採用する特別仕様車の「プレミアムパーソナライズパッケージ」を300台限定で発売。同時に、パーソナライズパッケージを15RS Type Vに追加設定した。

 2014年7月になると、2度目のマイナーチェンジが行われる。外装では立体感を持たせたVモーショングリルにシグネチャーLEDタイプのポジションランプ&リアコンビネーションランプ、ブーメラン型サイドターンランプ組み込みのドアミラー、新デザインの前後バンパーなどを採用。装備面ではアラウンドビューモニターのop設定やインテリジェントコントロールディスプレイへのアイドリングストップ時間および節約した燃料の表示機能の追加を実施した。また、会社創立80周年を記念した特別仕様車の15RX「80th Special Color Limited」もリリースする。さらに同年12年には、214ps/25.5kg・mを発生するMR16DDTエンジンに8速マニュアルモード付エクストロニックCVTを組み合わせ、同時に18インチタイヤ&ホイールや強化ブレーキ、専用セッティングのサスペンションなどで武装した「ジュークNISMO RS」を発売した。

 ほかにも、GT-RのVR38DETTエンジンを積み込んだスペシャルモデルの「ジュークR」を発表したり、ジュークをモチーフにしたデザインコンテストを開催したりと、常に新鮮味を失わないためのアピール戦略を展開した日産自動車。その努力は、販売台数の伸びと同時に、ジュークをクラスのベンチマークの地位へと押し上げることにつながったのである。