スバルデザイン6 【1993,1994,1995,1996,1997】

ワゴン主導の新デザインとレトロ路線の軽自動車の創出

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“ワゴン時代のファーストカー”を謳った2代目レガシィTW

 1990年代の半ばに差しかかる前後の日本の自動車市場は、バブル景気の崩壊によって多くの国産メーカーが経営回復に苦心惨憺していた。そのなかで富士重工業(現SUBARU)は、レガシィやインプレッサのヒットなどによって比較的好調な業績を記録する。この上昇気流を維持しようと、開発陣は“スバルらしさ”に主眼を置いた新しいデザインのクルマを積極的に企画していった。

 1993年10月には、屋台骨を支えるレガシィの全面改良を実施する。“ワゴンが時代のファーストカー”と称したツーリングワゴン(TW)の車両デザインは、従来型比+50mmの2630mmというロングホイールベースを確保したうえで、張りのあるダイナミックな面構成や絞り込んだ前後端などでスポーティなワゴンルックを創出。ルーミーな6ライトウィンドウや2段ルーフといった従来からのアイデンティティも継承する。一方、“進化するグランドツーリング”を謳うセダンのツーリングスポーツは、張りのある曲面と伸びやかなアールで構成したフォルムを基調に、6ライトウィンドウやハイデッキテールなどを組み込んで個性を強調した。

 インテリアについては、ドライバーの快適性を高める視界と操作性の確保、さらに乗る人すべてが走りの愉しさを味わえるゆとりの空間の創出を主眼に置いてデザインする。同時に、使用パーツの見た目品質の引き上げや装備類のグレードアップなども実施し、上質かつシックなキャビンルームを演出した。

レトロ軽カーの先陣を切ったディアス・クラシック

 1993年12月になると、富士重工業は新ジャンルの軽自動車を発売する。クラシカルな装備アイテムを満載した“レトロ調”デザインの「サンバー・ディアス・クラシック」をリリースしたのだ。
 ディアス・クラシックは軽1BOXの上級仕様であるディアスをベースに、外装ではクロームメッキグリル&ドアミラー/丸目2灯式ヘッドランプ/シルバー塗装スチールバンパーなどを、内装では専用カラー・トリコット地シート&ドアパネル/ホワイト地メーター(数字等レタリングはブラウン)&空調スイッチパネルなどを組み込み、ホビー感覚あふれる独自のレトロルックを構築する。また、専用ボディ色のクラシカルグリーン&クラシカルアイボリーや“SUBARU SAMBAR Dias CLASSIC”エンブレムなども所有欲を促した。市場に放たれたディアス・クラシックは予想以上に販売台数を伸ばし、たちまちヒット作に昇華した。

 レトロ調のデザイン路線は、軽乗用車のヴィヴィオにも1995年11月に展開される。車名は「ヴィヴィオ・ビストロ」を名乗った。5ドアボディをベースとしたビストロは、エクステリアにクロームメッキタイプの大型グリルやバンパー、丸型2灯式ヘッドランプ、丸型リアコンビネーションランプなどの専用パーツを装備する。インテリアには専用ファブリック地シートやカラードスピードメーターパネル、木目調センターパネル等を組み込んだ。
 華やかで高級なムードを醸し出したビストロは、デビューと同時に販売台数を大いに伸ばす。レトロ調デザインに手応えを感じた富士重工業は、1996年5月になるとレザーシートを配した「ビストロB-Custom」を、同年10月には3ドアボディでレトロルックに仕立てた「ビストロ・シフォン」を発売。やがてビストロはヴィヴィオ・シリーズの主力車種に成長していった。

スバル流クロスオーバーSUVのデビュー

 1997年2月になると、富士重工業はレガシィとインプレッサに続く登録車系の第3の柱を発売する。ラフロードでの十分な走破性とオンロードでの優れた走行性能をあわせ持つクロスオーバーSUVの「フォレスター」である。
 車両デザインに関しては、200mmの最低地上高と600mmのヒップポイントを有した新しいパッケージングを構築したうえで、大型SUVでも乗用ワゴンでもない独自のルックスを創出する。具体的には、格子状グリルを組み込んだ存在感あふれるフロントマスクに厚みのあるバンパー、ブリスター形状のフェンダー、安定感のある台形フォルムのリアビューなどでスタイリングを構築した。機構面については、水平対向エンジン(BOXER MASTER-4)+シンメトリー4WDにロングストロークの高剛性4輪ストラット式サスペンションを採用。様々なシーンでしなやかな乗り心地と安定したハンドリングを味わえるようにセッティングした。

 インテリアについては、ダーク系カラーでまとめたスポーティかつ機能性に富んだインパネや余裕のあるキャビンスペース、実用的なシートアレンジなどが訴求点となる。また、最適なアイポイント設定と良好な後方視界により、扱いやすいパフォーマンスを実現していた。