セドリック 【1999,2000,2001,2002,2003】

最後のハイオーナー向けパーソナルモデル

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1ブランド1モデルの新方針

 日産自動車は1999年3月にルノーの資本参加(日産株の36.8%)を含むグローバルな提携契約に調印し、日本の自動車業界に大きな衝撃を与える。その余韻が覚め止まぬ最中の同年6月、セドリック(とグロリア)がフルモデルチェンジを実施し、10代目(同11代目)となるY34型系に切り替わった。

 商品コンセプトに「見るたびに乗るたびに新しい感動がある新世代高級パーソナルサルーン」と掲げたY34型系は、セドリックとグロリアのブランドイメージをより強固なものとするため、“1ブランド1モデル”の徹底化を図る。具体的には、従来のブロアム/グランツーリスモ・シリーズを廃止し、セドリックが旧ブロアム系のノーブル、グロリアが旧グランツーリスモ系のダイナミックというそれぞれが培ってきた個性を際立たせる方針を打ち出した。

新設計“LLクラス・プラットフォーム”の採用

 基本シャシーに関しては、新世代の“LLクラス・プラットフォーム”を採用する。サスペンションはフロントが改良版のマクファーソンストラット式で、リアが新開発のマルチリンク式。リアについては、ショックアブソーバーとスプリングを別配置としてフリクションの低減やスペース効率の向上などを図った。また、フロントは片側で約4.3kg、リアは同6.0kgの軽量化を実現する。ボディについても入念なチューニングを実施し、車体剛性で従来比約23%の向上を達成した。安全装備の面では、車両の横滑りを防止するVDC(Vehicle Dynamics Control)や払拭性能を高める電子制御ワイパー、歩行者保護に貢献するフレンドリーバンパーなどを設定する。

 搭載エンジンは直噴技術のNEO Diを採用したVQ30DD型2987cc・V6DOHC(240ps/31.5kg・m)とVQ25DD型2495cc・V6DOHC(210ps/27.0kg・m)、コンプレッサーの効率向上や点火時期のリファインなどを行ったVQ30DET型2987cc・V6DOHCターボ(280ps/39.5kg・m)、4WDの駆動機構と組み合わせるRB25DET2498cc直6DOHCターボ(260ps/33.0kg・m)の計4機種をラインアップする。VQ系ユニットに関しては、直噴エンジン車として初めて平成12年排出ガス規制に適合。また、すべてのエンジンで燃費性能を向上させる。ミッションについては、ワイドレンジロックアップを組み込んだフルレンジ4速ATのE-ATxを採用した。

内外装デザインの革新を目指して−−

 内外装のアプローチについては、「デザインの革新」を合言葉に思い切った自由発想による“世代を飛び越えた斬新なデザイン”を採用する。
 スタイリングは4ドアピラードハードトップのボディを基本に、微妙な陰影の変化によって多彩に表情を変える面構成を構築。同時に、ヘッドライトとのラインを合わせた大型グリルや左右に抑揚をつけたフード、フロントからリアへと流れるシャープなキャラクターライン、トランクリッドを大きく切り取ったリアコンビネーションランプ回りなどで新世代高級サルーンらしい個性を演出する。ボディカラーは新開発色のホワイトパール/ミストシルバー/ダークブルーのほか、プラチナシルバー/パープリッシュシルバー/ダークグレー/ブラックという計7タイプを設定した。

 インテリアについてはヘッドルームやニースペースを従来以上に拡大したうえで、インスツルメントパネルからドアトリムにかけて伸びやかな造形に仕上げ、乗員の開放感を創出する。さらに、液晶モニターおよびメーターを一体デザインとしたトータルインフォメーションディスプレイを採用し、先進性と機能性の向上を図った。また、吸遮音材や制振材などの最適配置により、クラストップレベルの室内静粛性を確保する。装備面では、左右独立調整機能付きオゾンセーフフルオートエアコンや乗降時自動昇降機能付き運転席パワーウィンドウ、後席ドアガラスエッジイルミネーション、トランクオートクロージャー、DVD式ナビゲーションシステムなどの先進アイテムを組み込んだ。

最後のパーソナル仕様セドリックに−−

 10代目となるY34型系セドリックは、“新しいリーディング・カーの時代へ”というキャッチフレーズを冠して市場に放たれる。車種展開はVQ30DET型エンジンを搭載する300VIP/300LX/300LX・SパッケージとVQ30DD型エンジンを積む300LV/300LV・Sパッケージ、VQ25DD型エンジンを採用する250LV/250L、RB25DET型エンジン+4WD仕様の250LV FOUR/250L FOURという計9グレードを設定した。

 ミニバンが隆盛を極める市場状況の中にあって、デビュー当初のY34型系セドリックは好調な販売成績を記録する。発売後10日間で早くも月間販売目標3000台を上回る4311台を達成。そのうち、VQ30DD型エンジン搭載車の販売比率が38%、VQ25DD型エンジン搭載車が30%と、当初の予想以上の数値を記録した。また、ユーザーからは伸びやかなインテリアデザインとゆとりの室内空間、斬新なスタイリング、滑らかな走りなどが高く評価された。

 新世代高級サルーンの新鮮味を維持しようと、開発陣は積極的にY34型系セドリックの改良やラインアップの拡充を実施していく。1999年11月には大トルク対応型CVTの“エクストロイドCVT”を新採用した300VIP-Z/300LX-Z・Sパッケージを追加。2000年になると、1月にセドリック誕生40周年を記念した「40th Anniversary」とオーテックジャパンがドレスアップを手がけた特別仕様車の「オーテック」を、6月に装備を充実させた「プレミアムリミテッド」シリーズを、10月にアイボリー色の本革シートを装備する「アイボリーレザーパッケージ」をリリースした。

 2001年12月には初のマイナーチェンジを実施する。エクステリアでは新デザインのフロントグリルやバンパーグリル、配色を一新したリアコンビネーションランプなどを装着。一方のインテリアにはオレンジ色に統一したメーターおよびスイッチ照明やエクリュ内装、SRSカーテンエアバックシステム、7インチワイド液晶モニターなどを装備する。ほかにも、VQ30DD/VQ25DD型エンジン搭載車の環境性能の向上(良−低排出ガス車/2010年燃費基準への適合)やグレード展開の見直しなどが図られた。

 2004年10月になると、日産の新しい高級サルーンとなる「フーガ」(Y50型系)が市場デビューを果たす。それとほぼ同時にパーソナル向けのセドリック(とグロリア)はカタログから落ち、営業用のY31型系セドリックだけが継続販売されることとなった。1960年3月に発表(発売は同年4月)された30型系の初代以来、44年半もの長きに渡って歴史を刻み続けたパーソナルモデルとしての“小公子”の命運は、この時点でついに途切れてしまったのである。