センティア 【1995,1996,1997,1998,1999,2000】
第2世代は“高級車の新しいツヤとチカラ”を表現
ディーラー網および設定車種の拡大や海外市場への積極進出など、好景気を背景に展開したマツダの攻めの戦略は、いわゆるバブル景気の崩壊によって方向転換を余儀なくされた。1990年代半ばには販売店や不採算車種の整理を図っていく。開発現場では、ブランドの再構築を目指して既存車種のモデルチェンジを懸命に行った。
フラッグシップサルーンのセンティアは、高級車としての新たな進化を模索する。具体的には、より風格のあるスタイルに上質かつ静寂なキャビン空間、“もてなしの心”で磨いた快適装備、操る心地よさと楽しさを追求したパワートレインとシャシー、最上レベルの安全性の実現を目指した。
1995年10月、マツダは第2世代となるセンティアを発表し、翌11月より発売する。キャッチフレーズは“高級車の新しいツヤとチカラ”で、ボディタイプは従来と同様にサッシュレス4ドアのピラードハードトップの1種類を設定。車種展開は上位からロイヤルクラシック/エクスクルーシブ/リミテッドG/リミテッドという計4グレードで構成した。
基本骨格は、従来のHDプラットフォームの進化版であるHEプラットフォームをベースとした新設計の高剛性モノコックボディを採用する。ホイールベースは従来型と同じく2850mmに設定。また、エンジンをフロントアクスルより後方に搭載するFRフロントミッドシップ構成と、ショート化したオーバーハング、綿密な軽量化施策などにより、良好な前後重量配分と低重心化を実現した。
搭載エンジンはロイヤルクラシック/エクスクルーシブに可変慣性過給システムやセミデュアル排気システム、熱式エアフローメーターなどを組み込んだJE-ZE型2954cc・V6DOHC24V(205ps)を、リミテッド系にVRIS(可変共鳴過給システム)やセミデュアル排気システムなどをセットしたJE-E型2954cc・V6OHC(160ps)を採用する。組み合わせるトランスミッションは、新開発のEC-AT(ロックアップ機構付き電子制御式4速AT)の1機種。懸架機構には熟成を図った4輪マルチリンク式を、制動機構には4輪ベンチレーテッドディスクをセットし、先進メカとして電子制御車速感応型の4WSや油圧ユニットを一体化した4W-ABS/TCSなどを組み込んだ。
エクステリアは、従来型比で40mmほど車高を引き上げてキャビンのヘッドルームを拡大したうえで、横格子を基調としたメッキグリルや厚みのあるバンパー、日本刀をイメージしたキャラクターモール、艶やかなボディ塗装などを採用して流麗かつ風格のあるサルーンスタイルを構築する。また、フロントフェンダーやトランクまわりをシャープな造形で仕立ててボディの前後端を把握しやすくした。
インテリアについては、後席の居住性を引き上げたことが最大のトピックとなる。車高アップによる頭上空間の拡大を筆頭に、リアピラーの室内側への傾きおよびリアウィンドウ角度の最適化、フロントシート形状の工夫による足もとスペースの拡大、前席との高低差の適切設定、伸びやかなドーム型天井の採用などを実施し、ゆとりの後席スペースと視覚的な広がりを実現した。
インパネは、機能性と感性に訴える新形状のインパネや華やかさを醸し出す楡の木目調パネル、クッションの形状と硬さを最適化したうえでパワー調整機構を内蔵したシート、スムーズな乗り降りを促す電動プリセットチルトステアリングなどを採用。さらに、制振材および吸音材の改良や開口部のシーリング強化、リアピラー内部への発泡ウレタンの注入などによって、優れた静粛・耐振性を実現した。
イメージキャラクターに俳優のショーン・コネリーを起用するなど、広告展開にも大いに力が入れられた2代目センティア。しかし、販売成績は伸び悩んだ。マツダの車種整理の真っただ中でデビューしたためにイメージが悪化した、RV(レクリエーショナルビークル)人気に高級セダンが圧倒された−−要因は色々とあげられた。
苦しい状況のなか、それでも開発陣はセンティアを市場にアピールしていく。1997年10月には、より高級感のあるモデルを目指したマイナーチェンジを実施。エクステリアでは縦格子基調のフロントグリルや光沢のある切削タイプのアルミホイール、クロムメッキ仕様のドアアウターハンドル、クロムメッキモール付きのサイドプロテクターモール、マツダの新ブランドマークなどの装着を行い、インテリアではダークグレーカラーの内装色の設定や木目調パネルの拡大展開などを実施する。車種展開ではロイヤルクラシックとエクスクルーシブに2WS車を追加し、リミテッド系には充実装備のFパッケージを設定した。
マツダの旗艦サルーンとして、広島県庁の公用車としても活用された2代目センティアは、2000年8月をもって生産を終了する。直接的な後継車は設定されず、その後はひとクラス下のミレーニアがその役割を担うこととなったのである。