N-BOX 【2011,2012,2013,2014,2015,2016,2017】
楽しさ&アイデア満載。日本ベストな軽トールワゴン
N-BOXは、2011年11月の東京モーターショーで正式発表、同年12月16日から販売がスタートした。N-BOXは、1967年にデビューし、ホンダ初の4輪軽乗用車として絶大な人気を獲得したN360の志を継承、「日本にベストなのりものを創造したい」という思いがこもった新世代軽自動車の第一弾だった。ボディタイプは後席スライドドアを持つ5ドアのトールワゴンで、標準シリーズと、スポーティ指向のカスタムの2シリーズでラインアップを構成。エンジンは自然吸気仕様(58ps)とターボ仕様(64ps)の直3DOHC12V。ターボは、当初カスタム専用ユニットだったが、2012年12月に標準シリーズにも追加設定された。トランスミッションは全車CVT。駆動方式はFFと4WDである。
ホンダはN-BOX以前にもライフやバモスなどの軽乗用車を販売。一定のシェアを獲得していた。しかしフィットを中心とした普通小型車のイメージが強かったこともあり、イメージ的にも販売台数的にもスズキやダイハツなどに差をつけられていた。N-BOXは、そうした事態を革新するための戦略車種だった。
ホンダは日本の自動車の需要構造やニーズ、道路状況などをゼロから真摯に分析。日本に最適なクルマとして軽自動車の価値と将来性を再認識する。その結果、従来まで、どちらかといえば脇役だった軽自動車を日本マーケットの主役に据え。ホンダの総力を挙げて開発する体制を整えたのだ。しかもN-BOXを皮切りに、さまざまなユーザーニーズに応えるようN-ワゴン。N-ワンなど、さまざまなラインアップを揃え、Nシリーズとしてミニカー(軽自動車)ワールドを構築する。
ホンダの魅力であり最大の魅力は、自由な発想で商品作りに邁進し、今までにないクルマを作り出すこと。N-BOXはそんなホンダらしさに溢れた傑作だった。軽自動車にはエンジン排気量660cc以下、全長×全幅×全高3400×1480×2000mm未満という制約がある。しかしN-BOXは、そんな制約を一切感じさせない、伸び伸びとした雰囲気に溢れていた。
最大の驚きは室内の圧倒的な広さにあった。N-BOXは、フィットで実績がある運転席の下側に燃料タンクを配置するセンタータンクレイアウトを採用。このレイアウトがパッケージングの自由度を高め、圧倒的な低床フロアを実現。クラス水準を大きく超えるルーミーな室内を作り出す。室内寸法は長×幅×高2180×1350×1400mm。大人4名がゆっくりとくつろげるスペースを確保する。中でも後席の足元スペースの余裕は圧倒的。その広々感はリムジン並みと評された。使い勝手もよかった。全高が高く、リアのスライドドアを含め開口部がワイドなことのメリットで乗降性は抜群。また多彩なシートアレンジと十分なラゲッジスペースによりユーティリティの高さも光った。
メカニズムにもホンダの本気が感じられた。パワートレーンは徹底的なコンパクト化と高効率化を追求。開発には、かつてF1エンジンを手掛けたエンジニアが投入された。自然吸気仕様は、日常領域でストレスを感じさせない走行性能と、クラストップ水準のJV08モード22.2km/L(FF)の燃費を両立。ターボ車は新設計DOHCレイアウトと組み合わせることで、2600rpmの低回転域から最大トルクを発生し、大排気量車からの乗り換えでも力強いと感じるセッティングが施された。
ボディもしっかりとしていた。製造工程から見直すことで高効率な骨格を実現。最新製造技術の投入により高強度と、従来比約10%の軽量化を達成する。安全性面でもVSA(車両挙動安定装置)、ヒルスタートアシストの標準装備化や、小型車を含めてもトップクラスの衝突安全性の実現など、手抜きは一切なかった。
N-BOXは、デビュー後、2012年7月に車椅子の積み込みや車中泊が可能な多目的モデル、N-BOX+を追加するなどラインアップをさらに拡充。販売台数を順調に伸ばす。2012年には21万1155台、2013年には23万4994台、2014年には17万9330万台を売り上げるなど軽自動車トップの販売実績を残し、ホンダを軽自動車のリーダーメーカーの一角へと押し上げた。
N-BOXは、都会でも郊外でも、もちろん田舎でも、日本のどこで乗ってもベストなサイズと抜群の使い勝手を誇り、しかも老若男女、誰が乗っても似合うクルマの代表。まさに日本の国民車として瞬く間に市民権を獲得した。人気の要因はホンダならではの楽しいアイデアに溢れていたからだった。