レックス5 AⅡG 【1976,1977】

新規格Kカーのパイオニア

会員登録(無料)でより詳しい情報を
ご覧いただけます →コチラ


1976年4月、三菱からミニカ5が
発売となったのとほぼ同時期に、
やはり500ccユニットを搭載して
スバルからレックス5が発売。
軽自動車の新規格化を踏まえてのデビューだった。
ライバルに比べての大きなアドバンテージは、
ボディそのものの拡大にあった。
■軽自動車の新規格化への歩み

 1955年に、当時の通商産業省(現・経済産業省)が公表した「国民車育成要綱案」、つまり「国民車構想」をきっかけとして、誕生したのが軽自動車である。全長3.0m、全幅1.3m、全高2.0mのボディサイズに大人2人、子供2人が乗れ、エンジンは4サイクル、2サイクルを問わず360cc以下などが条件として決められ、構造が簡単な2サイクル・エンジンを主体に、1955年に登場したスズライトSFを始め、スバル360(1958年)、マツダR360クーペ(1960年)、ホンダN360(1967年)など、様々な軽自動車が登場した。

形は小さいとは言っても、小型車や大型車に混じって一般道路を走るクルマであってみれば、時代と共に求められる条件も変わるのは当然である。

「軽自動車」に大きな変化が最初に現れたのは、1970年代初頭のこと。厳しさを増す排気ガス浄化規制に対応するために、排気ガスの温度コントロールが容易なエンジンの水冷化が始まる。続いて、燃費の向上と排気ガス浄化を徹底するため、2サイクルから4サイクルへの積み替えも行われる。そして、1975年にボディ枠の拡大(全長で20mm、全幅で10mm)が、翌1976年にはエンジン排気量が550ccに拡大された。度重なる排気ガス規制で、エンジン性能が大幅にダウンしたからである。

■大型化は快適性と安定性を実現した

 この規制拡大に最初に反応した三菱に次いで、真の新サイズボディ採用車となったのが、1976年5月に発売された「スバル レックス5 AⅡG」である。全長3185mm、全幅1395mm、全高1325mm、ホイールベース1920mmは、旧モデルよりは見た目にもひと回り大きく感じられた。車重は570kgと40kgほど重くなった。軽自動車にとってはかなりの重量増である。

エンジンは4サイクル水冷直列2気筒SOHCの490ccで、31ps/6500rpmの出力と3.8kg-m/4500rpmのトルクを持つ。増えた車重は十分にカバーされていた。排気ガス浄化対策は、360cc時代にすでに採用されていたスバル独自の浄化システム、SEEC-Tによる。最高級車となった「レックス5 AⅡG」の価格は65万4000円だったが、トヨタの小型車「カローラ スプリンター1200DX」は66万6000円だったから、価格は小型車並みに高価だった。「スバル レックス」のみならず、軽自動車全体が販売不振に陥るのは当たり前だった。

■小型車と肩を並べる性能を披露

 スタイルは、同時期のレオーネ・クーペを軽自動車サイズに縮小したような、旧レックスのそれをそのまま継続しており、エンジンをリアに置くRRレイアウトであった。スタイルの良し悪しはともかくとして、軽自動車としては時代の要求に最も忠実に応えたモデルであり、実用的な範囲であれば、性能的にも小型車に引けは取らなかった。

エンジン排気量の拡大と言う手段は、瀕死の瀬戸際に在った軽自動車と言うジャンルを見事に生き返らせることに成功したのである。この後、軽自動車を生産する各社が、こぞってボディサイズの拡大およびエンジン排気量の拡大を行い、次々と新型車が登場することになった。レックスはパイオニアの役目を果たしたのである。

COLUMN
レックス5は、暫定的なモデル
1976年からの軽自動車の新規格では、エンジン排気量に関しては、550ccまでと規定された。レックス5は暫定的なモデルであり、レックスは1年後の1977年5月に改良を受け、550シリーズがデビューしている。このレックス550シリーズは、軽自動車では克服が難しいと言われた53年度排出ガス規制をライバルに先駆けてクリア。10モード燃費は5km/L向上し、21km/Lを達成した。なお、500ccのレックス5をはじめ新規格の軽自動車では、360ccまでの運転が認められた軽自動車限定免許が使えなくなった。