インプレッサS203 【2004】

“グローバルピュアスポーツセダン”を謳ったSTI製コンプリートカー

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インプレッサ“Sシリーズ”の第3弾を企画

 富士重工業(現SUBARU)のモータースポーツ専門会社であるスバルテクニカインターナショナル(STI)は、WRC(世界ラリー選手権)に参戦するWRカーや各種モータースポーツに向けたグループNマシンの開発・製造などを手がける一方で、2000年代に入るとコンプリートカー“Sシリーズ”の企画を積極的に推進する。そして、2000年4月にはS201 STi Version、2002年6月にはS202 STi Versionと、インプレッサWRX STiシリーズをベースとするスペシャルモデルを相次いで発表した。

 第3弾となるインプレッサのSシリーズは、どのようなモデルに仕立てるべきか−−。開発陣は世界のあらゆる道を速く、しかも気持ちよく走れるクルマをイメージした。商品コンセプトには“グローバルピュアスポーツセダン”を掲げ、欧州のプレミアムスポーツセダンに競合できる高性能モデルの創出を目指した。また、ベース車は従来のWRX STi typeRA specCからWRX STiに変更。これはロードスポーツモデルとしての完成度を追求したうえでの、開発陣の判断だった。

EJ20ターボエンジンは320ps/43.0kg・mにアップ

 エンジンに関しては、EJ20型1994cc水平対向4気筒DOHC16V・AVCSツインスクロールターボをベースに、ターボのタービン径の拡大やタービン軸受のボールベアリング化、専用スポーツECUの装備、強化シリコンゴム製エアインテークダクト&エアダクトホースの採用、専用の低背圧チタンマフラーおよびキャタライザーの装着を実施する。同時に、ピストン&コンロッドの重量均等化やクランクシャフトの手作業によるバランス取りも行った。パワー&トルクは320ps/6400rpm、43.0kg・m/4400rpmを発生。この高出力を長時間走行でも維持するために、冷却機構には空冷式エンジンオイルクーラーをセットする。また、エンジンパワーを効果的に路面に伝える目的で、駆動機構にはオートモード付ドライバーズコントロールセンターデフ方式AWDとフロントヘリカルLSD+リア機械式LSDを組み込んだ。

 パワーアップしたエンジンに対応して、シャシー性能にも磨きをかける。懸架機構には専用の減衰力4段可変倒立式ストラットに強化ローダウンスプリング(スプリング長−15mm)、ピロボールブッシュ付のアルミ製リアラテラルリンクとリアトレーリングリンク、φ21mmに大径化したリアスタビライザーにボールジョイント付リアスタビライザーブラケットを採用。操舵機構にはフィン付パワーステアリングオイルクーラーを内蔵する。足元は235/40ZR18サイズのピレリP-ZERO CORSA systemタイヤとダイヤモンドブラッククリア塗装を施した8.5JJ×18サイズのBBS製鍛造アルミホイールを装着。制動機構には専用のアウターベンチレーテッドディスクブレーキローターとスポーツブレーキパッドを装備した。

空力特性をリファイン。シートはレカロ製

 開発陣は内外装の演出にも徹底してこだわった。エクステリアでは専用のドライカーボン製フロントアンダースカート(スカートリップ付)と角度2段可変式リアウイングスポイラーを装着して空力性能を向上。また、フォグランプカバーやシルバーメッシュフロントグリルといった専用アイテムを組み込んで見た目のスペシャル度を引き上げる。

 インテリアではレカロ社との共同開発によるドライカーボン製シェルのリクライニング機構付フロントバケットシート(アルカンタラ表地)やブラックソフトフィール塗装のセンターパネル&メーターバイザー&サイドベンチグリル、アルミ製シフトブーツリング、専用本革巻きシフトノブ&シフトブーツ、260km/h表示のスピードメーター、STIオーナメント&強化パッド付カーペットマットなどを採用して独自のスポーティ感と上質感を演出した。

ネーミングは“S203”台数と期間を限定して販売

 開発テストにはスバル・ワールドラリーチームのエースドライバーであるペター・ソルベルグ選手も参加したSTIによるSシリーズの第3弾モデルは、インプレッサ「S203」の車名を冠して2004年12月に発表される。車両価格は歴代最高の439万円(東京標準)。販売台数はラリーのスポンサー名にちなんで555台、販売期間は2005年1〜3月の限定とした。

 S203は従来の2モデルより多い販売台数だったものの、発表から1カ月ほどで完売となる。受注リストから漏れた顧客からは、「次のSシリーズの販売はいつ?」という問い合わせが多数寄せられたそうだ。市場の強いニーズを受け富士重工業およびSTIのスタッフは、インプレッサのSシリーズの企画を鋭意継続する方針を決定。2005年12月にはS203の進化版となる「S204」を発表し、翌2006年1月より限定600台の販売を実施したのである。