シルビア 【1993,1994,1995,1996,1997,1998,1999】
本物志向の時代のニーズに応えた6代目
6代目のシルビアは、1993年10月、大好評を博した先代のコンセプトを継承して登場した。キャッチコピーは「アイ・ハント・シルビア(eye hunt SILVIA)」。カタログでは「他人と違うもの、より新しいものを求める時代から、クオリティと永続性、そして自分の感性にフィットするものを求める、本物志向の時代への回答」と新型の性格を説明していた。6代目がこだわったのは「走りの性能」と「スタイルの美しさ」である。
ラインアップは1998ccのSR20DET型直4DOHC16Vターボ(220ps)を搭載したK’sと、自然吸気仕様の1998ccSR20DE型直4DOHC16V(160ps)を積むQ’s、J’sの基本3グレード構成。K’sとQ’sは、標準モデルに加え、オートAC、無段調節式間欠ワイパー、カセット一体電子チューナー、リアスポイラーを装備した上級仕様のタイプSが選べた。トランスミッションは全車に5速MTと電子制御4速ATを設定する。
走りは、パワーユニットへの新技術投入と、足回りの熟成により6代目の個性を演出する。220psのターボ仕様、160psの自然吸気仕様とも高応答NVCS(可変バルブコントロール機構)を搭載。吸気バルブを閉じるタイミングを最適に制御することにより、全域でのトルク特性をリファインした。さらにターボ仕様は、ボールベアリング式ターボと過吸圧電子制御システムを組み込み、スロットル操作に対する応答性に磨きをかけた。
足回りはFRレイアウトの美点である素直で自在なハンドリングを際立たせるため前ストラット式サスペンションのトレッドを拡大。ジオメトリー&トー特性を見直し、キャンバー剛性を向上させた。後マルチリンク式サスペンションではジオメトリーの見直しとストローク量の増大などでロールホールディング性能を引き上げた。さらにK’s系と4WS(4輪操舵)技術を投入したスーパーHICASパッケージ装着車にはスポーツチューンドサスペンションとグリップに優れた205/55R16サイズのタイヤを標準装備し、一段と爽快なハンドリングを実現する。
シルビアのライバルであるトヨタ・セリカやホンダ・プレリュードの駆動方式はFF。FFは安定性に優れるが、繊細なハンドリング性能という点でFRに劣る面があった。このクラスでは貴重なFR方式のシルビアは、走り面でFRの魅力を旧型以上に鮮明にすることでユーザーにアピールする。
スタイリングは旧型から継承したロングノーズのクーペフォルムを継承しながらサイズを拡大。豊かなボディ面とすることで美しさを表現する。ボディサイズは全長4500mm、全幅1730mm、全高1295mm。旧型と比較して50mm長く、40mmワイドで、5mm高い3ナンバー規格に成長した。ヘッドランプやバンパー、ウィンドウグラフィックなどをラウンディッシュにまとめ、旧型と比較して大人びた印象を与えるのが特徴だった。室内は前席優先の2+2構成。スポーツドライビングに最適な低いドライビングポジションを基本に、メーターや空調コントロールのレイアウトは機能優先にまとめられていた。シートは普段は快適に、ワインディングロードでは高いホールド性を発揮する新造形タイプを装着する。
新型のスタイリングは、伸びやかだった。しかしユーザーの評価は分かれた。確かに美しい造形だったが、スポーティカーにとって大切な“緊張感”が旧型よりも希薄になっていたからだった。しかも外形サイズが拡大されたにも関わらず、室内スペースは旧型と事実上同じで、サイズ拡大のメリットが実感できない点も不評だった。
5代目シルビアは絶好調だった旧型とは一転、販売面で苦戦する。1996年6月には、不評のスタイリングをリファイン。ヘッドライトをはじめ、各部の造形をシャープに変更しイメージを一新する。さらにバリエーションの見直しを図った。これにより販売はやや上向いたものの、それでも旧型の好調ぶりには、ついに到達することは出来なかった。1999年1月に登場する次世代の7代目のシルビアは再び5ナンバー規格ボディに戻っていた。